毎日の食卓に欠かせない「たまご」ですが、漢字で書くと「卵かけご飯」のように「卵」を使用する場合と、「玉子丼」のように「玉子」を用いる場合の2パターンがあります。この両者は一体、どのように使い分けられているのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、JA全農たまご経営企画本部の中西沙代さん(管理栄養士)に取材しました。

「卵」と「玉子」が存在する理由

 そもそも、なぜ「たまご」には2つの漢字があるのでしょうか。

 中西さんによると「卵」は平安時代から鶏卵を意味する言葉として使われ始め、当時は「かいご」や「かいこ」と読まれていました。室町時代に入って鶏の飼育が急激に拡大すると、南蛮貿易による文化流入の影響もあり、鶏卵を使った料理(カステラなどの菓子)が広がっていったそうです。

 その後、宝石のように美しく丸い殻(=玉)の中に子どもが入っている鶏卵の形状から「玉の子」という言葉が生まれ、江戸時代に「玉子(たまご)」という漢字と読み方が広く使用されるようになりました。一方「卵」もそのまま残ったため、「たまご」には現在も「卵」「玉子」の2つがあるとのこと。

「『卵』が『たまご』と読まれるようになった時期については諸説ありますが、『蚕(かいご)』との紛らわしさを解消するために『たまご』が徐々に広がっていったようです」(中西さん)

「卵」と「玉子」の使い分け方は

 それでは、同義語と考えられることも多い「卵」と「玉子」ですが、どのように使い分けられているのでしょうか。

「『卵』は孵化(ふか)して育つことを前提としたものを指します。鳥類だけでなく、魚類や虫類のたまごも『卵』と書きます。一方『玉子』は食用のものを指し、鶏のたまごを表すのが一般的です」

 つまり「卵」は鳥や魚、虫などの(生命としての)「たまご」全般を指す言葉であり、「玉子」はその中でも、食材として使われる鶏卵を指します。

 しかし、食材の鶏卵に限れば、生の状態のものを「卵」、調理されたものを「玉子」とするのが一般的で、たとえば加熱前のものは「生卵」「卵かけご飯」、加熱されたものは「玉子焼き」「玉子丼」といった具合です。

 ただし「ゆで卵」「卵焼き」などのように、加熱したものに「卵」を使うことが全くないわけではありません。また、料理名としての「卵」は“生々しい”印象を与えるため、現在では「たまごサンド」のように平仮名を用いることも多くなっています。

「明確な基準はありませんが『卵』の方がより広い概念であり、非常に便利な言葉といえるでしょう。2つの漢字があるのも、たまごが古くから愛され続けていることの証左かもしれません」

(オトナンサー編集部)