年齢を重ねるにつれて、変わっていく友人関係。環境が違ったりすると昔のように「親友」に相談したりするのは難しく、戸惑いや不安を抱えてらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。320万部のベストセラー『女性の品格』(PHP研究所刊)の著者である坂東眞理子さんは、「50歳を過ぎても新しい出会い、新しい友人は必ずできる」と言います。そこで今回は、坂東眞理子さんの新刊『女性の覚悟』(主婦の友社刊)から一部抜粋してご紹介します。

大人になると「親友」はできないのか?

人生で自分の性格をわかって何でもありのままに受け入れてくれる親友は宝だとよく言います。そうした人生の宝ともいうべき親友ができるのは学生時代か若い時期だけ、大人になると仕事のうえでの付き合いで知人は増えるけれど、親友はできないと思い込んでいる人が多いようです。

そうでしょうか。

確かに私自身若いときは友人たちと一緒に行動し、朝まで語り明かし、自分を理解しているのは親や兄弟より友人だと思い込んでいました。特に大学時代は才能の面でも人間的にも素晴らしい人たちと出会えたのはとても幸せだったと思います。お互いに時間がたっぷりあったのでよく話し、よく一緒に行動していました。しかし卒業後お互いに別の道に進み、家庭を持ち、時間がなくなりなかなか会えず、いつの間にか関心や話題が合わなくなります。それでも久しぶりに会って話していると懐かしさはよみがえり、当時の気分にすぐ戻れます。確かに若いときの友人は人生の宝です。

●年齢とともに変わる「親友」を受け入れるしかない

しかし、学校を卒業した後も職場で、あるいはいろいろな団体活動で、あるいは研究者のネットワークでいろいろな出会いがありました。職場で一緒に苦労した仲間、同じ目的を持って協力した上司や部下は強い友情あるいは同志愛で結ばれます。私はボストンやオーストラリアのブリスベンでも素晴らしい友人に恵まれました。

私の友人たちからは子育ての時期にママ友としてPTA仲間として親しい友人と出会った、近所の方と家族のように付き合ったという話もよく聞きます。そういう出会いも子供が成長して進路が違った、引越ししたなどでそうした友人と別れることもあります。最近は離れてしまった友人ともフェイスブックやLINEでいつまでも昔のつながりを維持できるようになっていますが、去る者は疎しです。

人生のステージが変わると、付き合う人が変わっていき、年齢とともに親友がいなくなっていくというのは寂しいですが、受け入れなければならない現実です。

●50代に意外と多い「親友」の悩み

先日ある人生相談で「表面的な友人はいるが心から信じ頼ることのできる親友がいない」という50代の女性が悩みを打ち明けていました。正直なところ、中高校生ならいざ知らず、大人になってもこんな悩みを持っている人がいることに驚きました。

自分のすべてを受け止めてくれ、信じ頼ることのできる人はめったにいません。そんな人が存在するのはまれですし、たやすく出会うはずがありません。たまたまそんな人に出会ったら、とくべつな幸運です。いつでも愚痴を聞いて励ましてくれる友人には自分も相手の悩みや愚痴を聞いてあげなければそういう関係は成立しませんし、自分が与えていないで一方的に受け取るだけという関係は長続きしません。相手に深く関わり合うというのは生易しいことではありません。理想の「親友」に出会うのは本当にまれです。

●50代からは、“親友”よりも“ゆる友”を

50歳以上の多くの女性におすすめしたいのは「親友」を持つよりも、緩やかに好感を持つ友人「ゆる友」がたくさんいることです。特に用がなくても一緒にいて楽しい、ちょっと助けを求めたり、相談したりすることができる、相手の長所が心地よく、短所が気にならない。そうした友人が10人いるほうが、全面的に信頼できる深く結ばれたたった一人の親友がいるより、現実的で幸せな人生です。

親友はこちらが苦境に立ったときなどに思いがけず現れることがありますが、探して得られるものではありません。昔の言葉で言えば『縁』です。求めて得られることはなくても何歳になっても素敵な人との出会い、尊敬できる人との出会い、自分の知らない世界を生きている人、考え方が面白い人との出会いはあります。

そして新しい場に身をおくと新しい出会いが生まれます。「新友」ができます。親友がいないと寂しがっていないで、仕事でも団体活動でも新しい世界に関わりましょう。私も新しく大学で働くようになってから新しくいろんな人に出会いました。

●まずはその人の“ファン”になることが大切

せっかく出会っても「袖振り合う」だけで終わってしまうこともありますし、その出会いが友人としての付き合いにまで発展することもあります。私のおすすめは友人にまでなれなくても素敵な人に出会ったらファンになることです。いろんな人のファンになるというだけでよいのではないでしょうか。友人は相互関係です。自分も相手に素敵だな、尊敬するところがあるな、と思われなければなりませんし。

次に会ったときは好意を持っている、また会いたいと伝えるなどの働きかけも必要です。またお互いのタイミングが合わなければなりません。しかしファンはこちらが一方的に好きになって応援すればよいのです。深く信頼できる親友を持とうなんて思わず、たくさんの人のよいところを見つけ、たくさんの人のファンになるようにすると人生に楽しみが増えます。

それには自分がいろんな人の好いところに感動する心の柔らかさがないと、ファンにはなれません。まず自分からあいさつをする、声をかける、そして言葉や笑顔など自分ができることで少し好意を示すことです。それで十分だと思いますが、さらに親しくなりたかったら相手に役に立つこと、喜ばれることを少し意識して提供する、距離を近づけるようにしましょう。

そうした負担にならない努力を続けていると50歳を過ぎても新しい出会い、新しい友人は必ずできます。いざいざこの人と親友になろうと期待しすぎると、かえって親友になれません。多くを期待しすぎると落胆します。友人への要求水準は少し下げておきましょう。