令和時代に昭和を感じさせる浜松の伝統校対決、7回に商が工を逆転して逃げ切る浜松工・吉田康一郎君

 平成が終わって新しい元号の令和となった初日の5月1日、浜松商は準々決勝で、静岡商に競り勝った。平成をさらに遡った昭和の時代には、ともにセンバツで全国制覇を果たした名門校同士の対決だった。それを制した浜松商の準決勝は同じ浜松市内の伝統の公立実業校対決となった。

 お互いにスタンダードなデザインのユニフォームで胸文字もお互いにローマ字で「HAMASHO」(ワセダ文字)「HAMAKO」(ゴシック体)と書かれている。それらも昭和時代の歴史を感じさせてくれる味わいがあった。そんな中で、浜松商は昭和時代からの伝統でもある“逆転の浜商”が健在だということを新時代になっても示して決勝進出を果たした。

 試合は乱戦気味の展開となった。5回を除いて、各イニングでどちらかが点を取り合うという展開で8回まで進んでいった試合。いわば、点の取り合いでもある。

 初回は浜松商が安打とボークなどで得た一死二、三塁から4番福井君の左中間へ落す二塁打で2者を帰して先制。しかし2回、浜松工は2つの内野失策で1点を返してなおも一、二塁という場面で、2番田代君が右前打して同点。そして3回には浜松工が杉浦君、塩崎君と中軸の連続二塁打で1点リードすると、さらに一死三塁で岩田君が左前打してこの回2点を挙げてリードを奪う。

 追う浜松商は4回、「流れ、流れ、流れ持ってこい」という応援スタンドの声援にも後押しされたかのように、5番山本陸君が左翼線へ二塁打すると内野安打と送球ミスで帰って1点差として追いかける。ただ、浜松工の吉田君も、「流れはやらないよ」とばかりに、ここで踏ん張っていく。

浜松商・瀬戸口優太君

 そして、浜松工は6回にも二死一、三塁から2番高林君が右線に落としてこれが三塁打となり3点差とした。

 しかし、これが決定的にはならなかった。伝統的に粘りをモットーとする浜松商である。7回、浜松商の鈴木祥充監督はこの回8番からという打順でバッテリーの交代を覚悟して連続代打を送り出す。2人目の代打後藤君が右前打して、これが反撃の狼煙(のろし)となる。続く1番斧田君が左中間二塁打して二三塁。四球後、川口君が右前打でまず一人を帰す。そして、鈴木監督が、「今のところは、人間的な要素も含めて不動の4番」と期待する福井君が右越三塁打して走者一掃の逆転長打となった。勢いづいた浜松商は、さらに代わった杉田君に対しても山本陸君が右前打で続いて福井君を帰した。 8回から登板した瀬戸口君が1点を失っただけに、結果的にはこれが貴重な追加点ということになった。

 それでも、2人目の瀬戸口君が何とか2イニングを踏ん張って、点の取り合いは、浜松商が辛くも1点差で逃げ切った。これで、浜松商としては春季大会は優勝した03年以来の決勝進出ということになった。

 鈴木監督は、「(監督就任して)5年目になりますけれども、ここのところ地区予選含めてベスト4の壁というのがあったんですよ。ベスト4までは行けるのですが、そこからなかなか抜けきれない。それを何とか打破できたので、ここからはもう一つ上の大会で、思い存分やらせていただきたいと思います。まだまだ発展途上のチームなので、こうして春の大会でここまで公式戦を続けさせてもらえることは、非常にありがたい」と、今大会の収穫も述べていた。

(文=手束 仁)