ずっと思いを寄せていた女性がいる。でも、その女性が自分を好きかどうかは、分からない。男性は、勇気を出して、女性に「好きです」と伝えた。ところが、女性からは「ほかに好きな人がいる」と言う答えが返ってきた……。さあ、あなたならどうする?


「交際断られ嫉妬から殺意か 倉敷ストーカー事件容疑者」と言う山陽新聞の記事(2013年5月20日付)に、宮崎大地容疑者の声が紹介されている。まず、事件の概要を見ておこう。5月17日に宮崎容疑者が帰宅前の女性宅に侵入した上で、就寝前の女性の胸をナイフで刺した。


女性は、以前から警察にストーカー被害の相談をしており、事件当日も容疑者の車を自宅付近で目撃した女性が警察に通報し、警察は女性宅の周囲を警戒していた。にもかかわらず、女性が被害に遭ったということで、警察の不手際が指摘された事件でもある。


警察は、交際の申し出を断るよう女性に指導している。その指導に基づいて、女性は事件の10日前、男性に「ほかに好きな人がいる。二度と連絡を取り合わないようにしよう」と電話で話した。「宮崎容疑者は『分かりました』と、いったん承諾した」が、結局は犯行に及んだのであった。


記事によれば、男性が女性を刺したのは、「好きな人がいると言われてカッとなり、殺そうと思った」からだと言う。まあ、「カッとなる」のは分かる。しかし、そこから先が問題だ。女性本人や女性の「好きな人」を恨んだりすることもあろう。ショックを受けて、心に穴が空いたような気分になるかもしれない。


それでも、最終的にはあきらめるしかない。なぜか。それは、他人の心はコントロールできないからだ。他人と接したり、小説を読んだり、映画を観たりするなど、日常生活を送る中で、自分の力ではどうにもならないことがあることを、私たちは学ぶ。それが諦念というものである。


宮崎容疑者は、「要求が拒絶されたことへの逆恨みや嫉妬心から殺意を募らせた」と言っているらしいが、これは恋愛にはよくある話だ。問題は、宮崎容疑者に諦念を抱かず、感情のまま犯行に及んでしまったことだと思う。要は、自分の思うようにならないから、ヤケになって人を刺したのである。思慮のない幼稚な行為と言われても仕方がなかろう。


(谷川 茂)