ドミノ・ピザが冬場のピザ配達にトナカイを起用すると発表しましたが、はたして本気なのでしょうか。計画責任者に話を聞いたところ、その背景には、やむにやまれぬ冬場の配達事情がありました。

厳しい寒さの予測受け、配達員にトナカイ起用

 ピザのデリバリーチェーンを展開するドミノ・ピザ ジャパン(東京都千代田区)が2016年11月17日(木)、ピザ配達にトナカイを起用すると発表しました。北海道石狩市に、トナカイによるデリバリーのトレーニングを行う「デリバリー総合研究センター」を設営、すでに飼育員の指導のもと訓練を行い、最終調整中であることもあわせて発表しています。

 同社によると、これは気象庁が2016年9月、10月に引き続き11月10日(木)に発表した、今冬はラニーニャ現象が発生するという予測を受けてのもの。これにより、厳しい寒さになることや、ふだん降雪のない地域でもその可能性があることを踏まえ、社内に「降雪デリバリー対策室」を開設。検討の結果、今回のトナカイ起用に至ったといいます。


トナカイにドミノ・ピザのデリバリーボックスを装備させた想像図。ちなみにトナカイは「特に鼻が赤いということはありません」(大槻室長)とのこと(画像出典:ドミノ・ピザ)。

 念のためドミノ・ピザの広報担当に確認しましたが、「本気です」とのこと。さらに念のため、このプロジェクトの責任者である降雪デリバリー対策室の大槻室長に話を聞いたところ「全社を挙げ、いたってまじめに取り組んでおります」といいます。

「今回のプロジェクトは、冬場の厳しい配達環境を改善するためのものです。トナカイにはデリバリー用バイクと同じGPS装置をつけておりますので、自分のピザとトナカイの状況が地図上に表示され、お客さまにもひと目でわかります」(降雪デリバリー対策室、大槻室長)

 どう考えても本気とは思えない今回の発表ですが、その背景に、天候に左右される配達の問題があることだけは本当のようです。トナカイはさておき、これまで冬場、特に降雪時などは、どのように配達していたのでしょうか。

大雪で交通麻痺 そのとき、ピザのデリバリーは

 そもそもドミノ・ピザは1985(昭和60)年9月、日本初のデリバリーピザチェーンとして、日本国内での営業を始めました。当初から配達に使用している3輪バイクは、日本の交通事情を考慮してメーカーと共同開発したもので、その初号機「ジャイロ1号」からほぼ大きな変化なく現在に至るそうです。

「もともと屋根のあるバイクはありませんでしたが、その『屋根とピザを収納するボックス』という、この手のバイクの仕様は、当社とバイクメーカーとで作ったものです。3輪から始まり、現在は2輪も稼働しています。どの店舗も、基本的にはバイクでデリバリーしています」(降雪デリバリー対策室、大槻室長)

 そして、「配達圏内であれば、基本的にはどこへでもお届けします」とのことで、たとえば公園での花見の席は「ウチとしては大得意」といい、「花火会場の混雑のなかもお届けしたことがございます」といいます。


「デリバリー総合研究センター」での訓練。飼育員の許可と指導のもと、トナカイにソリを引かせているが、あくまで実験、訓練中で、街中で引かせるかは未定とのこと(写真出典:ドミノ・ピザ)。

 そんなドミノ・ピザも、やはり降雪時は大変とのことで、寒冷地では配達にクルマも使うそうですが、都内などは冬場もバイク。ゆえに、たとえば2014年2月に首都圏一帯が記録的な大雪に見舞われた際は、「通常は30分以内でお届けできるところが、徒歩で1時間以上かかったことも」あったとか。あまりに荒天の場合は、「事故を起こすことがやはり我々にとってもお客さまにとっても一番よろしくないので、現実的な判断をさせていただくことも」あるといいます。

 しかし、「バイクが稼働しないからといってお断りするのではなく、違う手段を考えよう」ということで、今回のトナカイ起用なのだとか。「トナカイなら、大雪でもかなりのスピードで動けるので、徒歩よりも確実に早くお届けできます。GPSでのトラッキングも、すでにあるシステムを利用できましたので、ここまではスムーズに計画が進んでいます」と大槻室長はいいます。

「トナカイ配達」を実現するシステムとは…?

「すでにあるシステム」というのは、ドミノ・ピザが提供しているWebサービス「GPS DRIVER TRACKER(GPSドライバートラッカー)」のことで、自分の注文したピザがどのあたりまで来ているのか、地図上でわかるというものです。

「これまでは、お客さまがご注文されてから何分後にピザが届くかというのは、わからないものでした。なので、ちょっと外した隙に受け取れなかったり、あるいは何分も何もできないまま待つ、といったことになっていたと思うのです。これを改善したい、『お客さまに待ち時間をお返ししたい』ということで始めたものです」(降雪デリバリー対策室、大槻室長)

 この「GPS DRIVER TRACKER」のシステムが、今回のプロジェクトの基礎にあるそうです。「トナカイがピザをお届けする様子もちゃんとわかります。たとえ雪が降っていても、お客さまも安心してお待ちいただけます」と、大槻室長は自信を覗かせています。

「それに、クリスマスの時期にトナカイが自社商品をデリバリーするというのは、やはり我々の夢のひとつでしたから」(降雪デリバリー対策室、大槻室長)


トナカイによるピザデリバリーの想像図。計画がうまく進めば、こんな光景も冬場の日常になるのかもしれない(画像出典:ドミノ・ピザ)。

 ドミノ・ピザ、および大槻室長の思惑どおりに事が運べば、この冬は、例年とは少し違った街中の風景が見られることでしょう。

【画像】「トナカイデリバリー」企画書


降雪デリバリー対策室による、トナカイ起用を提案する企画書。クルマやスノーモービルも検討したうえでの、あえてのトナカイ起用だという(画像出典:ドミノ・ピザ)。