山口県のアパートで潜伏していた菱川龍己容疑者(2017年兵庫県警公開)

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 広域系3次団体組長だったオットが獄死。著書『極姐2.0:ダンナの真珠は痛いだけ』(徳間書店)を持つ、本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻がリアルな暴力団の世界を語る。

【写真を見る】9年逃亡した菱川龍己容疑者。公開されていた指名手配写真など

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 6月23日、9年前の射殺事件で逃亡していた神戸山口組傘下のヒットマンが山口県内で逮捕されましたね。

 2017年9月、神戸山口組から分裂した当時の「任侠山口組」(現・絆會)トップの織田絆誠代表らが乗った車が、神戸山口組の菱川龍己組員の運転する車に襲撃され、代表のボディガードだった楠本勇浩組員(当時44)が射殺されました。

 車が衝突して出てきた楠本組員と菱川組員がもみあいになり、楠本組員は、菱川組員に「撃ってみんかい!」と怒鳴り、その直後に頭を撃たれたそうです。

 菱川組員は現場近くに自分の免許証と拳銃を置いて逃走、それから消息不明になりました。免許証と拳銃を置いていったのは「自分が犯人」と証明する意味があったといわれています。真偽はともかく「組長の指示は受けていない」とのアピールですかね。

 9年がたった今年の6月上旬、「山口県内に似た男がいる」と通報を受けた兵庫県警が捜査して逮捕に至ったようです。別人の名前で契約したアパートにいたそうで、いずれ協力者も逮捕されるでしょう。

 このタイミングで逮捕された経緯はこれから明らかになるかもしれませんが、「資金提供がツラくなって組織側が通報」または「親族や友人が警察から『犯人隠避でパクるぞ』と脅されて通報」というのがよくあるパターンです。神戸山口組のトップ、井上邦雄組長も自宅を競売にかけられたりして、資金提供がツラくなってきたのかもしれませんね。

昭和はまだしも、現代のヒットマンは悲惨の一言

 ヒットマンの潜伏生活については「元・山口組顧問弁護士」で作家・YouTuberの山之内幸夫先生の『悲しきヒットマン』(徳間書店)や『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(かや書房、木村勝美著)などで詳しく紹介されていますが、まあ悲惨の一言です。

 昭和の頃は「懲役に行く前に遊んできなさい」と、お金をもらって自由に遊び暮らしてから自首や出頭することもできました。殺人罪も時効があり、刑も安かった(軽かった)ので、時効が成立するまでひっそり暮らすのもアリでした。

 でも今は殺人罪の時効はないし、ヤクザも資金難です。

 パクられ(逮捕され)ていろいろウタわれて(白状されて)は困るので、組織側も資金提供することはします。しかし昭和の頃のように潜伏中の生活費、家族の生活費、逮捕起訴された時の獄中(なか)への差し入れや弁護人の費用まで持ってくれるところは、なかなかないようです。

病気で衰弱死…倉庫の衣装ケースの中で発見

 実名で生活できず、シノギもできず、ずっと同じところに住んでいると怪しまれるのでアパートなどを転々としますが、契約は自分ではできないので、協力者の名義です。病気になっても健康保険を使うと足がつくので、おちおち病院にも行けません。

 1997年に発生した五代目山口組の宅見勝若頭射殺事件では、その実行犯の一人、鳥屋原精輝(とりやばら・きよてる)組員が衰弱死しています。糖尿病などが悪化していたとみられていますね。神戸市内の倉庫で衣装ケースに入れられた状態で発見されましたが、遺体の体重は34キロ、歯はほとんどなく、床ずれもあったそうです。

 鳥屋原組員と一緒に潜伏し、看病もしていた財津晴敏元組員は、16年間の逃亡生活を経て逮捕され、裁判で「正直、逮捕されてホッとしたところもあります」と明かしたことが報道されました。逮捕当時35万円くらいの現金を持っていて、生活には困っていなかったようですが、報復におびえる毎日だったそうです。

「口封じで殺害」はできない

 菱川組員はまったく消息がつかめず、「口封じで殺害された」という説が有力でしたが、私はそれはないと思っていましたね。

 ヒットマンは組にとって「功労者」ですから、逃走資金を提供して残された家族の面倒を見るのは当然です。そうじゃないとヒットマンをやる人がいなくなっちゃうし、無理矢理やらせて逮捕されたら「〇〇に指示されました」とかぜんぶウタっちゃいますよ。

 これは、私の持論じゃなくて、「元・山口組顧問弁護士」の山之内幸夫先生もおっしゃっています。というか、「そもそも神戸山口組にヒットマンを殺せる人材はもういない」そうです。

 いずれにしろ「ヒットマンはつらいよ」ということです。

【プロフィール】 待田芳子(まちだ・よしこ)/本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻。広域系三次団体組長だったオットが獄死。その後は普通のオバサンとして生きようと思ったのに、暴力団排除がひどすぎで声を上げずにいられなくなり、いろいろ発信している。著書に『極姐2.0』(徳間書店・2018年)がある。