スバル最新EV『ソルテラ』と『トレイルシーカー』の話(前編)かなりの規模となるワールドワイド展開【日本版編集長コラム#89】
名古屋で乗ったトヨタbZ4Xのタクシー
スバルの最新EV、『ソルテラ』と『トレイルシーカー』を続けて約1週間ずつ取材することができた。直接的なきっかけは、発売になったトレイルシーカーの広報車が配備されたことだが、以前より気にはなっていた。
【画像】今回取材したスバルの最新EV『ソルテラET-HS』! 全55枚
先日、取材で名古屋を訪れた時のこと。市内の移動でタクシーに乗ったら、ソルテラとはきょうだい車の関係にある『トヨタbZ4X』だった。ご存知のように、両車はトヨタの元町工場で一緒に生産されている。

今回取材した2台のスバル最新EVのうち、こちらは『ソルテラET-HS』。 平井
実は初めて乗ったbZ4Xで驚いたのは、後部座席の広さ。EVらしく静かで快適な室内は、いかにもタクシー向きだと感心した。京都のMKタクシーがヒョンデ・アイオニック5を導入しているように、静かで排ガスも出ないEVは都市部向きで、インフラの問題はもちろんあろうが、もっと普及していいと思っている。
ちなみにbZ4Xに乗ることが多いというその運転手さんは、以前使用していたテスラ・モデルYにとあるトラブルが発生した際、工場指定でしかもアッセンブリー交換の規模が大きくとんでもない金額になり、退役となったことを教えてくれた。その点、bZ4Xは信頼性が高いそうだ。
それ以来これはちゃんと乗ってみたいと思い、今回のテーマに至った次第。できればスバル版だけでなくトヨタ版も取材したかったが、こちらにそこまでの余裕がなく機会を改めることにした。
トヨタ、スバルが協業するEVのラインナップ
ここでトヨタ、スバルが協業するEVモデルのラインナップを整理しておきたい。
まず愛知県豊田市にあるトヨタの元町工場で生産するのが、『トヨタbZ4X』と『スバル・ソルテラ』。2022年に発売され、昨年秋に商品改良を受けている。

2022年にデビューしたソルテラは、昨年秋に商品改良を受けている。 平井大介
そして今年2月に発売されたのが、全長を伸ばして荷室を伸ばした『トヨタbZ4Xツーリング』と『スバル・トレイルシーカー』。こちらは群馬県太田市にあるスバルの矢島工場で生産される。
また、ガソリンエンジン搭載も考えてか、EV専用に開発された上記4台と異なるプラットフォームを使用するようだが、北米市場をターゲットとした3列シートのモデルが『トヨタ・ハイランダー』と『スバル・ゲッタウェイ』。先日発表された『レクサスTZ』も同じ一族となり、例えば全長4830mmのbZ4Xツーリングに対しTZは5100mmと、3列系はひと回りサイズが大きい。
ちなみにスバルは、北米市場向けに全長が約170mm短いコンパクトな『アンチャーテッド』も展開している。そこで全長が短い順にスバルのEV車を並べて見ると、アンチャーテッド、ソルテラ、トレイルシーカー、ゲッタウェイとなる。
3列系はプラットフォームが異なるものの、モーターのスペックが同じだったりと、コンポーネントを共用していることは明らかで、トヨタとスバルによるEVのワールドワイド展開は、かなりの規模になっているわけだ。
光る『六連星』オーナメント
最初に取材したのはソルテラだ。
昨年10月29日に商品改良を受け、新デザインのヘッドライトとフロントバンパーを採用。ホイールアーチをブラック塗装に変更し、ボディ同色のオプションも設定した。光る『六連星』オーナメント、『SUBARU』ロゴの入ったリアゲートガーニッシュも特徴だ。

商品改良で、新デザインのヘッドライトとフロントバンパーを採用。 平井大介
取材車は上級グレードの『ET-HS』で、価格の安い『ET-SS』がFWDとAWDをラインナップするのに対し、AWDのみとなる。航続距離は最大746km(FWD)となり、バッテリープレコンディショニングを使用することで、低温時において10%から80%の急速充電が約28分(150kW)となったことも謳われている。
ボディサイズは全長4690mm、全幅1860mm、全高1650mm、ホイールベース2850mmで、実車はかなり大きく感じた。貸し出し場所となったスバルの駐車場を出る時に、少し緊張感があったほど。
まず気が付いたのは、メーターディスプレイが高い位置にあり視認性が高いことだ。ステアリングは若干小径で、大きな体躯を想像よりも小さく感じさせてくれる。個人的に好きな、プジョーのiコクピットを思い出した。ダイヤル式のシフトなどインターフェイスも使いやすく好印象だ。
bZ4Xのタクシーで体験した後部座席でも感じたとおり、室内はとにかく広い。さすが北米市場で販売されるだけのことはある。個人的な生活圏では大きすぎるボディサイズだが、実用車としてかなりいいパッケージだろう。605万円という価格もいい線をついてきている。
思ったよりもいいクルマ
大変失礼ながら、乗り始めて抱いた率直な印象は『思ったよりもいいクルマ』だということ。車重がジャスト2000kgあるため、街中の路面がよくないところではどうしても重々しい動きになるが、ボディ剛性が高いのか許容範囲に収まっていると思う。
そして何より、とにかく速いことに驚いた。モーターはフロントが227ps/268Nm、リアが120ps/169Nmというスペックで、実際の重量は2t以上あるボディを軽々と加速させる。また、EVらしく重心の低さが安心感を加えていた。

メーターディスプレイが高い位置にあり、視認性が高いコクピット。 平井大介
回生ブレーキの効き具合も絶妙だ。パドルシフトで強さを切り替えることができ、その強弱を固定できるのも好みだった。最近は、すぐに元の強さに戻るクルマも多い。
気になったのはシート形状が身体に合わないのか、長距離の座り心地があまりよくなかったこと。これは同乗者からも同様の声があったので、機会があればシート担当者に話を聞いてみたい。あと、600万円級のクルマなので、ドアの閉まり方にもう少し高級感があるといいと思った。
ボディを共用しながら上手く作り分けている
ちなみに立ち寄ったサービスエリアで、偶然bZ4Xと並ぶ場面があった。室内に人がいなかったのでじっくりと見比べてみたのだが、ボディを共用しながら上手く作り分けていると感じた。
どうも『共用』という言葉には、『作り込んでいない=手抜き』というイメージが付きまとうが、コストが下がることは車両価格に反映され、結果的には顧客のメリットになる。だから、個人的には必要な部分はどんどんやったほうがいいと思っている。

自宅で100%まで充電したところ、航続距離は439kmを示した。 平井大介
気になる航続距離は、5月下旬の気候で以下のとおり。
・航続距離441km/残量100%でスタート
・331.5km走行し、60km/14%で90kW急速充電(30分)
・239km/56%まで回復
・もう36km(合計361.5km)走って221km/50%に
・自宅で100%まで3kW普通充電(約15時間)
・439km/100%で充電完了
ついツインモーターを楽しみすぎてしまったので、実際はもう少し航続距離が伸びるだろう。また、50%までで361.5km走れているので、カタログスペック622kmにだいぶ近いものが出そうな気がした。
……さて、今回もだいぶ長くなってきたので、この話は後編に続きます。

