日本人の男性は、日常的にバッグを持ち歩くことが多い。

一方、日本以外の多くの国々の男性は、ちょっとした外出ではバッグを持つことを避ける傾向が強く、手ぶら歩きが基本だ。



顕著な車社会のアメリカなどでは、荷物は車に置いておけばいいということもあるが、アメリカ人ほど車を使わないヨーロッパやアジア諸国、アフリカの男性もやはり手ぶら派が多いようだ。

○■バッグを持ちたがる日本人男性と、手ぶらを好む諸外国の男性

そんな彼らが初めて日本を訪れたとき、ほとんどの男性がバッグを持ち歩く光景に面食らうらしい。

どちらかというと彼らは、バッグ持ち男は弱々しいと感じるので、日本人の男性は恥ずかしくないのかと不思議に思うようだ。

僕はこの“男性バッグYES or NO問題”に強い関心があり、一時期は外国人の真似をして、仕事でどうしても必要なときを除き、なるべく手ぶらで歩くように努めていた。

スマホひとつあればさまざまな用を済ますことができる世の中なので、これはこれでいけるんじゃないかなとも思った。

でも結局は普通の日本人と同様(まあ、普通の日本人だから当然だけど)、外出の際には必ず小さなバッグを持ち歩くスタイルに戻った。

だって、やっぱりその方がまったく便利だからだ。

ちなみに、小さい頃から手ぶらに慣れていて、来日直後はバッグを持ち歩くことなど考えられなかった外国人男性も、日本でしばらく暮らしたのちにはほとんどが、嬉々としてバッグを持ち歩くようになるという、エビデンス不詳の話がある。

男が持つ小さなバッグを“man purse”や“murse”などと呼んでバカにしていたマッチョ志向のアメリカ人も、日本流の暮らしに慣れるほど、「すまんかった、murseってめちゃ便利やん」と改心するようだ。知らんけど。

今回ご紹介したいと思っている僕の愛用品は、まさに“murse”のカテゴリーに入る、小さなショルダーバッグである。

シンプルでおしゃれな、ブックユニオン『BOOK TOTE MINI』

○■おしゃれ系ブックストアの店頭で販売されているブックトート

音楽ソフト販売の大手、ディスクユニオンが手がける書店・ブックユニオンの『BOOK TOTE MINI』。

蔦屋書店をはじめとする、おしゃれ系ブックストアでよく売られているショルダーバッグである。

“ブックトート”というのはもともと、重い本を運ぶことを目的とするバッグのこと。

ビートカルチャーを生み出したサンフランシスコの伝説的書店・シティライツブックストアとか、アート系が充実したニューヨークの老舗書店・ストランドブックストア、世界でもっとも美しい書店のひとつとして必ず名前があがるロンドンのドーントブックスなど、世界の有名書店のオリジナルバッグがお土産として人気を集めたことから広まったアイテムである。

ブックユニオンの『BOOK TOTE MINI』は、とにかくデザインが秀逸だ。

音楽好きの方ならわかると思うが、さすが販売元がレコード屋だけって、レコードバッグの形を模している。

そして前面には「LIFE IS SHORT READ MORE BOOKS.」と、読書好きの心に刺さるフレーズがタイポグラフィーでデザインされている。

「人生は短し、もっと本を読もうぜ」。

うん、まったくそのとおりだと思う。

大きさは、僕の私物の実測値で縦24cm×横21cm×マチ9cmと小さめ。

でもちょっとそこらに出かける際の携行品は余すことなく入れられるし、背面の2つのポケットにはちょうどスマホが入るので、なかなか便利なのだ。

小さくて使いやすいサイズ感』

ちょっとした外出に持ち歩きたいものは全部入る

スマホが出し入れしやすい外ポケット

○■タブレットも入るサイズなので、仕事でも使うことできる

僕はフリーの編集者兼ライター/コラムニストなので、基本的に仕事場は自宅の自室。

毎日の出勤はない。

仕事柄、打ち合わせや取材などで外出する際もスーツを着る必要はなく、いつもカジュアルな服装をしており、仕事バッグは楽ちんなバックパックタイプがほとんどである。

しかし夏場は、バックパックだと背中が蒸れて大汗をかいてしまうので、ショルダーバッグを持つことが多い。

夏場のバッグはショルダータイプが一番

そして最近は、基本的にオフの日用にと思って買ったこの『BOOK TOTE MINI』を、仕事でも使うことが多くなっている。

こんな小さなバッグで仕事できるかと思われるかもしれないが、『BOOK TOTE MINI』は長方形の箱型なので、意外にもiPadが難なく収納できる。

僕の仕事は、自宅で使っているMacBookとiCloudでつながったスマホ&タブレットさえ持っていれば、他には何もいらないことばかりなので、iPadジャストサイズのこのバッグは、仕事用として立派に通用するのだ。

iPadを入れられるサイズ

ボックス型の利点だ

○■もともとの用途はそれだから、本や雑誌もたっぷり収納できる

僕の仕事は、資料として書籍や雑誌を持ち歩くことも多い。

マチ幅がしっかり取られている『BOOK TOTE MINI』は、本もたっぷり収納できるので、その点でもかなり便利だ。

プライベートで古書店巡りをするときや、溜まった本をカフェでじっくり読もうと思うときにも使える。

もともと本を入れることが目的のバッグだけに、本をたくさん入れてやると、なんだかイキイキしてくるようにも見える。

最大でB5サイズの雑誌まで入る

ところで、僕はブックユニオンの『BOOK TOTE MINI』を前にも一度買ったことがある。

マイ『BOOK TOTE MINI』の第一号と第二号

サイズは同じだが、最近使っているデニム地ではなく、白い帆布製。

表面のタイプグラフィーは「READ Books SET YOU Free.」と、これまた本の虫にはグッとくるフレーズがデザインされている。

「本を読めば、お前は自由になれるんだ」みたいな感じだろうか。

この第一号『BOOK TOTE MINI』を気に入って頻繁に使っていたのだが、中学生の娘に取られてしまった。

そこでやむなく買った第二号『BOOK TOTE MINI』が、今回ご紹介したデニム地の方というわけだ。

おしゃれが気になり出し、何かとうるさい年頃女子だが、そんな彼女の目にもこのバッグはとても素敵に映ったらしい。

だから最近は、娘と僕でバリエーション違いの『BOOK TOTE MINI』をぶら下げて、並んで歩いたりしている。

それはそれでまた、なかなかお父さん冥利に尽きるのである。

絵になるバッグなのだ

文・写真/佐藤誠二朗

佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000〜2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。 この著者の記事一覧はこちら