子どもから「なぜお手伝いをしなければならないの?」と聞かれたときの答えは1つではない。「気づき」や「驚き」を大切にして、問題提起する力を養う
プレゼンアドバイザーの竹内明日香さんによると、学校の国語のテストや入試問題において、<子どもたち自身の意見>を問う設問が少ない傾向が続いているそう。このような状況のなか竹内さんは、子どもたちの「話す力」を育てるための講演や授業を全国で行っています。そこで今回は、竹内さんの著書『話す力で未来をつくる 〜プレゼンアドバイザーが伝える 子どもの思考力 判断力 表現力を伸ばすチャレンジ〜』より、家庭でできる子どもの「話す力」を育てるメソッドを一部ご紹介します。
【書影】家庭でできる、子どもの「話す力」を育てるメソッドを紹介。竹内明日香『話す力で未来をつくる 〜プレゼンアドバイザーが伝える 子どもの思考力 判断力 表現力を伸ばすチャレンジ〜』
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問いの立て方
私たちが学校で行う授業では、子どもたちの「話す力」を引き出すために、さまざまな「問い」を投げかけています。
「イイタイコト」を組み立てるステップ、特に「深める」ためには「問い」が重要な役割を果たします。
では、なぜ自分で「問い」を立ててみることが大切なのでしょうか。
それは、「なぜだろう?」と「問い」の答えを探すうちに、人は考え始めるからです。
「問い」を立てることは、物事を考えるスタート地点なのです。
私たちが暮らす社会では、テストの解答欄のように、正解が一つに限られることはほとんどありません。
ですから、常にたった一つの正解ばかりを探そうとしてしまうと、他のより良い選択肢を探すことに消極的になってしまいます。
いくつもの答えがある「問い」
ですからここで私が言う「問い」は、一つの「問い」に対していくつもの答えがある、もしくは「正解がない」という「問い」です。
例えば、お子さんが日常の中で「なぜ、お手伝いをしなければならないの?」という疑問を抱いたとしましょう。
保護者の方としてはドキリとする「問い」かもしれませんが、実はこの「問い」一つからも、
「保護者の負担を減らすために子どもも手伝うべき?」
「でも、子どもにとっては勉強の方が大切では?」
「家事の負担を減らすなら、家事ロボットを導入すれば解決するのでは?」
「我が家では、お母さんが家事をしていることが多いけど、それは不平等では?」
など、さまざまなことを考えるきっかけになり、ご家庭内での役割分担、労働の意味、ジェンダーの平等や無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)、思いやりを持つことの大切さなど多様な視点で思考を深めることができます。
「気づき」や「驚き」を大切に
このように、「問い」の起点(始まり)を見つけ、そこに視点の違う「問い」を重ねていくことで、だんだんと「問う力」がついていきます。
それにつれて、今まで見えていなかった角度から、物事を見る・知ることにもつながります。
(写真提供:Photo AC)
お子さん一人ひとり、目のつけどころは異なるでしょうが、お子さんの質問はより深く物事を考えるきっかけだととらえられれば、「お手伝いするのは当たり前でしょ!」と片付けてしまうのがもったいなく感じられるのではないでしょうか。
子どもたちは、「どうして朝になると太陽が出るの?」「なんで塩はからいの?」「人はいつ死ぬの?」など、大人がびっくりするような質問をしてきますが、それは、子どもたちの見ている世界が、常に驚きに満ちあふれているからなのです。
こうしたちょっとした「気づき」や「驚き」を大切にしながら、次にご説明する「問い」を立てる3つの視点を意識していただくと、日常生活での「気づき」や「驚き」が、容易に「問い」へとつなげやすくなります。
「問い」を立てる3つの視点
■何?(What?)
例・雷の正体は?
・海の底はどうなっているの?
■なぜ? どうして?(Why?)
例・生き物にはなぜ寿命があるの?
・今年の夏はなぜいつもより暑いの?
■どうやって?(How?)
例・どうやってハチは六角形の巣穴を作るの?
・お客さんが少なくても続いているお店は、どうやって成り立っているの?
お子さんが日々感じている新鮮な「気づき」や「驚き」を、「へぇ、そんなふうに見えるんだ」「そんなこと考えつかなかった!」と、お子さんの気持ちに寄り添って大切にすることで、大人も今までとは異なる景色が見えてくるでしょう。
また、お子さんの「気づき」や「驚き」から導かれた「問い」はやがて、お子さん自身が自分の将来について考えたり、行動を模索したりする「問い」へと発展していくはずです。
お子さんが、自ら「問い」を立てられなければ、最初は大人からの問いかけを足がかりとして考え始めても大丈夫です。
でも、自分で「問い」を立てることで、物事を主体的に考えられるようになりますので、ゆくゆくはお子さん自身が「問い」を立てられるようになることが大切です。
自ら「問い」を立て、自分なりの答えを考える中で、お子さんの自己効力感も増していきます。
※本稿は、『話す力で未来をつくる 〜プレゼンアドバイザーが伝える 子どもの思考力 判断力 表現力を伸ばすチャレンジ〜』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。