<扶養の壁103万円>を越えたら控除を受けられない?でも18年の改正で実は…専門家が所得税と配偶者控除の仕組みを解説!
2024年10月から、パートなどの短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が拡大され、従業員数51人以上の企業も対象となります。パートやアルバイトで働く人にとって避けては通れないのが「扶養」ですが、ファイナンシャルプランナーの塚越菜々子さんは「扶養の制度について『複雑すぎてわからない』と感じている人が多いのでは」と指摘しています。そこで今回は、塚越さんの著書『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』から一部引用、再編集してお届けします。
* * * * * * *
妻に所得税がかかり始める分岐点とは?
「103万円の壁」には、2つの意味があります。
ひとつは妻が払う所得税に関する壁です。
所得税はその年1年間の所得に応じて支払う税金で、妻の年収が103万円を超えるとかかってきます。
では、なぜ103万円までは所得税がゼロとなるのでしょうか?
給与所得からは給与所得控除55万円と基礎控除48万円を差し引くことができるからです(※控除額は収入で差がある)。
●103万円−48万円−55万円=0円
という計算です。
結果、税金が掛かる元となる課税所得の金額がゼロとなるため、税率を掛けて計算する所得税もゼロとなるのです。
基礎控除と同じく所得から差し引ける所得控除には、医療費控除や生命保険料控除などがあります。
所得控除は15種類もあり、うまく活用していくことで課税所得(あるいは税金)を少なくできます。
したがって、年収が103万円を超えた場合でも、所得税の負担をなくしたり、減らしたりすることが可能です。
節税策として所得控除の活用を覚えておきましょう。
実際に気にするのは「150万円」でいい理由
「103万円の壁」のもうひとつの意味は、配偶者控除に関する壁です。
妻の年収が103万円以下の場合、夫は配偶者控除を受けられます。
『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(著:塚越菜々子/発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)
夫の課税所得から差し引ける配偶者控除の金額は38万円です。
この配偶者控除は妻の年収が103万円を超えると受けられなくなります。
そのことで夫の税金が増えるのを心配し、働きをセーブする人が多くいました。
しかし、2018年の税制改正で状況は大きく変わりました。
妻が年収103万円を超えても150万円までであれば、夫は変わらず38万円の「配偶者特別控除」を受けられます。
夫の税金以外にも意識すべき問題
ただ、夫の税金以外にも「103万円の壁」を意識しなければならない問題があります。
それは「所得制限や手当」です。
なお、先の配偶者(特別)控除の金額は夫の所得によっても変わります。
夫が給与年収1095万円(所得900万円)までは一律38万円ですが、1095万円を超えると段階的に下がっていき、1195万円(所得1000万円)を超えるとゼロになります。
該当する方は限られますが、その点も注意しましょう。
「103万円の壁」を越えたらどうなる?
妻の年収が103万円を超えた場合、夫は配偶者控除を受けられなくなります。
しかし、前述したとおり、2018年の税制改正により年収150万円までは控除額自体変わらないため、夫の所得税・住民税が増える心配はありません。
一方、妻の方は103万円を超えた金額に対して所得税がかかってきます。
例えば年収110万円であれば所得税の税率は5%です。
課税所得は、●110万円−103万円=7万円
所得税は、●7万円×5%=3500円(復興特別所得税は除く)
という計算になります。
妻が年収110万円のとき、103万円に比べて、年7万円収入がアップしますが、所得税が発生して手取りは3500円分減ります。
が、それほど重い負担ではないでしょう。
加えて、年収150万円までは夫の税金への影響もありません。
そのため、すぐに夫の税金への影響は心配しなくてもよいでしょう。
扶養手当の基準や社会保険の扶養の問題を踏まえ、壁を越えるかどうか探っていく必要があります。
「103万円超えたら」ワンポイントアドバイス
●本人の収入に対して所得税がかかるようになる
●夫の税金への影響はなし(年収150万円まで)
●扶養手当や社会保険を踏まえて検討する必要がある
※本稿は、『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)の一部を再編集したものです。