グルメ誌がこぞって紹介する「黒田珈琲」のホットケーキ

「現在、日本のカフェ業界は全国に1530店舗(2019年12月時点)を展開する『スターバックス』の “一強” 状態。喫茶店は、年々、減少傾向にありますが、そんななかでも地域に根差して、スターバックスをしのぐほどの喫茶店も存在します」

 そう語るのは、カフェ業界の事情に詳しい経済ジャーナリストの高井尚之氏。

 言うまでもなく、スタバに勝っているのは「その店にしかない何か」があるからだ。今回、本誌はスタバをしのぐ7軒の喫茶店について、その「何か」を探る。

●黒田珈琲(東京・祖師ヶ谷大蔵)

 まずは、東京・祖師ヶ谷大蔵にある「黒田珈琲」。グルメ誌などで必ず紹介されるのが、同店のホットケーキだ。これ食べたさに訪れる人が、跡を絶たない。

「ホットケーキのシロップは自家製で、素朴さにこだわっています。多いときは、70枚出た日もあります。

 私たちのような個人経営の喫茶店が、祖師ヶ谷大蔵のような住宅地で、コーヒーだけで勝負するのは厳しい。だからこそ、パンやシチューなど、フードの味には妥協はしていません」(黒田康裕店主)

 絶対的な看板メニューの存在は、リピーター獲得のための大きな要素なのだ。そのほかにも同店では2カ月に1度、1冊の本を題材に10〜20名が集まって感想を述べ合う読書会など、喫茶店では珍しい催しも開催する。

【SHOP DATA/黒田珈琲】
・住所/東京都世田谷区砧6-37-5
・営業時間/9:00〜18:30(LO18:00)
・休み/年中無休

「珈琲 王城」で人気のパフェ

●珈琲 王城(東京・上野)

 喫茶店激戦区・上野で勝ち抜いてきた「珈琲 王城」。じつはアメヤ横丁などがある上野6丁目の中心エリアは、同店の存在もあり、スタバの路面店がない “空白地帯” である。

王城は、45年前の創業時から味の変わらないスパゲティや、そのボリュームに圧倒されるパフェなど、フード類を支持する常連が多い店だ。「古きよき昭和」を思わせる、レトロな空間も趣きたっぷりだが、近年、意外な形で新たな顧客が増えたという。

「創業時から出しているクリームソーダや、いちごミルクが『色み的にインスタ映えする』ということで、若い女性のお客様が連日お見えになります。いまや客層の3〜4割は若い女性のお客様ですね」(玉山さん)

 昔と変わらぬ、懐かしい味の継続。それが「黒田珈琲」と「王城」の共通点でもある。

【SHOP DATA/珈琲 王城】
・住所/東京都台東区上野6-8-15
・営業時間/8:00〜21:30(LO21:00)
・休み/不定休

豆に熱い思いをかけるサザコーヒーの鈴木副社長

●サザコーヒー本店(茨城・ひたちなか)

 コーヒー+アルファで勝負する店がある一方で、コーヒー豆や、コーヒーの味に徹底的にこだわって人気を博す店もある。

 コロンビアに自社農園を持つ、茨城発の「サザコーヒー」は、世界で最も高価なコーヒー豆のひとつ「パナマ・ゲイシャ」や、徳川慶喜ゆかりの「徳川将軍珈琲」などを扱い、店舗によっては、周辺のスタバの売り上げを凌ぐこともあるという。

「うちは、焙煎とコーヒー豆の卸が出発点。喫茶の売り上げを、コーヒー豆の売り上げが、圧倒的に上回っているのも特徴です」(鈴木太郎副社長)

 毎年その年ベストの「パナマ・ゲイシャ」を落札している鈴木副社長の、豆にかける思いは熱い。

【SHOP DATA/サザコーヒー本店】
・住所/茨城県ひたちなか市共栄町8-18
・営業時間/10:00〜20:00(喫茶スペースは19:30まで)
・休み/年中無休

「ピースコーヒー」は日本のシアトル系コーヒーの先駆け的存在

●ピースコーヒー 茂原店(千葉・茂原)

 スタバの日本1号店が銀座に出店した1996年。コーヒー好きが高じて、千葉県茂原市で創業した「ピースコーヒー」も、自家焙煎と豆にこだわっている。

 安くても1杯の市場の相場が700〜800円するスペシャルティコーヒーのみを提供しているが、「ピースコーヒー」はそれを、驚きの300円均一で提供する。このコスパのよさも相まって、茂原市に3店舗、千葉市、東京にも店を構える人気店だ。

「原価でコーヒー豆を提供できるぶん、やろうと思えば、それを儲けに転じさせることはできます。ただ私としては、開業当初にお客様が来なくて苦い思いをしたので、安くできるぶんはお客様に還元して、長くお店に通っていただきたいんです」(大石誠オーナー)

【SHOP DATA/ピースコーヒー 茂原店】
・住所/千葉県茂原市茂原15-5 
・営業時間/8:30〜22:00
・休み/年中無休

「ヒロコーヒー 伊丹いながわ店」では、豆の焙煎が終わるたびに味を確認

●ヒロコーヒー 伊丹いながわ店(兵庫・伊丹)

 北大阪エリアと兵庫県で19店舗を展開する「ヒロコーヒー」。焙煎工房を併設する「伊丹いながわ店」では、挽煎したての豆をその場でパックして発送し、受注生産で「当日焙煎、当日発送」を実現している。年2回あるコーヒー豆のセールの日は、2日間で8tもの豆が売れるという。

「工房には、コーヒーの豆の品質を格付けできる資格を持つスタッフが、3名常駐しています。手間と労力をかけて提供させていただくオリジナルのコーヒーを、ゆっくり味わって飲んでいただきたいですね」(同社の大橋良美さん)

【SHOP DATA/ヒロコーヒー 伊丹いながわ店】
・住所/兵庫県伊丹市北伊丹5-15-1
・営業時間/8:00〜22:00(LO21:30)
・休み/元日

●弘大カフェ 成田専蔵珈琲店(青森・弘前)

 地域密着で盛況を呈する喫茶店はまだまだある。青森県弘前市の「成田専蔵珈琲店」は、弘前にコーヒー文化を浸透させた立役者として、地元民からの信頼も厚い店だ。

 地元自治体のラブコールでスタバが出店すると、オーナーの成田専蔵氏は、それに対抗する心意気で、弘前大学構内に「弘大カフェ」を出店した。

 弘大の構内にある同店舗は、大正14年に建てられた登録有形文化財を使っている。いまや「コーヒーを飲むなら弘大カフェ」と、地元では知らない人がいない人気店となっている。

【SHOP DATA/弘大カフェ 成田専蔵珈琲店】
・住所/青森県弘前市文京町1
・営業時間/10:00〜19:00(LO18:30)
・休み/木曜日

●カフェタナカ 本店(愛知・名古屋)

 モーニング文化が盛んな喫茶王国・名古屋の老舗「カフェタナカ」は、2019年に理想のショコラを求めて、アフリカのサントメ島に、カカオの自社農園を開設。

「パリで腕を磨いたパティシエールによるカフェメニューや、本格スイーツが味わえる店です」(水野貴之専務)

 スタバ一強のなか、勝ち残る喫茶店には、店側のコーヒー愛と、地元民の店愛が溢れている。

【SHOP DATA/カフェタナカ 本店】
・住所/愛知県名古屋市北区上飯田西町2-11-2
・営業時間/平日9:30〜19:00(LO18:30) 、土日8:30〜19:30(LO19:00)
・休み/年中無休

(週刊FLASH 2020年4月21日号)