【レポート】モバイルアプリ開発における成功のポイントとは
スマートフォンの普及とともにアプリ開発の需要も高まっている。無数にリリースされるアプリの中には、確実に成果をあげているものもあれば、まったく成果を生み出すこともなく、人知れず消えてしまうものもある。これらの違いはどこから生まれるのか？ 本稿では、モバイルアプリ開発に向けたソリューションを提供するKii株式会社 技術統括の石塚 進氏より、過去の事例に基づいた「成功するためのアプリ開発」について解説いただいた。
○拡大し続けるスマートフォン向けアプリ市場
2014年3月に行われた内閣府の調査によると、国内におけるスマートデバイスの世帯普及率はスマートフォンが54.7％、タブレット型端末が20.9％となっている。また、2014年6月3〜6日、米サンフランシスコで開催されたAppleのWWDC（Worldwide Developer’s Conference）では、App Storeの登録アプリケーション数は120万、ダウンロード総数は750億、開発者の登録者数は昨年比で47%増の900万に達したとの発表があった。
一方、Androidにおいては2013年7月の段階でアプリケーション数は100万、ダウンロード総数は500億と発表されており、2014年の段階ではさらに増えていることが予想される。このように、スマートフォン向けアプリケーションの市場は、ここ数年で爆発的に広がった。そして今後も、これ以上のペースで拡大し続けていくことだろう。
だが、市場が広がると同時に競争も激化しており、せっかく苦労してアプリケーションを制作しても、なかなか思うようにユーザーを獲得できない事例も数多く存在する。成功、失敗を問わずさまざまなモバイルアプリの開発事例を分析すると「これからのモバイルアプリ開発には、バックエンドの共有による効率化が不可欠になります」と石塚氏は語る。
○バックエンドを共有してアプリの開発と運営の効率化
モバイルアプリの世界では、リリースして終わりとはならない。OSのバージョンアップ対応や不具合の修正、さらにはより使いやすいUIの改良など常に開発は続いていく。となると、アプリをリリースするごとに、開発と運営の手間は増えて行くことになる。それが多くのユーザー数を獲得した「成功したアプリ」であるのなら、手間やコストが増えても対応はできるかもしれない。だが、わずかしかユーザー数を獲得できなかった「失敗アプリ」であっても、利用しているユーザーがいるのであれば簡単にサポート終了とはできない。
モバイルアプリの世界ではユーザー評価が大きな影響力を持つ。使っていたアプリが突然サポート終了となれば、ユーザーはその開発会社に対して不信感を持つだろう。それが他のアプリの評価にまで影響を及ぼすことも、十分に考えられる。
「このような現状から考えると、今後のモバイルアプリ市場に対応していくためには、すべてのアプリについてバックエンド環境を共有し、開発と運営に掛かる手間とコストを効率化することが必要になってくるでしょう」（石塚氏）
○バックエンドを共有化するための各種手段
現在のモバイルアプリには、ログイン認証やユーザー同士のコミュニケーション機能など、サーバーを必要とするサービスが数多くある。つまり、このサーバー機能を共有化できれば、開発においても運営においても、かなりの効率化が図れることになる。
もちろん、自社でサーバーを構築し運用するという手段もある。特にユーザー数が億を超えるような規模では、コストやセキュリティの面から自社内でサーバーを運用した方が良いケースもある。だが、そこまでのユーザー数を獲得しているアプリは、それほど多くはない。一般的なレベルであれば、バックエンドの共有化には外部サービスを利用する方が効率が良いと思われる。
近年では、クラウドベースのサービスも増えてきている。以下に、その例をいくつか紹介しよう。
・IaaS(Infrastructure as a Service)サーバーのインフラ部分をインターネットを介して利用できるサービス。OSやミドルウェア、開発用のSDKなどは自ら用意して運用する。ハードウェア以外は自由に選択できる一方で、スケールアップ・ダウンを行う場合には手間が掛かる。
・PaaS(Platform as a Service)サーバーのインフラとOS・ミドルウェア一式をインターネットを介して利用できるサービス。開発用のSDKは自ら用意して運用する。OSが限定されるためカスタマイズ性は若干下がるが、スケールアップ・ダウンは比較的容易に行うことができる。
・MBaaS(Mobile Backend as a Service)サーバーのインフラからOS、更にはSDKまで含めて、特にモバイル端末向けのWebアプリ開発に必要な機能一式を、インターネットを介して利用できるサービス。BaaSとも呼ばれ、モバイルに特化したサービスとして近年急速に広がりつつある。
これらのサービスの中で、2013年中盤あたりから急速に広がりを見せているものが、モバイルに特化したMBaaSである。では、具体的にMBaaSではどんなことができるのか。次回はその点について紹介する予定だ。
(三馬力)
