「四畳半で何が悪い」〈年収1,200万円〉48歳独身男性、大都会・東京に残る〈家賃3万円台〉の激安アパート、奇跡のような暮らし
高収入だからと、華やかな生活を送るのが正解とは限りません。現代では、あえて固定費を極限まで抑え、独自の価値観で豊かさを定義するケースも。ある男性の驚きのライフスタイルから、本当の「経済的自立」や人生の優先順位について考えます。
住むところなんて「家賃3万8,000円のアパート」で十分
東京都杉並区の住宅街にある築56年の木造アパート。風呂なし、共同トイレ、四畳半一間。家賃は月3万8,000円です。ここで18年間暮らしているのが、ITコンサルティング会社に勤める工藤 大輔さん(48歳・仮名)です。年収は約1,200万円。毎月の手取りはおよそ74万円あります。
「会社の人には住所を言わないですね。『えっ、そこに住んでるの?』という顔をされるので」
玄関を開けると、部屋には折り畳み式の机とノートパソコン、本棚、小型冷蔵庫だけ。収納ケースは3つ。テレビはありません。
「帰って寝るだけですから」
周辺ではワンルームでも家賃10万円前後が珍しくありません。それでも工藤さんは引っ越す気がありません。理由は単純です。
「毎月、住居費で6万円、7万円多く払う意味が見えないんです」
固定費を抑えた結果、毎月の支出は約18万円。残る約56万円は、NISAやiDeCo、投資信託、現金預金へ回しています。金融資産は約1億1,000万円。住宅ローンはありません。それでも本人は、自身を「金持ち」とは考えていません。
「会社員なんて、会社が傾けば終わりです。年収なんて信用していません」
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)』によると、40代単身世帯の金融資産保有額(金融資産保有世帯)は平均1,281万円、中央値は400万円です。工藤さんの1億1,000万円という資産額は、同世代の一般的な水準を圧倒的に引き離しています。
また、同調査で「年収1,200万円以上」の層を見ても、金融資産の平均は6,504万円、中央値は2,210万円にとどまります。高収入にあぐらをかかず、「会社が傾けば終わり」と将来への危機感から極限まで固定費を抑え、蓄財と投資に邁進する姿は、先行きの見えない現代における究極の自衛策といえるかもしれません。
元交際相手「その家で結婚は無理」
結婚を考えたことがないわけではありません。
「30代のころ、結婚を考えた相手がいました」
今と変わらず、家賃3万8,000円のアパートに住んでいました。収入は今よりも少ないですが、それでも同年代と比べると、高水準という自負がありました。当初、家賃を抑えていることに対して、好意的だったと思います。
「浪費癖がある人より、結婚向きと思ったのではないでしょうか」
しかし、結婚話が徐々に具体化していくなか、女性には「このようなところ(家賃3.8万円、風呂なしのアパート)で結婚生活ということになるのではないか――」という不安が大きくなります。
「ごめん。このような家には住めない」
「年収がそんなにあるのに、どうしてこんな生活を続けるの? なんだか怖い」
結局、その彼女との結婚話は立ち消えとなり今日に至ります。
「価値観が違ったのでしょう。仕方がありません」
周囲からは「マンションを買えば?」「その収入ならタワマンでしょう」などと勧められることも多いといいます。しかし「家は住む場所。今は仕事に忙しく、家を空けている時間のほうが長いのに、家にお金をかける意味がわからない」と、聞く耳を持ちません。
現在の資産形成は順調です。
・現金:4,200万円
・投資信託:4,800万円
・株式:1,300万円
・退職金見込み:約2,000万円
65歳時点では金融資産1億7,000万円程度を見込んでいます。数字だけ見れば、老後資金への不安は小さいように映ります。しかし、別の悩みがあります。
80代の母親は地方で一人暮らしを続けています。実家は築45年。今後は介護や相続も避けられません。一方、関西で暮らす兄とは、10年以上、話らしい話はしていないといいます。親の今後のことを考えたら、介護のこと、墓のこと、実家のこと――色々と話しておくべきですが、兄は兄で大変でそれどころではないようです。
「子どもが3人いて、やはり大変らしいですよ。3人とも大学生なので」
最近は、資産運用は後回し。実家へ帰る回数を増やしています。
「何か起きてから対応していては面倒なので。今のうちにできることはしておこうと思っています」
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、単身男性の12.6%に「介護の必要な親」がいます。また同研究所『第9回世帯動態調査』によると、介助・介護が必要な高齢女性の25.3%が「単独世帯」で暮らしており、さらに単独世帯の要介護高齢者のうち、最も近くに住む子どもが「他の都道府県」にいるケースは14.4%に上ります。
工藤さんのように、自身の経済的な自立や資産形成を順調に進めていても、遠方に住む高齢の親のサポートや実家の問題に直面し、遠距離からの対応を迫られるケースは、高齢化と単身世帯の増加が進む現代日本において、決して珍しくない実態を反映しているといえるでしょう。

