(イラスト:霧生さなえ)

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墓じまいは、家族や親戚の理解に加え、お寺や霊園との話し合い、費用の問題などがあり、手間がかかるのも事実です。お墓に関する専門家の2人が、皆さんの素朴な疑問に答えつつスムーズに行うための方法や手順をお伝えします(構成=島田ゆかり イラスト=霧生さなえ)

墓じまい、遺骨の「改葬先」は…

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Q. 墓を持たないという選択はできる?

墓を持つのは個人の自由ですから、なくても問題はありません。実際、「墓の維持にお金をかけたくない」「自分が亡き後、遺された人の負担を減らしたい」と考える人は増えています。

しかし、遺骨の行く先については、1948(昭和23)年に制定された「墓地埋葬法」で、「墓地以外の区域に焼骨を埋蔵してはならない」とあるため、事実上、墓地以外にないのです。

海洋散骨という葬送法もありますが、実施している人は全体の1〜2%程度。多くの人が墓を持つことになります。

ただし、その墓の形が現在は多様化。先祖代々が眠る「承継墓」を引き継ぐことが難しく、墓じまいを検討している人が増えているからです。

元のお墓から遺骨を取り出し、墓域を更地にして管理者に返還することを「墓じまい」と言いますが、取り出した遺骨を別の場所に移す「改葬」とセットにして行います。承継墓の場合は、「改葬先」を用意し、納められていた遺骨を移さねばなりません。

改葬先は「A家の墓」といった承継墓だけでなく、永代供養墓や、海洋散骨などの選択肢があります。希望がある場合は、家族の理解を得て、遺骨の納め先を決めておくことが必要です。

一方で、墓じまいをしてから何かよくないことが続いたときに、「始末してしまったからだろうか」と、後悔するケースがあるのも事実です。日本人には縁起を担ぐ文化が根付いていて、費用の問題や管理の手間、菩提寺との付き合いが面倒など、弔いの気持ちとは別の経済的・物理的な理由で処分したということで自分を責めてしまうからかもしれません。

ですから、墓を持つか持たないかは、心情面も踏まえて検討するべきです。
(吉川さん)

Q. 墓じまい、何から着手すればいい?

「墓じまい」とは、墓の中にある遺骨をすべて取り出し、墓を更地に戻して管理者に返納後、遺骨を新しい納め先に納骨する(改葬)までを指します。「更地に戻す」とは、墓石だけでなく遺骨が収納されていた地下のカロート、外柵があればその撤去まで行い、原状回復することです。

その墓じまいを進めるには、手順が大事です。まず家族や親戚の同意を得ること。ここがスタート地点です。ご先祖は親族一同の大切な存在。墓前を心の拠り所にしている人がいるかもしれません。「しまいたい理由」を伝え、納得してもらうことがスムーズに進めるコツです。

親族の同意を得られたら、改葬先を決めます。新たな納骨先としては、墓石型のお墓、納骨堂、永代供養墓、樹木葬墓、合葬墓、散骨などの選択肢が。最近は、個々の墓ではなく永代供養墓や合葬墓を選択し、遺された人に負担がかからない供養の方法を選ぶ場合が多いようです。

改葬先が決まったら、現在ある墓の管理者に連絡をしましょう。菩提寺にお墓がある場合は住職に、民間や公営の霊園ならそれぞれの管理者に改葬の連絡をします。

次に、行政に申請する書類の用意が必要です。改葬先が発行する「受入許可証」と、現在ある墓の管理者が発行する「埋蔵証明書」「改葬申請書」を提出すると、「改葬許可証」が発行されます。これが改葬先に提出する書類です。

そしてようやく墓石の撤去、更地にする作業へと進み、新しい納骨先に遺骨を納めて完了。

順調にいけば1ヵ月程度、場合により数年かかることもあるので、墓じまいを決めたら早めに着手しましょう。
(吉川さん)

改葬や墓じまいをインターネットで検索すると、請負業者のサイトがずらりと出てきます。それだけニーズが増えているということ。

しかしほとんどは、墓があった場所を「更地にする」のみの石材店で、管理者への連絡や交渉、書類の手配、遺骨の移動まで包括的に行える業者は少ないので注意が必要です。

合葬墓に納める際には遺骨をパウダー状にしなければならないケースもあり、自分で行えない場合は専門業者への依頼が必要になります。

墓じまいを行う業者を寺院や霊園が指定しているケースも見られますが、墓所使用規約に明記されていない場合や契約が古く規約が存在しない場合は、墓の保有者に業者選定の権利があります。

不要な作業が含まれていないか、高額な費用になっていないかなどを事前に確認しましょう。口コミなども参考に、信頼できる業者かどうかを見極めることも大切です。
(小西さん)

<2へつづく>