掲載:THE FIRST TIMES

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■「このライブで超特急の楽曲に新しい発見が生まれるかもしれない」(タカシ)

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9人組ダンス&ボーカルグループの超特急でボーカリストとして活躍する、7号車のタカシと11号車のシューヤが、あらたなプロジェクト“アコースティック超特急”を始動。2月1日にZepp Haneda(TOKYO)にて、追加公演として2月28日に大宮ソニックシティにて、ふたりだけのライブ『せぶいれのうた』を初開催した。史上初のメインダンサー&バックボーカルグループとして活動する超特急で、普段は7人のダンサーの後ろに控えることの多いふたりがスポットライトを浴びる貴重なステージだけあり、2日間3公演のチケットは即日完売。生バンドによる生演奏とともに普段とは異なる超特急の楽曲の魅力を引き出し、想いのままにメロディを紡ぐ美しいハーモニーで、世間に対する8号車(超特急ファンの呼称)への扉を大きく開いた。
7号車のタカシに11号車のシューヤと、それぞれの号車ナンバーを取って“せぶいれ(セブンイレブン)”と呼ばれているふたり。2022年の8月にシューヤとダンサー3名(マサヒロ、アロハ、ハル)が加入してツインボーカル体制となり、2023年秋に“アコースティック超特急”の始動を宣言して以降、超特急の楽曲をふたりで歌う動画を公開してきた。そんなふたりの初ステージにはダマスク織の絨毯が敷かれ、無数のフロアランプやテーブルランプ、さらに革張りのソファにテーブルまで。リラクシンなムードが漂うなかで、ランプシェードに次々と明かりが灯り、上手からタカシ、下手からシューヤがステージに入って歌い始めたのは、超特急のシングルの中でも特に“歌”をフィーチャーした「Asayake」だ。純白のタカシにチャコールのシューヤと、それぞれのイメージカラーを纏ったビジュアルは対照的ながら、互いに見つめ合って重ねるハーモニーはシンクロ率抜群で、代わるがわる差し込むラップも爽快。ベース、ドラム、キーボードからなるバックバンドと呼吸を合わせて届ける生命力に満ちたボーカリゼーションに、場内から大きな拍手が湧く。

そこから「『せぶいれのうた』へようこそ!」と、TVドラマの主題歌にもなった「Call My Name」に雪崩れ込み、「みんな立って! 今日は最高の公演作っていきましょう」とシューヤが煽れば、総立ちになった客席で白とチャコールのペンライトが“YES”と返答。「みんなで!」という呼びかけに“ドリーム半端ねえ!”と8号車が歌い返したり、続く「a kind of love」では、超特急ライブでは恒例の“E!”のポーズを繰り出し、“掴んだ”という歌詞で互いの腕を掴んだりと、場内を盛り上げまくる。初日の初回公演では、通常とは異なるライブ形態に遠慮して、声を抑え気味の8号車も見られたが、シューヤの「アコースティックは忘れてください! テンション上がりすぎちゃって、エレクトリックっぽい曲もあります」という呼びかけでロック解除。彼ら自身「今日は汗かかないと思ってたけど、かいてるわ!」と驚いてみせ、公演の回数を重ねるごとに楽しそうな表情を増していく。

だが、どれだけ熱くなろうとも、生音をバックに歌うふたりの生々しい息遣いや音の高低差まで、しっかりと味わうことができるのが『せぶいれのうた』の醍醐味。中盤ではソファに座り、演奏のBPMもグッと落として、さらに生の歌声を際立たせていく。YouTubeにもアップされている「Thinking of you」では、ふたりの薄絹のように柔らかなハイトーンをオレンジ色の光がランプシェード越しに温かく照らし、「UNKNOWN…」では緩急豊かでブルージーなボーカルが、クールなダンスチューンを愛憎渦巻くドラマへとモデルチェンジ。シューヤの歪んだ声音も鬼気迫って、超特急の音楽にあらたな風穴を空ければ、負けじとタカシも声を振り絞り、2本の歌声が絡み合って濃厚な世界を創り出す。一転、「ここからは軽快な曲をお届けします」と立ち上がった「クレッシェンド」では、サンバ調のアレンジで南国の風を吹き込んで、また別の角度から楽曲をリフォーム。「このライブで超特急の楽曲に新しい発見が生まれるかもしれない」というタカシのMCにも頷く他ないが、その源にあるのは生演奏を受けてフレキシブルに繰り出されるふたりのボーカルに違いない。得意のファルセットやフェイクも自由度を増して、同じ曲でも公演ごとに新鮮な感覚を与えてくれる。

ちなみに「クレッシェンド」は、シューヤが加入する直前にリリースされていた楽曲で、「加入オーディション当時、良い曲すぎてメチャメチャ聴いていたので、やっと歌えてうれしい」とのこと。タカシも「ずっと言ってくれてたもんね。「クレッシェンド」が好きで歌いたいって」と秘話を明かし、ここからはそんなふたりの歴史や物語を辿っていくこととなる。まず、シューヤが初めて超特急の楽曲をレコーディングした2022年夏の映像が流れると、まだ出会ったばかりでソファの端と端に座っている自分たちに、タカシは「距離感が気持ち悪い!」と爆笑。また、当初は「お疲れ様です」と行儀よく挨拶していたシューヤが、『せぶいれのうた』のリハーサル初日には「こんちわ」と椅子に寝そべったままカメラマンに声をかける映像も、大宮公演では公開された。その変貌ぶりに騒然となる場内を後目に、「見ていただいたとおり、僕は裏も表もありません!」と開き直るあたり、さすが“チャラチャラ担当”を名乗るだけはある。

そして、映像の中でも歌っていたふたりでの初レコーディング曲「Re-TRAIN」を、初めてふたりだけで披露。タカシいわく「ゴリゴリのEDM曲」を、いきなりフェイクで掛け合って8号車の度肝を抜きながら、12年前のデビュー曲に刻まれた“どこまでも走り続ける”という誓いを、力強い歌声とバンドサウンドでクッキリと浮き彫りにする。それぞれに異なる旋律を歌い重ねるクライマックスも圧巻。直立不動で叩きつける決意漲るボーカルで大いなる進化を証明してみせた。

さらに「僕が今回のライブで、どうしてもやりたいと懇願した曲を」と、シューヤが告げたのは「FLASHBACK」。いわく「加入間もないときに、タカシくんが『これ、絶対シューくん好きやと思う』と言ってくれて、実際、聴いてみたら好きだった」という穏やかな楽曲を、ピアノの旋律を辿るように繊細に歌い上げていく。ふたりを照らすヴェールのようなスポットライトも、季節の移り変わりをなぞり、“君を守りたい”と訴える楽曲の清らかな響きを際立たせて、まるで会場を包み込むかのよう。そこから広がる柔らかく、温もりいっぱいの歌声に、場内からは溜息と拍手が贈られる。シューヤが持ってきた曲があれば、当然、次はタカシの番。「超特急で十数年活動してきて、まだ知られていない曲もあるのよね。実はこんな大人っぽい曲もあります」とタイトルコールされたのは、2016年発売のアルバムで自身のセンター曲として発表された「Whiteout」だ。久々のライブ披露に上がる悲鳴と、雪のように散りばめられるミラーボールの光を浴び、タカシのフェイクから始まったナンバーは、動きの細かいベースとピアノでジャジーなアレンジが施されて、さらに大人のムードたっぷり。艶やかな色を帯びて、歌詞のとおり今度は強く、熱く、そして切なくオーディエンスを抱きしめた。

ふたりの歌力を存分に発揮してからは一転、ドラム、ベースがリズムを刻むと、「テンション上げていけますか!?」と号令をかけて、シューヤ加入後に初めてリリースした曲「宇宙ドライブ」を投下。超特急らしいカオスなナンバーで、大きく身体を振って声を吐き出すふたりにペンライトも振られるが、これで終わりと音を止めては「まだまだ終わらないよ!」と客席を容赦なく煽りまくり。いつものとおり、最後は手を合わせ小首をかしげて、8号車から「かわいい!」の大歓声を浴びる。ふたりだけのステージとはいえ、その根っこにあるのが超特急の音楽、楽曲であるのは当然のこと。「FLASHBACK」や「Whiteout」も、9人体制の超特急では未だパフォーマンスされていない曲だが、「9人でパフォーマンスしたらどうなるのか楽しみ」というシューヤの言葉には、客席の8号車も完全同意だろう。「同じ曲でも9人でやるときとの違いも観てほしい」と願いを口にしつつ、タカシは「これを期に、超特急の楽曲を愛してほしい」と伝え、シューヤも「今度は9人のパフォーマンスで観たいと思ってもらえるように、超特急の曲とふたりの歌を広めていきたい」と意欲を表した。つまり『せぶいれのうた』とは、超特急の音楽的魅力を広めるためのものでもあるのだ。

そんな想いは「普段、話したくても話せない想いの丈を」(タカシ)と、明かされたMCでも明らか。シューヤによると、“アコースティック超特急”の始まりは、「ふたりでライブやってみたいね」という些細なひと言だったそうで、それを汲み取ってくれたスタッフ、そしてYouTubeでの動画公開やライブ開催に漕ぎ着けるまで支えてくれた8号車に、タカシは改めて感謝を表明。最終公演では「愛に溢れたステージ、愛に溢れた場所に恵まれてる僕は幸せやなって思いました」と述べ、「僕は歌うことしかできないから、今度は歌でいろんな感情の恩返しをしたい」と語りかけた。シューヤも「歌を届けられることが僕にとっては意味のあることで、ふたりの核にあるものは歌。それって譲れない」と断言。さらに、羽田公演の2部では「タカシくんを支えたいと加入発表のステージで言ったけれど、今日のステージを通して、この人と一緒なら死ぬまで歌い続けたいなと本当に強く思いました」と言い切って、客席の8号車を感涙させた。

そして「僕たちのハーモニーで誰かが笑顔になっていきますように」とアカペラで披露されたのは、超特急の最新アルバム『B9』にも収録されていた「君と、奏で」。まるでタイトルをそのまま表すかのように、シューヤが主旋律を、タカシが下ハモを歌って、最後に逆転するハーモニーはあまりにも美しく、会場中から大きな拍手が巻き起こる。そこからはバンド演奏と8号車のクラップに乗って、言葉の一つひとつを大切に歌い置くようなリズミカルなボーカリゼーションを展開。“LaLaLa…”と歌う8号車に、タカシも「いいね」と親指を立てて、心が洗われるような清々しい空気を作り出していった。

「ラストスパート、楽しんでいけるか?」と、終盤はキュートな振り付けが人気の「My Buddy」に、全力でバッテンダンスを繰り出す「Burn!」とライブ鉄板曲を連打して、歌うふたりもステージ上を右へ左へと大移動。ペンライトとともに“ハイ!ハイ!”と上がる8号車の声も会場を揺らし、「Burn!」の大サビはひとりずつ交代で、追加公演の大宮ではふたりで合唱してみせる。最後はふたり揃って大きくジャンプし、初回公演では「燃え尽きました! 普段の超特急とは違う雰囲気を出せて、歌の素晴らしさとタカシくんの素晴らしさを再確認して、超特急の曲を歌えて幸せだなと改めて思いました」とシューヤが告白。それに「照れるやん」と応えたタカシは、「このふたりだから、“せぶいれ”だからできたことは確実にある」と自信を示し、「俺らができることって、歌で気持ちを届けることなんです。これからもっといろんなところで開催したいと思っているので、時間はかかるかもしれないけど、皆さん待っててください」と、うれしい意気込みを語ってくれた。

大宮公演では「こんな大きい会場で、ふたりでやるのか! って心細くてさ。メンバー連れてきてるんです。実はこんな近くで、僕たちのことを見守ってくれているんです」と、なんとステージ上に超特急のダンサー陣の顔写真が張られていたことを暴露。「でも、たまに無意識で結構踏んじゃうんです」と笑わせて、「これからも、みんなと一緒に笑顔を紡いでいけたらいいなと思っています」(タカシ)と最後に贈られたのは、超特急のライブでも肝心要の場面で登場する「Synchronism」だ。最初は静かなピアノだけだった伴奏に、ダイナミックに響くドラムとベースが加わると、力強いビートに優しい歌声が乗るという構図が、心震わせるエモーションを掻き立てていく。“繋がり合おう” “重なり合おう”という楽曲のメッセージを、仕草でも表しながら懸命に届けようとするふたりは、目でも耳でも熱い高揚感を呼び、“一緒 一生”と声を揃えるクライマックスは感動的なほど。超特急の歌を長年担い続けてきたタカシが、王のように堂々たる歌い姿を見せれば、シューヤも十八番の高音ファルセットで彩って、見つめ合うふたりのフェイクの連なりは天まで駆け上がり、笑顔の連鎖を生む。知覚しているのは聴覚なのに、“まばゆい”としか表現できない歌が、そこにあった。

“せぶいれ!”コールからのアンコールは、シューヤ加入の際のオーディション課題曲だった「gr8est journey」でスタート。カメラや8号車に向けて笑顔でアピールしながら、伸びやかな歌声を未来へと続くレールの先までふたりで響かせていく。そうしてふたり並んで歌うポジションが、最終オーディションのときと同じであることに気づき、大宮公演では「そのときとバチッとリンクして不思議な気持ちになった」(タカシ)という言葉も。シューヤも「歌いながら、すごく染みました」と感慨を表し、「あのときは目の前にお偉いさんとか、怖い目をしたメンバーとかいたんですけど(笑)、今日はかわいいみんながいてくれてうれしいです!」と黄色い歓声を呼んだ。ちなみに、初回公演で最初に湧いたのは“アンコール!”だったが、途中から自然に“せぶいれ!”へと変化していったという経緯もあり、タカシは「こんなことあるんやって、僕は感激してます!」と歓喜。そんなファンへの感謝を表すように、大宮公演では「refrain」も追加披露された。生演奏に合わせ、フェイクもファルセットも自由自在に打ち出されるパフォーマンスは、タフでこなれたグルーヴ感を醸し、まさに“音”を“楽”しむという“音楽”の真髄を表すかのよう。この曲のみオーディエンスの撮影・拡散も許可されていたため、ぜひ各種SNSで検索してみてほしい。

ちなみに羽田公演で撮影OKだったのが、「ラスト1曲、皆さんに『Yell』を贈ります」と始まった「Yell」。ウエディングソングの祝福に満ちた調べをピアノが奏で、ヴェールのように繊細に重ねられる透明感いっぱいのふたりの歌声と笑顔に多幸感が溢れ出す。歌い終えると場内に喝采が湧き、羽田公演の際は「せぶいれでZeppツアーがしたい」と言っていたシューヤも、大宮公演では「夢はでっかく、ふたりでアリーナに立ちます!」と野望をスケールアップさせていた。事実、2月には朝の情報番組に出演してふたりで歌ったり、4月27日には茨城で行われるフェスへの出演が決まったりと、“せぶいれ”としての活動は着実に増えている。MCでアンケートを取ると、超特急のライブに参加するのは『せぶいれのうた』が初めてというオーディエンスも想定外に多く、「自分たちが窓口になったってことでしょ? めちゃめちゃうれしい!」と、ふたりも驚きと喜びを露にしていた。しかし「最終的にはすべて超特急に還元したい。8号車の仲間をたくさん作っていきたい」とシューヤは言い切り、「超特急の活動の上で、これからも“せぶいれ”はどんどん突っ走っていきます」とタカシも宣言。“最強のツインボーカルになる”という目標のもと、ボーカリストとして、そしてダンス&ボーカルグループの一員として、リスナーを笑顔にするエンタメを求める彼らの旅は続く。

TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 鈴木友莉

<セットリスト>
1.Asayake
2.Call My Name
3.a kind of love
4.Thinking of you
5.UNKNOWN…
6.クレッシェンド
7.Re-TRAIN
8.FLASHBACK
9.Whiteout
10.宇宙ドライブ
11.君と、奏で
12.My Buddy
13.Burn!
14.Synchronism

EN1.gr8est journey
EN2.Refrain(大宮公演のみ)
EN3.Yell

リリース情報
2024.04.17 ON SALE
EP『Just like 超特急』

超特急 OFFICIAL SITE
https://bullettrain.jp/