ようやく、俺たち国際野球ファンにとっては、まさに待ち望んでいた瞬間がやってきた。日本プロ野球選手会は、今日行われた会見の場で、先に掲げていたWBC2013への不参加決議を撤回し、同大会に日本代表として参加すると正式に発表したんだ。

 今回、不参加決議撤回と引き換えに日本側が得たのは、WBCの名称や大会ロゴを使用しないことを条件に、日本代表への個別スポンサー権を認めるという権利。その利益は、4年間で最大40億円に上るとのことで、近年赤字が続いているNPBにとっては、この収益は何物にも代えがたいものかもしれない。一方で、多少強引なやり方ではあるにせよ、WBCという大会そのものの諸権利を傷つけることなく、日本側から参加との回答を引き出したMLBも、ある意味賢かったと言えるとも思う。

 しかしながら、今回の一件は日本球界に、ある側面においては悪いものももたらしたとも言えるんじゃないだろうか。それは諸外国にとっての「日本はWBCを開くたびに必ず揉める」というイメージだ。考えてみれば、日本代表は2006年の第1回大会開催時から、何かと大会参加にあたってゴタゴタを引き起こしてきた。客観的に見れば、究極的には大会主催者とゲストとの金の争いでしかなかった、今回のこの一連の参加問題は、その最たるものといえるかもしれない。

 もちろん日本側からしてみれば、今回のスポンサー権の帰属問題は(それが実際問題として的を射たものであるかどうかはともかく)、絶対に解決しなければならない問題だったはずだし、その件で何とか妥協点を見いだせたことが、結果的に第3回への出場につながったことも確かだろう。そして、まだ生まれて間もないこの大会を、何とかよくしていきたいという思いは、ベースとして絶対に必要不可欠だと思うし、そのために主張していくことももちろん大事だ。ただ問題は、その主張をするに足るだけの行動力を、実際に発揮してきたかどうか。そして、現状物事がどういうあり方をしているのかを、きちんと捉えられているかどうかだ。それもなしにただ文句を言ったところで、他の参加国から白い目で見られるだけなのは至極当然だろう。

 例えば、WBCが実質的にMLBの主催であることに対して、主張することだってそうだ。日本のファンの多くは、「こうした世界一決定戦はMLBが開くのではなく、サッカーでいうFIFAのような中立の組織を作ってそこに開かせるべきだ」と異口同音に叫んでいたけれど、このブログの常連さんならご存知の通り、その中立的な国際組織(IBAF)も国際大会(IBAFワールドカップ)も、彼らが主張するまでもなく既に存在していた。むしろ、事実上トップ選手が出場しないワールドカップのままでは、国際大会の在り方として限界がある、という状況だってあったわけだ。批判するのは結構だけど、そういったプロセスがあることも知らないのでは、いくら叫んだところで単なる的外れな感情論にしかならない。

 的外れという意味では、アメリカ代表のロースターに対する批判も、あまりにもピントが外れたものが多かった。確かに、ロイ・ハラディ(フィリーズ)もC.C.サバシア(ヤンキース)も、プリンス・フィルダー(タイガース)もジョシュ・ハミルトン(レンジャース)もいなかった過去2大会のアメリカ代表は、その文脈で言えば「二軍」と言えなくもないかもしれない。しかし、そのフレーズだけが独り歩きしてしまったのか、どうも「WBCアメリカ代表はマイナーリーガーの集団である」という、誤った風潮が形成されてしまったのは、あまりにも解せなかった。実際にアメリカ代表のロースター入りを果たした面々が、一体どんな顔ぶれなのかをちょっと調べさえすれば、こんな意見はすぐ的外れだと気付けたはずだ。