武蔵、鮮やか逆転勝利!上野学園は寺戸の豪快2発も惜敗

先発・小宗(武蔵)

 球春到来も寒の戻りとなった3月13日、春季東京都大会一次予選第11ブロック1回戦2試合が日大二高立川グラウンドで行われた。第1試合は、武蔵の鮮やかな逆転勝利となった。試合後、上野学園の小川 貴智監督は振り返った。「力不足ですね。秋に守備で負けてしまったので、練習してきました。ただ、相手ピッチャーの小室君のレベルが高かった。このレベルの投手を打てないと勝てないと痛感しましたね」4対5というスコアではにわかに信じがたいが、小川監督の言う通り上野学園のヒットは3本だけだった。得点は寺戸 諒平の2ラン2本によるもの。しかも走者は四球で得たものだった。「1月まで個の力を伸ばし、2月から連係プレーなどチームとしての力を伸ばすことをやってきました。ある程度守備面では自分たちで考えて練習したプレーも出来ていたので、今度は攻撃ですね」

 一方の武蔵は、1対4という劣勢から6回に4得点を取り一気にひっくり返した。それまでヒットは出ていたものの、走塁ミスや牽制死などなかなかチャンスを生かせずにいた。それでも、焦りは無かったと樋口 尭彦監督は言う。「秋口から足を絡めた機動力の野球をずっと練習してきたんです。ちょっとしたというか…痛いミスもありましたけど(笑)でもやり続けていればチャンスは来るんじゃないかな、と」

 それが6回に一気につながった。先頭の菅沼が執念で三塁線を破ると石渡も続き、鈴木 開智主将はきっちり送りバント。そこから鈴木慶、小宗がいずれもタイムリー二塁打を放ち同点に。続く高橋がすかさず勝ち越しのタイムリーを打ち逆転に成功、と鮮やかだった。「序盤はどうなることかと思いましたが、なんとかつながってくれました。声が出たのも良かったです。みんな打ち出すと元気になりますからね」監督含め、選手も明るいチームは声が出始めるとやはり強かった。

4番・寺戸 諒平(上野学園)

 「どうなることかと思った」要因の一つとして、武蔵先発の小室は3回までに4失点ということがあった。いきなりボークを取られたり四球を連発したりする苦しい投球の中、寺戸諒平1人にやられたと言っても過言ではない。だが、「あれで余裕ができた」と振り返る4回の三者連続三振があり、以降は人が変わったようだった。そのきっかけは試合途中でのフォームの変更だったという。「投げ方が合わないのかな、としっくり来ていなかったのですが、みんなに投げ方変えてみたら?と言われて、やってみたらハマったんです。術中にはめた、というかはわかりませんが、ハマりましたね!」

 それ以降、変化球を投げ切る余裕も生まれ、3回に寺戸に2ランを打たれてからはヒット1本、無四球とほぼ完ぺきな内容。「試合中にフォームを変えてみたのもハマったのもこれが初めて。この経験は次以降にも生かしていきたい。まずは本大会に出ることを一番に。そして夏のシードも取っていきたいです」と次のブロック代表決定戦へと意欲を燃やした。そのブロック代表決定戦は、3月20日に同じく日大二高立川グラウンドで第2試合の勝者、都立農業・都立立川国際と戦うこととなった。

 一方、上野学園の攻撃で一人気を吐いた寺戸 諒平。これまではケガに苦しみ公式戦出場は無し。公式戦初出場にして4番の大役。そしていきなり2本塁打の大暴れだったが本人は「練習試合では打っていたので」と堂々としたもの。武蔵先発の小室が「ビックリした」と舌を巻いた2本目のセンター一番深いところへの本塁打にも「そのあと三振しちゃったので…」と満足はしていなかった。「今日はみんな調子が悪かった。いつもはもっと打つんです。僕自身も、次以降は全打席得点につなげるバッティングをしたいです。ランナーを還すのはもちろん、先頭打者でも塁に出るということを心がけたい」と、夏までにさらに攻撃力を磨くことを誓った。冬に磨いた守備力と、今回発揮しきれなかった攻撃力をあわせることが出来れば、鬼に金棒だ。上野学園の夏への挑戦が始まる。

(取材・写真=青木 有実子)

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