この記事をまとめると

■内燃機関が進化を果たす過程で、いろいろなメカニズムが誕生してきた

■そのひとつに可変バルブ機構がある

■メカニズムや搭載車について解説する

日本メーカーで初めて挑戦したのは三菱!

 内燃機関(とくにガソリンエンジン)が進化を果たす過程で、いろいろな新メカニズムが考え出されてきた。出力性能から見ると、過給技術(ターボチャージャー/スーパーチャージャー)の進化が大きく目につくが、燃焼の高効率化/エンジンの高出力化を基本に見ていくと、吸排気バルブの開閉タイミングを可変化する技術の実用化も大きなポイントになっている。もちろん、点火タイミングや点火電気の制御、燃料の吐出タイミング/量の制御を行う電子制御技術の進化は、もはやエンジンメカニズムの基盤であり、これを外すことはできないが、燃焼に関わる機械面での大きな進化という点では、可変バルブ機構が大きな比重を占めている。

 では、可変バルブ機構とは、いったいどんなものなのか? おさらいになるが、4サイクルエンジンの燃焼メカニズムを、もう1度振り返ってみることにしよう。第1段階は、ピストンが下降する負圧によってシリンダー内に空気を吸入する行程だ。この時、外気をシリンダー内に取り込むため、吸気バルブが開くことになる。

 第2段階が、ピストンが上昇して吸入気(空気または混合気)を圧縮する行程だ。当然、吸排気バルブは閉じていなければならない。

 そして第3段階が爆発(燃焼)行程で、強い燃焼圧力でピストンを押し下げ、この力が回転力となってクルマを進めることになる。

 第4段階が排気行程だ。爆発、燃焼行程で燃料成分が燃え尽きたガスを、ピストンの上昇力によってシリンダー外に排出する作用だ。そしてこの燃焼ガスをシリンダー外に排出するため開くのが排気バルブである。

 さて、吸排気のため適宜開閉する吸排気バルブだが、その動きを決めているのがカムシャフトだ。正確に言えばカム山だが、吸排気バルブはカム山の形状(プロフィール)に合わせて開閉運動を行うことになる。そして、この動きにはふたつの要素があって、いつ開き、いつ閉じるかというバルブ開閉タイミングと、バルブをどれほど大きく開けるかというバルブの持ち上げ量、バルブリフトによって構成されている。

 それぞれ、エンジンの回転領域によってベストな数値域があり、ひとつの設定値、いわゆる固定値で、回転全域での最適な吸排気効果を得ることはできないのである。そこでどうしたかといえば、バルブの開閉タイミングやバルブリフト量を、回転域に応じて最適な数値に変化させればよいと考えたのである。

 これが可変バルブ機構で、日本メーカーで最初にトライしたのが三菱だった。1982年のことで、排出ガス規制対策をクリアし、全メーカーが性能競争を繰り広げる真っ盛りの時期だったが、排出ガス低減、燃費性能の向上をめざし、低負荷走行時に4気筒中の2気筒を休止させる方式を考え出し、初代ミラージュ(A151系)に搭載した。

 MD(Modulated Displacement=可変排気量)方式と名付け、任意の領域で2気筒分の吸排気バルブを停止することで、半分の排気量(1400cc→700cc)で運転することを狙ったエンジンだ。このとき、バルブの休止を制御したのがロッカーアームで、任意の回転域では2気筒分の吸排気バルブが開閉しないよう、ロッカーアームを空打ちさせる方式を採っていた。

ホンダは高性能モデルに幅広く採用

 この方式を発展させたのが、同じく三菱が1984年に実用化したシリウスDASH(Dual Action Super Head)3×2方式の可変バルブ機構だ。ターボ過給と組み合わせたSOHC3バルブ方式(吸気2/排気1)のエンジンで、低回転時には吸気1/排気1で運転し、高回転時に休止させていたもう1つの吸気バルブを作動させ、吸排気流の高効率化、充填効率の向上を図ることで高出力化を図った可変バルブ機構である。搭載モデルはスタリオン、ギャランΣ(E15A系)だったが、4バルブDOHCターボ全盛の時期で、市場で強く注目されることはなかった。

 低速域と高速域で、理想とするバルブ開閉タイミングに異なりがあることに着目し、低速域と高速域でバルブ開閉タイミングを変えられるようにした位相可変型バルブタイミング方式が、1986年に日産が実用化したNVCS(Nissan Valve timing Control System)だった。3リッターV6DOHCのVG30DE(F31レパード)に採用。量産エンジンの高性能化を急テンポで展開しつつあった日産が、自然吸気3リッターエンジンの最高レベルを目指して商品化したものだった。

 高出力化に対し、バルブ開閉タイミングのみではなく、バルブリフト量も可変にしたシステムが1989年にホンダがリリースしたVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control)だ。最適なバルブリフト量も低速域と高速域では異なり、ひとつのカム山で対応できる回転ゾーンに限界があることから、ホンダは低速時(浅く開く)と高速時(深く開く)でカム山を切り替えれば、幅広いエンジン回転域で高出力性(高トルク性)が得られると考えた。このエンジンがB16A型でDA型インテグラに搭載され、1595ccの排気量から160馬力を発生。自然吸気エンジンながらリッター100馬力を達成する驚異の仕様だった。

 その後VTECエンジンは、ホンダ高性能戦略のイメージメカニズムとして、高性能モデルに幅広く採用されていくことになり、可変バルブタイミングの特徴を生かし、省燃費性能を謳う環境型エンジンでも応用されていくことにな。

 なお、三菱のMIVEC(Mitsubishi Intelligent & innovative Valve timing & lift Electronic Control)も、システム制御に異なりはあるものの基本的にはVTECと同じ考え方で、1992年にランサー/ミラージュ(CB4A系)に搭載されて商品化されている。

 ホンダVTEC、三菱MIVECとほぼ同時代に、パワー競争を繰り広げる1.6リッタークラスのスポーツエンジン用としてトヨタが実用化したメカニズムがVVT(Variable Valve Timing)だった。この方式はバルブリフトの可変はなく、吸気バルブの開閉タイミングのみを制御する方式で、5バルブの4A-Gと組み合わせリッター100馬力を実現していた。

 この方式は順次進化を遂げ、1999年にカム位相の連続可変機構と吸排気バルブのリフト切り替えを組み合わせたVVTL-i(Variable Valve Timing and Lift intelligent)方式としてセリカ(T230系)用の1.8リッター2ZZ-GEで採用され190馬力の最高出力を発生した。

 ちなみに、過渡期にあるトヨタのVVT-i(Variable Valve Timing intelligent=電制可変バルブタイミング機構)と同じ考え方のシステムが、BMWのVANOS(Variable Nockenwellen Steuerung)で、当初は吸気カムシャフトのみに作用する通称「シングルVANOS」方式だったが、排気カムシャフトも可変タイミングとした「ダブルVANOS」へと進化し、さらにバルブリフト量可変式のバルブトロニック方式と組み合わせられることになるのだが、吸入空気量が少ない時にスロットルバルブが障害となってポンピングロスが発生することを重要視したBMWは、スロットルバルブを廃した方式を採用して世の中を驚かせた。

 シリンダー内に導き入れる混合気の吸気タイミング、シリンダー外に排出する燃焼ガスの排気タイミング、そして吸排気の量を決めるバルブリフト量。4サイクルエンジンの出力特性は、カムシャフトの動きと連動した吸排気バルブの動き方に影響される要素が非常に大きかった。可変バルブ機構は、この特徴に着目したもので、初期のものはわずかなバルブタイミングの変化だったものが、バルブタイミングは連続可変、バルブリフト量も回転域に応じて最適な仕様を使い分けるまでに進化を果たしてきた。可変バルブ機構は、4バルブDOHC、過給機と並ぶ高性能化のカギを握るエンジンメカニズムと言えるだろう。