アメリカとカナダの国境付近にある五大湖に、元はペットとして買われていた金魚が野生化して住み着いています。生態系を脅かしかねない金魚の問題と対策について、ジャーナリストのクリストファー・ブッカー氏がレポートしました。

How massive, feral goldfish are threatening the Great Lakes ecosystem | PBS NewsHour

https://www.pbs.org/newshour/show/how-massive-feral-goldfish-are-threatening-the-great-lakes-ecosystem



ブッカー氏がインタビューした生態学者のアンドレア・コート氏は、五大湖の一つ「オンタリオ湖」で生態系を管理しています。コート氏は、オンタリオ湖とクーツ・パラダイス湿原を結ぶ魚道を監視し、在来魚にとって重要な産卵・保育場所である湿原に外来種が入り込まないようにしているそうです。コート氏いわく、オンタリオ湖では特にコイが繁殖しているそうで、1年当たり2000匹から9000匹のコイをオンタリオ湖へ「追い返す」こともあるとのこと。



1997年に魚道が開通して以来、コイが管理人を悩ませてきましたが、2024年までの10年間でコイの個体数は減少し、代わりに金魚が繁殖するようになってきたそうです。

コート氏は「2013年頃から金魚の数が増え始めました」と語り、金魚もコイと同じく生態系を脅かしかねないと懸念をあらわにしています。

金魚といえば鮮やかなオレンジ色が特徴で、せいぜい人の頭ほどの金魚鉢に収まる大きさというイメージがあります。しかし、野生化した金魚はカモフラージュのために暗い色に変わり、ほぼ際限なく存在する餌を食べ続けて大型化してしまいます。五大湖水産・水生科学研究所のジョン・ミッドウッド研究員いわく、世界最大の金魚は9ポンド(約4kg)にもなるそうです。

ミッドウッド研究員は「野生の金魚は五大湖だけでも数千万匹にのぼると推定しています。おそらく、一般家庭から持ち込まれた可能性が高いと思います」と指摘し、ペットショップか何かで買われた金魚が放逐され、野生化したのだろうと話しました。

ミッドウッド研究員によると、金魚は在来種と競合して餌を奪い合うだけでなく、湖の堆積物をかき混ぜて濁らせてしまうそうです。ミッドウッド研究員は「金魚は水系にとって最も厄介な魚の一つです。水生外来種は他にもいますが、金魚は近い将来、水生植生を回復させるという目標に最も大きな影響を与えることになると考えています」と述べています。



ミッドウッド研究員らは、金魚のような外来種を安全に葬りたいと考えていますが、工業用水路で暮らすこともある金魚は化学物質で汚染されている可能性があり、安全で手軽に処分する方法が存在しないのが現状だそうです。ミッドウッド研究員は「水生外来種がいったん水系に侵入してしまうと、その数を減らす努力以外には何もできません。ですから、最善の方法は予防なのです」と話しました。

また、金魚は最長で30年から40年生きることがあり、一般家庭での管理の難しさの問題もあります。

無責任な放逐を少しでも防ごうとして、五大湖の一つ「エリー湖」のそばに位置するエリー動物園は、不要な魚類を回収するプロジェクトを2023年から始めているそうです。

エリー動物園が進めるプロジェクトは「ラスト・チャンス・ラグーン」と呼ばれています。エリー動物園は、動物園の中心に2万3000ガロン(約8万7000リットル)の水槽を用意し、一般市民が手放した金魚やコイを飼育しているとのこと。飼い主の中には、金魚やコイを自然の生息地に放つことが「思いやりのある行為」と勘違いしている人もいるそうで、そうした考えに基づく環境破壊を防止するために活動を実施しているとのことです。

エリー動物園のヘザー・グラ氏は「このプロジェクトの第一の目的は一般市民を教育することです。五大湖で大きな問題となっている外来生物や、ペットの適切な飼育方法、ペットがいかに成長するかについて教えたいと思っています。近年は風変わりなペットを欲しがったり、世話の仕方を知らないペットを連れてきたりする人がたくさんいるからです」と話しました。