「ヤスのコラム」第6回


【写真】お笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤス

神保町よしもと漫才劇場に所属し、「M-1グランプリ2023」では準決勝進出&敗者復活戦3位という結果で注目を浴びたお笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤス。“尖り芸人”と呼ばれた過去もあるが、その素顔は「真っすぐで熱い男」だ。そんな彼が日々感じたことを書き綴る連載「ヤスのコラム」。

■第6回「じゃあ俺って陽キャでキミは陰キャなの?」

ヤスです。

陽キャってなんなんですかね、クラスのお笑いキャラで運動部で文化祭でバンドやって大学でもサークルの部長とかやってて毎日カラオケオールしてたら陽キャ認定していいですか?

そうなると僕はめちゃくちゃ陽キャなんですけど、生きてるとふと「なに今の感情、暗っ」て時があります。てか多々あります。

例えば僕、お店で普通のお客さん以上の歩み寄り方をされた瞬間にもう行けなくなっちゃいます。

その歩み寄り認定は結構過敏で、「ありがとうございました!」が「"いつも"ありがとうございます!」と言われた瞬間にもう行けなくなっちゃいます。うわ、覚えられてる。なんかこっちも気の良い顔とか返事しないといけないのか?となって余計なカロリーを使ってしまいます。

相手が善意であればあるほどしんどいです。なんかめんどくさがってるこっちが悪者みたいになるから。

だからまじで深夜の牛丼屋の下積みバンドマンによる接客最高。本当に愛想が悪いから。これは皮肉ではなく本気で褒めてます。こいつまじで俺の一挙手一投足に興味ないじゃん最高!!!ってなります。

そもそもバイトなんだし最低限以上に頑張られてもこっちが困ります。深夜にふらっと入った店が目の死んだ髪傷みまくりのお兄ちゃんだった時は、当たりだ!!!って喜びます。こいつは俺に一切気を使わないし俺もこいつに一切気を使わないから。絶対しないけど俺がなんかにむかついてこの牛丼ひっくり返して帰っても「ちっ、なんか変な客いたな、だるきしょ」くらいの態度でいてくれるの最高!!!

書いてて笑っちゃうくらい“愛”に向いてないですけど、この感情って陽キャ認定ならずなんですよね。ちなみにこれは「俺って実は陰キャなんだよー!陰キャのみんなー!慕ってー!」ってことじゃないです、俺は陽キャも陰キャも分け隔てなく慕われ過ぎると突き放します。

そんなベイブレードみたいなハートなんですが、逆に見た目も地味、声も小さい、根暗みたいな自他共に認める陰キャの人いるじゃないですか。そういう人が俺と同じように店で「"いつも"ありがとうございます!」って言われてちょっと嬉しい、もしくはなんとも思わない、だったら「この人明るっ!」ってなります。

え!全然知らない人に急に愛を押し付けられたのに!こいつ!拒まない!明る!こいつ!生きてる!って横目で見ながら思います。そして僕は自分が言われたわけじゃないのに、この店結構常連扱いしてくる感じなのね、っていってもう行かなくなります。暗っ。

今のが、じゃあ俺って陽キャなの?キミって陰キャなの?って疑問の一例なんですけど、ここで俺が言いたいのは「俺を陽キャ扱いすんな!そしてお前は陰キャだSNSの海に溺れろ!」ということではなくて、人があなたを形容する言葉なんて大抵深く考えずに発しているから適当に頷いとけばいいんだよって話です。

世の中の誰かを形容する言葉って大体深く考えることがめんどくさくて、キミ陽キャだね、キミ陰キャだねと呼びやすくしてるだけで、実際にあなたの内面に深く触れて核心をついてる人間は1人もいないです。少しでも深く知れば知るほどその人を形容する言葉の選択肢が狭くなっていって最終的になくなります。

「彼女のどこが好きなの?」と聞かれて「えー、全部?」と答える彼氏みたいに、他人の深層に近づけば近づくほど言語化の難易度が上がっていきます。深海って真っ暗じゃないですか。

なので「陽キャ」「陰キャ」「尖ってる」「顔ファン」「ワーキャー」らへんの言葉なんて頭使ってない、もしくは今は頭使いたくない人間が発してるだけなので適当に頷いてそいつのご機嫌な顔見ながら裏で笑いましょう。

俺って尖ってるなあ。