鈴木誠が投打に活躍、都立東 雨中の投手戦を制す

石井 鷹臣投手(獨協)

 雨が降り続く中、試合がいつ中止になってもおかしくない悪条件にもかかわらず、両投手の好投で、引き締まった好ゲームになった。

 獨協の石井 鷹臣は、身長175センチと決して大きくはないが、スライダー、カーブなど変化球を主体に、丁寧な投球をするのに対し、都立東の鈴木 誠也は187センチという長身から力のあるストレートに、フォーク、スライダーなどを織り交ぜて獨協打線を抑え込んだ。

 試合は1回表、都立東が1番・阿部 亮則の三塁内野安打、3番・鈴木 世那の右前安打で一死一、二塁のチャンスをつかむも、後続を抑えられ無得点が続くと、4回裏にやや押され気味であった獨協が先取点を挙げた。この回先頭の3番・今川 璃玖が二塁手の後方にフライを上げると、これがテキサス安打に。4番・殿川 虎之介の左前安打、6番・阿曽 伊吹の二ゴロなどで一死一、三塁となる。続く6番・川庄 巽也の打球は三塁ゴロ。雨で湿ったグラウンドでゴロが微妙に変化して相手の失策を誘い、三塁から今川が生還した。

 雨はますます強くなり、第2試合の中止は既に決定。この試合もいつストップするか分からない状況であったが、都立東は獨協・石井の変化球に苦しみ、得点を挙げられない。

 雨がやや弱くなり出した7回表、都立東はようやく反撃に出る。この回先頭の1番・阿部が右前安打、2番・堀の四球で無死一、二塁。ここで3番・鈴木 世那が右前安打を放ち、都立東は同点に追いつく。しかしなおも、無死一、二塁のチャンスに、続く打者が三振2個に遊ゴロで、勝ち越すことはできなかった。

 しかし、都立東の勝ち越し点は、思わぬ形で入る。9回表この回先頭の鈴木 世那は遊ゴロ。これが内野安打となると、すかさず二盗。その後、雨の影響で手が滑るのか、獨協・石井の暴投が2つ続き鈴木 世那が生還。都立東が勝ち越した。

 それでも獨協も粘る。9回裏はあっさり二死となったものの、3番・今川の右前安打、4番・殿川の中前安打、5番・石井の四球で満塁となる。続く6番・阿曽は左前安打を放ち、今川が還りまず同点。二塁走者の殿川も本塁を突いたが、左翼手・阿部、遊撃手・渡辺とつなぐ都立東の中継プレーにより本塁で憤死。試合は延長戦に突入した。

鈴木 誠也投手(都立東)

 10回表都立東は、この日好投している7番の鈴木誠也から。鈴木は左中間を破る二塁打を放ち、続く渡辺は四球で歩き、9番・木村真徳の右前安打で鈴木が還り勝ち越し。さらに堀の四球などで続く一死満塁のチャンスに、3番・鈴木 世那がセンターに犠飛を放ち、都立東が2点をリード。その裏を守り切り、延長10回4対2で都立東が勝利を収めた。

 敗れたとはいえ、獨協の石井は10回169球を投げ、10安打を浴びながらも奪三振11と好投。獨協の西田 厚一郎監督は、「スライダーが持ち味ですが、気合を入れ、それでも力み過ぎず、よく投げてくれました」と語る。ただ失策3、暴投3というミスが痛かった。普段人工芝で練習をしており、雨を含んだ土のグラウンドはやりづらい面もあったようだ。

 獨協は、夏は第1回大会から参加している伝統校。現在は部員15人と少なく、実績の面でも、素質の面でも、決して恵まれているわけではない。それでも身長157センチの遊撃手の岡田 新大をはじめ、体は小さくても、粘り強く、食らいつくようなチームカラーに、培ってきた伝統を感じる。「勝てた試合なのに悔しいという思いを励みして、夏につなげたい」と西田監督が語るように、チームのさらなる成長を期待したい。

 一方、勝った都立東も、鈴木誠也の投球が素晴らしかった。10回で192球を投げ、9安打を打たれながらも奪三振は12であった。雨の中で中盤リードを奪われる展開に、都立東の角翔 太監督は、「いつ試合が止まるかと、冷や冷やでした。変化球は得意ではないので」と、獨協・石井投手の好投を称えるとともに、エースの鈴木誠也には、「信頼しています」と語り、その信頼に応える鈴木の好投であった。

 ただ4番の猪俣 孝太郎が4三振を含めて、6打数無安打と不振。得点力を上げるには、4番の奮起がカギになる。都立東は、次は都大会出場をかけて、正則学園と聖パウロ学園の勝者と対戦する。「どちらも強いチームですが、自分たちのプレーをどこまでできるかです」と、角監督は語る。鈴木誠也投手としては、実力を試す格好の相手となりそうだ。

(取材・写真=大島 裕史)

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