--(引用おわり)--

久保 私が「消えない? 消えないよ?」と言ってるところに、能町さんが「消えさせませんよ」と言って、このあと暗転ですよ(笑)。

一同 (笑)

ヒャダ 間は大切ですね。

久保 そう。私はここにすごく演劇を感じた。自分たちでも、この会話がどこに行くのかわからずにずっとしゃべってるから、「この会話の流れでそこに行けるんだ」というのは、グルーヴ感あるし、演劇的に面白いなと思った。脚本を考えるやり方だと、ここにはたどり着けないと思うから。

◆傷ついたときには円陣を

──ヒャダインさんはどの回が印象に残ってます?

ヒャダ イマジナリードッグの回(TALK-23「昭和の習慣、覚えてますか?」)ですね。りゅうちゃんを飼う前に、クッションを犬に見立てて、写真まで撮ってたじゃないですか。あれ、どうかしてましたよね(笑)。僕もそれに先んじてペットシーツをプレゼントしたんですけど。

久保 あれ、いいペットシーツだったんですよ。同じペットシーツでも吸水性がいいものと悪いものがあって。

ヒャダ それを犬に見立てたクッションと並べてね。なんかSFみたいな回でしたよ(笑)。

久保 いま振り返ると、あれをやった意味って全然なかったなって。

一同 (笑)

久保 「犬を飼い始める前に、 飼ったらどうなるのかのシミュレーションをしなきゃ」と思ってやり始めたんだけど、全然意味なかった(笑)。だいたい、身体の上にりゅうちゃんを乗せて一緒に寝るなんて、現実にはほぼないわけよ。だけど、添い寝の状態で寝るのは毎日やってるわけだから、あれに近いところには来てるかもしれない。でもシミュレーションとはまったく別のことですね。飼う前から想像するのはやっぱり無理。

ヒャダ そりゃ無理っすよ。しかもここまでラブいことになるなんて、飼い始めのころは想像もつかなかったわけじゃないですか。久保さん、最初のころ言ってましたよね。「人におびえて、スナイパーの目をした安室奈美恵が来た」つって。

能町 最初はお母さん的な存在には絶対ならないと思ってたはずなのに、今やお母さんじゃないですか。結局そうなっちゃいますよね。

久保 なっちゃった。やっぱり自分の親との会話が受け継がれるのかな、こないだ散歩させてるときに佐世保の方言が出ちゃって。

一同 へえええええええ!

久保 (佐世保なまりで)「もうおやつ持っとる人おらんって。帰るよ!」

能町 そうなっちゃうんだ。

──本当にお母さんじゃないですか。

久保  「もうおやついっぱいもろうたやろ!」みたいになっちゃう。自分でも「こうなっちゃうんだ!?」と思った。

ヒャダ そういった久保さんの変遷を、我々は見てきたわけです。この本で。

久保 時系列がしっかり書かれてあるのもいいんだよね。「初めてマッキー(槇原敬之)が来たのってこの回なんだ」とか。あと、6月に35度以上の猛暑日が連続した年があったのも、これを読んで思い出した。

ヒャダ 備忘録でもありますよね。注釈がとても助かります。

久保 うちらのうろ覚えの会話がこんなにしっかりと形になってて……。

ヒャダ 本当に覚えてないですからね。だから同じ話をするし(笑)。

──フレンチキスの話とか。

能町 それ私ですよね。つい同じ引き出し開けちゃうんですよ。

──能町さんはどの回が印象に残ってますか?

能町 この連載って、いつの間にかドキュメンタリーとしてうねり始めたじゃないですか。あれはどこからだろうと思ったら、やっぱり豊島豊島会の回(TALK-19「知らない人と仲良くなれますか?」)じゃないかと思うんですよね。

──当時まったく外出せず家にずっとこもっていた久保さんが、「豊島竜王(当時)のファンと交流してみたい」という気持ちを吐露して、みんなで後押しした回ですね。確かにあのへんで流れが変わりましたね。