綾小路きみまろの駄洒落&ジョーク入門【1】

写真拡大

朗報! あの(中高年に)人気絶大のアイドルが笑いの秘策を伝授する。これであなたも職場のアイドル間違いなし。さあ、講義スタートです。

ようこそページを開いてくださいました。これを読んでいる皆様はお元気でしょうか。

元気だから読んでくださっているのです。なんとお礼を申し上げてよいか、お礼の言葉もございません。ありませんから、言いませんが。

私、綾小路きみまろと申します。名前は綾小路。顔は道路工事。体は袋小路。このたび、「プレジデント」誌で「ものの言い方」について特集をやるからぜひ登場してくれとの依頼を受けまして、ここで語らせていただきます。しかし、本当に私でいいのでしょうか。福山雅治さんと間違えていないでしょうか。

編集者は私に言いました。「ビジネスマンを笑わせる駄洒落やジョークを教えてください」。

私は仰天いたしました。正気でしょうか。皆さん、そんなことを考えるのは今すぐやめたほうがいい。

なぜかといえば、何かと「笑っちゃダメですよ」と、そういう教育を受けて日本の男性は育っているんです。だからビジネスマンが集まる企業の式典や慰安会では何をやってもウケません。私は現在、その手のオファーがきたときは、どんな大金を積まれても、「苦手です」「無理です」「きみまろは留守にしています」とはっきりお断りしております。

しかし、あなたがビジネスマンを笑わせる見込みがないわけではありません。

私が考える漫談家の条件は3つあります。ひとつ、親が放任主義であること。ふたつ、身長が低いこと。みっつ、ハンサムでないこと。その点、これを読んでいらっしゃるほとんどの方は合格です。謹んでお慶びを申し上げます。

さて、ここまで読んで「なるほど。こういう毒舌を使えばいいのか」と思った方、それは大きな勘違いです。

昔、西川口のキャバレーで「お金もないのにようこそ」と言ったら、白菜の漬物を投げられました。一方的な毒舌はケンカの火種。そうならないためには、最初に自分をいじめること。自虐を言えばいいのです。

「私、道に迷ったタヌキみたいな顔をしておりますが」「どうせ、私、カツラですから」

など、1回自分を落として相手を安心させた後、好きなことを言う。

さきほど申し上げた「福山雅治さんと間違えていませんか?」。この一言によって、「あんた、自分の顔知ってんの?」と許されるのです。

ガーンと言う前に、絶対にどこかで中和させる部分をつくって、相手を救ってあげましょう。

「こんな私が喋ってごめんなさい。でも今日は言わせてね」という気持ちで挑めば、相手に必ず伝わります。やがては「もっとちょっかい出して」「もっといじめて」という本能がくすぐられるはずです。あくまでも人によってです。

出世して立派な役職に立つほど、人前で喋らなくてはいけない機会が増えていきます。そのとき、どんな話題を選べばよいのでしょうか。

私の芸の基本は、笑わせながら「ああ、そうだな」と思ってもらうことです。聞き手を手っ取り早く共感させるには、世相がいい。

安倍首相は7年前、あんべえ(按配)が悪いとお辞めになった。一体どこが悪かったのか。よく調べたら、シンゾウが悪かった。

だけど政治は人によって支持政党もあって扱いにくい。ならば今、共通の話題になるのは不景気です。昔ベンツに乗っていた方がベンチに座っていました。昔ロールスロイスに乗っていた方が火の車に乗っていました。10年前、「10年後を見てろ」と言っていた方に10年ぶりに会って、「2000円貸して」と言われました。

「なるほど。この話をそのまま使えばいいのか!」

そう膝を打ったのは、さっき勘違いしたあなたではありませんか。説明書をよく読まないで、奥様に怒られていませんか。

ただの作り話は、笑いが薄いんです。ウソの話を作って本当のように聞かせるのは、結構な腕が必要。一般の人がマネするのは容易ではありません。だから真実を、自分の体験談を語ればいい。

しかし体験談はついつい自分が気持ちよくなる話をしてしまいがちです。

株で何億円儲かったとか、絶世の美女とつきあったとか、そんな話は誰も聞きたくありません。みんなが聞きたいのは、株で何億円も損した話であり、家に帰れば女房が待っているといった失敗談なのです。

さっきのキャバレー話も、私が失敗した話だから、聞いている方は楽しめるんです。

そうやっていい気分になってもらって、最後に「いろいろあったけど、頑張って生きてきてよかった」「こうやって元気でいられることが幸せです」と自分をちょこっと褒めてあげる。あまり卑下しすぎても、相手に気を使わせてしまいます。何事もバランスが大事です。

無駄が多い話や長ったらしい説明は嫌われます。私が心がけているのは、言いたいことを短くまとめることです。4コママンガのスピード、川柳のような簡潔さで伝えられたら言うことなし。話は極限まで削り、オチに至るまで最短距離で向かうほど相手に響きます。

私が新しいネタをやるときも、最初は不必要な言葉がいっぱいあるわけです。なので、まずは喋ろうとしている内容を文章に書きおこします。そして、いらない言葉を省いていく。さらに録音した公演を聞き直し、無駄に感じた言葉はまた削ります。

たとえば「するんですね」の語尾についている「ね」は、必要なのか。余分だと思ったらカットする。こうやってそぎ落としていって、主語と述語だけが残ればいいぐらいのイメージを持つ。最後には主語も述語も省いて、黙っているだけで笑いが起きるのが私の理想です。

無駄を削ぎ落としていけばいくほど、話はどんどん短くなってきます。そこで普段から、使えるネタをいっぱい集めておかないといけません。

週刊誌や新聞、本を読んで、ちょっと面白い小噺や川柳があったら、切り抜いてノートに貼りつけましょう。テレビはあまり参考にしない。テレビは映像を次から次へと流していくものだから、観たものはすぐに忘れてしまいます。

「安定剤、会社で1錠、女房の顔見て3錠」「会社よりも女房に出したい退職届」

----------

綾小路きみまろ
職業:漫談家/誕生日:1950年12月9日/星座:いて座/血液型:O型/身長:165cm
/体重:70kg/最終学歴:自動車学校/好きな言葉:ありがとう/好きな花:野に咲く花
/特殊技能:あんまマッサージ師

----------

(鈴木 工=構成 本野克佳=撮影)