安倍首相は緊急事態を宣言するのだろうか?そのとき日経平均はどうなるのか(写真:時事通信)

日本政府は連日のように「国内における新型コロナウイルス感染爆発は瀬戸際を迎えている」と繰り返している。だが、日本医師会ではすでに医療崩壊の危機を2度にわたって提言している。今、日本は誰もが感じる不安の中に居る。

小休止の後、もう一度波乱相場が来るのか?

株式市場も例外ではない。

激しい上げ下げが続いていた日経平均株価は、先週末の前日比1円47銭高ではなにかほっとする感じを与えている。しかし直近を振り返ってみると、ほっとできない事態も見えてくる。

2月21日の92円41銭安から始まった日経平均の今回の下げは、3連休明けの同25日からの「6連続前日比3ケタ上下」の後、3月4日に17円33銭高で一息入れた。

しかし、3月5日から再び1050円安、1128円安を含む8連続の3ケタ以上の上下となり、同月17日の9円49銭高で再び一服したものの、これも翌日から今度は1204円高、1454円高を含む11連続の3ケタ以上の乱高下、そして今回の1円47銭高となる。

ひと呼吸を入れながら「6連続」「8連続」「11連続」と来た高ボラティリティ相場のリズムが続くと、これから11連続以上の波乱相場が来る可能性がある。

ただ「6連続」「8連続」の波乱過程では2万3400円から1万7000円まで約7000円の急落となったが、11連続の中身は前半1万6552円の安値を付け、中盤は1万9546円まで約3000円戻った。終盤再び「1万8000円割れ」という展開で一方的に下げた「6連続」「8連続」の場面とは若干動きが違い、下値の値頃感を感じることも出来る。

その理由は、日経平均の株価純資産倍率約0.8倍水準である1万6385円をひとまずの下値メドと見る意見が多いからだ。また、アベノミクス相場(安倍晋三総理就任の2012年12月26日から、2018年の高値2万4270円)の引け値ベース半値の位置である1万6301円が重要な下値メドと見る投資家もいる。筆者もその1人だが、「半値押しは全値押し」と言う相場格言通り、一般的には上げ幅の半値以上の下げは極めて厳しい状況変化で、その相場の死を意味する。

しかし、もし下げが半値の手前で止まった時は、その相場がまだ生きている証拠で、再び上を目指して上昇する可能性を残すと言われる。この重要な日経平均の位置が、前出の「もう1つの下値メド」である純資産倍率0.8倍の位置とほぼ重なった1万6000円台前半が、新型コロナショック相場の下値と見るのが妥当ではないかと考える。

緊急事態宣言」を機に反発も?

東京都内の新規感染者が118人(4月4日)、143人(同5日)となり、そのうちの多くが感染経路不明という極めて危険な数字が出ても、政府はまだ緊急事態宣言を発しない。この不透明感を受けて、日経平均は再び3ケタ以上の波乱となる可能性がある。

そうなった場合は2番底を取りに行くことになるが、その2番底はこの1万6000円台前半が攻防戦の強力な下値メドになると思われる。

もし感染爆発・緊急事態宣言が出たとして、今後は3月19日の1万6358円と共に2点底を形成することになるのではないか。市場は不透明感で売られ、悪材料出現で買われる場面を、筆者50年の業界経験の中で何度となく見て来た。その「株価の先見性」に期待している。

新型コロナ感染状況が最有力材料で、いまのところ理屈が通用しない相場だが、落ち着いてくれば理屈は必ず生きてくるはずだ。

先週の指標を見てみると、4月1日の日銀短観は大企業製造業DIが「マイナス8」という厳しさだったが、覚悟をしていた市場の反応は限定的だった。逆に中国の国家統計局3月の製造業PMIは予想以上のV字回復で好調不調の境である50台を超え、翌日の財新製造業PMIも同じく50を超えた。ただ中国の回復を信じないのか、反応は鈍かった。

一方、需給を見ると、4月に入ってから2度の日銀ETF(上場投資信託)買いは1202億円で、3月後半の2004憶円から減少している。需給にはマイナスだが、2004憶円の緊急事態は過ぎたのかと、逆に安心感も出ていた。

雇用が最も重要なことは共通の見方だが、アメリカの3月28日までの新規失業保険申請件数(季節調整済み)は、1週間で664万8000件に急増し、過去最多だったその前週の330万7000件から倍増したが、こちらも覚悟していた市場への材料としては限定的だった。また3日の3月雇用統計(非農業部門雇用者数)は予想を大きく下回り70万1000人減、失業率は4.4%と大きく上昇、平均時給も前年比+3.1%(予想+3.0%)だったが、NYダウは直後550ドル安までの反応だった(終値は360ドル安)。

「業績先取りの動き」はまだ先

さらに3月ISM 非製造業景況指数は52.5と、2月の57.3から低下したものの、予想外に昨年10年1月から続いている50台を維持したが、好材料とはならなかった。

企業業績は下方修正が連発され、2019年度の日経平均予想EPS(1株あたり利益)は1500円を切ってきた。続く2020年4−6月期も厳しく、良くて2020年7−9月期、場合によっては同10−12月期まで回復が遅れることも予想され、業績先取りの動きはもう少し後になりそうだ。

しかも、3月の数字は集計日が月半ばで、新型コロナの影響が完全に織り込まれていないと言われる。今週の予定では9日(木)の4月日銀さくらリポート、4月ミシガン大消費者態度指数などが注目される。まだ紆余曲折があるかもしれないが「1番怖いところが買い場」と言う相場の不変の真理を心に刻みつつ、対応して行きたい。