3月下旬のプロ野球開幕に向けて、各地のキャンプは大賑わいを見せています。なかでも話題を集めているのが、今年から日本にやってきた新助っ人外国人たちでしょう。特に、「元メジャーリーガー」の肩書きを持つ助っ人には、「どれほどの実力なのか?」とファンも大いに興味を引かれています。そこで今回は、彼らがメジャーリーガー時代にどんな選手だったのか、紹介したいと思います。

 まず取り上げたいのは、昨年は名門ニューヨーク・ヤンキースでプレーし、メジャー通算122本塁打という触れ込みで巨人に入団してきたギャレット・ジョーンズです。1999年のドラフト14巡目・全体444位でアトランタ・ブレーブスに指名されたギャレットは、長いマイナー生活を経て、2007年にミネソタ・ツインズでメジャーデビューを果たしました。

 転機となったのは、ピッツバーグ・パイレーツに移籍した2009年です。その年の6月、メジャーに再昇格したギャレットはホームランを量産し、新人のなかでもっとも多い21本塁打をマーク。2010年にはライトのポジションを掴み取り、のちにナ・リーグMVP(2013年)に輝くセンターのアンドリュー・マカッチェン、昨年までヤクルトに在籍していたレフトのラスティングス・ミレッジとともに、パイレーツの外野陣の一角を務めました。

 そして2012年には自己最多の27本塁打をマークし、2013年のオフにはマイアミ・マーリンズと2年総額775万ドル(約8億7000万円)で契約。そこが、彼のメジャーでの絶頂期でした。マーリンズでは満足な結果を残せず、2015年に移籍したヤンキースでも持ち前のパワーを発揮しきれませんでした。

 ヤンキースがギャレットの獲得に動いた理由は、左打席からライト方向に鋭い打球を飛ばすのが得意なプルヒッターだからです。低めの速球に強く、ローファストボールヒッターとしての評価を得ていたギャレットは、ライトが狭くてホームランの出やすいヤンキースタジアムにはぴったりの選手。そのバッティングにヤンキース首脳陣は期待していたのです。

 しかし一方で、ギャレットは三振が多く、2010年から5年連続で100個以上の三振を喫していました。また、左ピッチャーにも弱く、昨年はレフティ相手にわずか打率.130。速球に強い反面、チェンジアップなどの緩い変化球に対応仕切れていないことが多かったので、巨人ではどこまで改善しているのか注目したいと思っています。

 次に紹介したいのは、中日期待のキューバ人長距離砲として来日してきたダヤン・ビシエドです。2008年にキューバから亡命したビシエドは、その年のオフにシカゴ・ホワイトソックスと4年総額1000万ドル(約11億2600万円)で契約し、アメリカで大きな話題となりました。当時はチームの主砲であるポール・コネルコの後継者と期待されていたのです。

 実際、ビシエドはホワイトソックスで5年間プレーし、通算66本塁打をマーク。2012年には自己最多の25本塁打をマークし、レフトのレギュラーとしてチームの主軸に成長しました。身長185センチ・体重108キロという巨漢タイプのビシエドは、その見た目からホワイトソックスの有名な球団専属アナウンサー、ケン・ハレルソンに「ザ・タンク」というニックネームで呼ばれ、一躍人気者となったのです。

 ビシエドの最大の持ち味は、メジャー屈指と言われるバットのスイングスピードで、左右どちらのスタンドにもボールを放り込めるパワーを持っています。しかし、どんなボール球にも手を出してしまいがちで、早打ちが最大の欠点と言えるでしょう。その悪球打ちは、メジャー史上最高の「バッドボールヒッター」と言われているブラディミール・ゲレーロ(2004年ア・リーグMVP)と比較されるほどでした。

 その結果、2012年は25本塁打を放ちながら、505打数でフォアボールはわずか28個。チームの主力だった3年間は毎年100個前後の三振を喫しており、2014年も21本塁打を記録したにもかかわらず、その年のオフにはクビになりました。

 クビになった主な理由は、「チームの勝利に貢献していない」という明確なデータがあったからです。ホワイトソックス5年間での通算出塁率は.298と3割を切っており、「WAR(※)」というセイバーメトリクスによる総合評価指数では、チームの勝利貢献度はマイナス0.9。つまり、勝利にまったく貢献していない、という分析でした。

※WAR=各ポジションの平均選手と比べ、その選手がどのくらいチームの勝利数を上積みしたかという指標。平均的な選手は「WAR=2.0』。

 また、ビシエドは外野の守備もお粗末で、守備に関するWARはマイナス2.4。2014年はメジャーの全レギュラー選手のなかで「ワーストプレーヤー」と評されました。ビシエドが昨年メジャーでプレーできなかったのは、日本の一部メディアでは「素行の悪さ」と報じられていましたが、セイバーメトリクスによるデータの影響もあったと思います。

 ただ、ビシエドのパワーは飛び抜けたものを持っています。今年のセ・リーグの本塁打王争いは、本命と言われるヤクルトのバレンティンを筆頭に、巨人のギャレットと中日のビシエドが対抗馬として名乗りを挙げてくるのではないでしょうか。

 そしてセ・リーグでもうひとり、注目したい新助っ人が阪神に入団したマット・ヘイグです。2008年のドラフト9巡目・全体264位でパイレーツから指名を受けたヘイグは、4年後の2012年にようやくメジャーデビューを果たしました。デビューした当初、パイレーツのサードにはのちに楽天でプレーしたケーシー・マギーが4番を務めており、右打ちのヘイグは左打ちの巨人・ギャレットと併用で起用されていたのです。

 しかしながら、ヘイグはメジャーに定着できず、プロ生活の多くをマイナーで過ごすことになります。ただ、マイナーでは非常に優秀な成績を残しました。2011年と2013年にはマイナーリーグで最多安打をマークし、昨年トロント・ブルージェイズに移籍して傘下のバッファローでも打率.338・11本塁打・92打点を記録。打率(.338)、出塁率(.416)、安打数(177本)、OPS(.885)でリーグ1位となり、トリプルAのインターナショナルリーグで文句なしのMVPに輝きました。

 ヘイグは打球を広角に打ち分けることのできるラインドライブヒッターで、二塁打が多いのが特徴です。昨年のトリプルAでも33本の二塁打をマークしており、球場の狭い日本ならホームランになる可能性も高いと思います。また、選球眼がよく三振も少ないので、昨年まで阪神に在籍していたマット・マートンの後釜として最適の新助っ人ではないでしょうか。

 一方、パ・リーグで注目している新たな元メジャーリーガーは、オリックスに入団したブレント・モレルです。日本ではあまり話題になっていませんが、今年日本にやってきた新助っ人のなかでも、モレルは特に才能豊かな選手だと思います。

 2008年のドラフト3巡目・全体86位でホワイトソックスに入団したモレルは、2010年にマイナーで打率.322をマークし、その年の9月にメジャーデビューしました。そしてシーズン後、アリゾナ・フォール(秋季)リーグに参加すると、打率.435という好成績を残して首位打者を獲得。2011年にはチームのプロスペクト(若手有望株)・ランキングで2位に選ばれたのです。ちなみにそのときの1位は、現在メジャーを代表するエースのクリス・セール。3位は前述の中日・ビシエドでした。

 モレルはビシエドとのポジション争いにも勝ち、2011年にはレギュラー三塁手に抜擢されます。しかし、結果は126試合の出場で打率.245・10本塁打・41打点と、周囲の期待を裏切る形となりました。その後も背中の故障で成績は振るわず、2014年にパイレーツに移籍してからもパッとしませんでした。そして今年、再起を図って日本にやってきたという流れです。

 ただ、モレルのメジャーでの評価は悪くなく、ホワイトソックス時代は「マイナーでナンバー1のアベレージヒッター」と言われていました。ボールの読みに長けており、将来を嘱望される逸材だったのです。また、かつては「最高の強肩内野手」と評されるほど、モレルのフィールディングは機敏です。「内野ならどこでもできる」と本人も語るように、本職のサード以外でも起用できるかもしれません。

 モレルは現在28歳。日本で大バケする可能性も高いと思います。あまり目立った報道はされていませんが、オリックスでの彼のプレーにぜひ注目しておいてください。

 そして最後、2月22日に楽天との契約合意が発表されたジョニー・ゴームズについても軽く触れておきます。彼は2001年、ドラフト18巡目・全体529位でタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)から指名を受けた右のスラッガーです。プロ入り当初は結果を残せませんでしたが、メジャーに再昇格した2005年から本塁打を放つようになりました。

 注目を集めたのは2013年、ボストン・レッドソックスに移籍した初年度です。チームの地区優勝に貢献し、ワールドシリーズ第4戦では逆転スリーランを放って勝利の立役者となりました。上原浩治投手や田澤純一投手とチームメイトだったので、覚えている方も多いのではないでしょうか。

 楽天に入団が決まった際にゴームズは、「勝利を目指して、持っているエネルギーのすべてを毎日注ぎ込むつもり」とコメントしています。この言葉どおり、まさしく"アツいプレーヤー"なのです。全力でプレーするのが彼のモットーで、2013年にレッドソックスが世界一に輝いたときは、チームで一番のムードメイカーと言われていました。

 印象に残っているのは、世界一になったレッドソックスがホワイトハウスを訪問したシーンです。ゴームズは星条旗カラーのジャケットを着て参加し、周囲を大いに盛り上げていました。チームの雰囲気を一変できる選手なので、楽天でも人気者になるのではないでしょうか。

 ちなみに今回、紹介した新助っ人はすべてバッターでした。なぜピッチャーを挙げていないのかというと、元メジャーリーガーとしての実績を評価しづらいからです。昨年はマイアミ・マーリンズに在籍し、今年オリックスに入団したエリック・コーディエが「166キロを投げられる」とコメントして話題となりましたが、球の速さだけでは実力を測りきれないのが実情です。事実、アメリカでは「日本のほうがピッチャーのレベルは高い」という見方もありますので。昔と違って、元メジャーリーガーといってもどこまで日本で活躍できるかは読めないのです。

 見知らぬ土地でのキャンプを経た新助っ人たちが、いよいよオープン戦に登場してきます。メジャーの舞台を経験している彼らが、どこまで日本の野球に馴染むことができるのか――。彼らの新天地でのプレーに今から心が踊ります。

福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu