インタビュー:阿部芙蓉美「いつまで経ってもずっと終わらないし、何なのか分からない」
――今年6月に全国公開された松田翔太主演による映画「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」ではエンディングテーマとして岡林信康さんの「私たちの望むものは」をカバーされていましたが、どのような経緯で?
阿部芙蓉美(以降、阿部):監督が映画のエンディングに「私たちの望むものは」という楽曲を使いたいということで、その曲をカバーする女性シンガーを探していて。YouTubeで私を見付け出してくれたという。YouTubeっていうのが凄いですよね、今ドキな感じが(笑)。でも、YouTubeが無かったら見付けてもらえなかったという。――現代の歌詞と比較して、当時の社会背景が伝わってくるような内容ですが、歌われた印象としては如何ですか?
阿部:強烈ですよね。この曲はもうこの曲でしかなくて、変に意気込むことも別に、望まれてもいないし。ただ、これを他の誰でもなくて「阿部芙蓉美さんに歌って欲しい」と言ってもらえたことが、もうすごくありがたくて、本当に一生懸命歌ったんです。特に何かを意図したとか、普段とは違ってこういうことを思い浮かべてとかでもなく。「私たちの望むものは」という曲そのものを私なりに受け止めて、向き合って歌わせてもらいました。――今までにも70年代の邦楽をカバーする機会はありましたか?
阿部:前作のミニアルバムの中で、井上陽水さんの曲と、石川セリさんの曲を歌わせてもらってるんですけど、セリさんのは70年代かな? すごく中身も濃いし、歌い手さんも濃いし、刺激が沢山ありますね。――リアルタイムな世代では無いと思いますが、その時代の曲を聴く機会はありましたか?
阿部:テレビ番組で流れてきたり。周りの人達は「昔の曲はすごく勉強になるよ」ってずっと薦められてきて。だからといって、もの凄く一生懸命聴いたか?と言われると、そうでもなかったりするけど。でも、すごく興味があるし、今の時代には無いものですよね。――映画をご覧になった感想は?
阿部:色んな見方がありますね。主人公達がお兄さんに会いに、働いている所を飛び出して、北に向かって行くんですよ。私は北海道の最北端で生まれ育っているので、見覚えのあるような景色も出てくるんですけど、主人公達が北へ向かって行く気持ちって、ちょっと不思議な感じだなと。「その先に何があるのか?」みたいに掲げてるけど、私はそれ以上北に行けない所の人間だから、「“北に行く”ってどんな感じなのかな?」と思ってすごく興味深かったですね。――主人公達のように、今までの人生を振り返って、自分の殻を破るような、壁をこわすような出来事はありましたか?
阿部:もの凄く大きな壁を思い切りブチ壊す、みたいに刺激的な人生ではなかったかもしれないけど、やっぱり常に壁はあって。たまにはどこか隙間からすり抜けるようなやり方で。“ブチ壊す”みたいなパッションな感じはどうかなぁ? どこかやりくりして乗り越えたりはあったかもしれないです。