日本美術の歴史がよくわかる!国宝も登場する特別展「名作誕生ーつながる日本美術」が上野の東京国立博物館で

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◆日本美術の歴史がよくわかる!国宝も登場する特別展「名作誕生ーつながる日本美術」が上野の東京国立博物館で

重要文化財 仙人掌群鶏図襖 伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀 大阪・西福寺蔵
古典から近代洋画まで、日本美術史上に残る数々の名作。その名作が「どんなつながりで誕生したのか」にスポットを当てた特別展「名作誕生ーつながる日本美術」が、上野の東京国立博物館 平成館で開催される。会場には、国宝や重要文化財を含む選りすぐりの名作が約130件も集結。ジャンルや時代を超えて日本美術の成り立ちがひとめでわかるから、入門編としてもおすすめ。華やかな名作とともに、作品につながるドラマを楽しもう。


左/国宝 普賢菩薩騎象像 平安時代・12 世紀 東京・大倉集古館蔵 右/重要文化財 伝衆宝王菩薩立像 奈良時代・8 世紀 奈良・唐招提寺蔵(撮影:森村欣司、提供:奈良国立博物館)

古代から中世へ、人々の祈りがつないだ仏教美術の名作
2018年4月13日(金)から5月27日(日)まで、上野の東京国立博物館 平成館では、 特別展「名作誕生−つながる日本美術」を開催。日本美術の名作を集め、仏教美術を中心とした第1章、巨匠の名作を集めた第2章、古典文学にちなんだ第3章、モチーフでつなぐ第4章という4つの章に分けて紹介する。

第1章は「祈りをつなぐ」として、仏像や仏画など仏教美術の名作を展示。左の国宝「普賢菩薩騎象像」は平安時代後期の木彫像の名作で、優美な姿と今も残る鮮やかな彩色が美しい。普賢菩薩像が合掌するようになったのは、平安時代前期に日本の高僧が唐から持ち帰った図像によるもの。このスタイルは、当時としては進化系だったのかも。

右は重要文化財「伝衆宝王菩薩立像」で、8世紀に中国の高僧・鑑真(がんじん)とともに日本へやってきた仏師の作品と言われている。1本の木から彫り出した重厚な仏像は、この時代の中国でも最新の表現だったという。


倣夏珪山水図 雪舟等楊筆 室町時代・15世紀 山口県立美術館寄託【展示期間:5月8日〜5月27日】

雪舟、宗達、若冲ら、過去の作品に学んで生まれた巨匠の名作も
第2章は「巨匠のつながり」。ここでは雪舟等楊、俵屋宗達、伊藤若冲の3人に焦点を絞って、それぞれの代表作が生まれたプロセスに迫る。

15世紀に生まれた雪舟は、南宋時代(12〜13世紀)の夏珪など過去の作品に学ぶだけでなく、実際に中国へ旅して同時代の明(みん)の画風も取り入れ、独自の水墨画を確立した禅僧。「倣夏珪山水図」は、線で区切られた画面の内側に「雪舟」、外側に「夏珪(圭)」の名前があるけれど、これは雪舟が夏珪風に描いたことを示すという。この作品は、1933年(昭和8年)以降に所在が分からなくなっていた幻の名品で、2017年になって84年ぶりに再発見され、今回東京で初めて一般公開される。

このほかに、古典文学を主題にした絵画を多く手がけた宗達や、中国の宋や元の時代の絵画を模写した若冲の名作も展示する。トップ画像の若冲筆による重要文化財「仙人掌群鶏図襖」は、自分の描いた初期の作品を模倣した上に大胆なデフォルメを加えた作品。それぞれに、過去の作品とのつながりから生み出した名作を堪能できる。


国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 尾形光琳作 江戸時代・18 世紀 東京国立博物館蔵 【展示期間:4月13日〜5月6日】
古典文学に登場する有名なシーンは工芸デザインの定番に
平安時代の歌物語『伊勢物語』や小説『源氏物語』など、日本を代表する古典文学とのつながりを見る第3章。心に残る場面は、特定のモチーフとの組み合わせで、絵画や工芸品などにも受け継がれている。

尾形光琳作の国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」は、『伊勢物語』の第九段にある情景をもとにデザインされたもの。八つの橋が架かった川にかきつばたが咲いているのを見て、京に残した恋人への想いを詠んだ歌があり、このシーンを描いた「八橋」は工芸デザインの定番に。花は螺鈿(らでん)、葉は金の平蒔絵、橋は鉛板と、素材と技法を使い分けた表現も絶妙。

『源氏物語』からも、垣根に咲く夕顔と御所車を組み合わせた「夕顔」や、梅とウグイスを表す「初音」などをモチーフにした名品を展示。物語は知らなくても、デザインには見覚えがあるかも。元になった情景が分かればさらに納得できそう。


左/見返り美人図 菱川師宣筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵 右/重要文化財 湯女図 江戸時代・17世紀 静岡・MOA美術館蔵 【展示期間:4月13 日〜5月13日】
山水や花鳥、人物など、さまざまなモチーフやイメージでもつながる
第4章「つながるモチーフ/イメージ」では、「山水」「花鳥」「人物」というよく知られたテーマと近代洋画の名作から、人と美術のつながりを紹介する。

左の菱川師宣筆「見返り美人図」は切手にもなった有名な作品で、当時流行のファッションに身を包んだ女性が描かれている。右の重要文化財「湯女図」にも、色とりどりの衣装を着た女性たちが並ぶ。これらの作品は、17世紀のはじめに「現世を楽しもう」という風潮が高まったことで描かれるようになった、同時代の風俗などをテーマにした人物画(風俗画)。ここにも、古典文学からの図柄が転用されている。

名作が誕生した背景にある「つながり」を知れば、新しい魅力にも気付かされるはず。春のトーハクで、名作がいっぱいの贅沢な時間を楽しんで。