あの苦い記憶が蘇っちゃった!?永瀬拓矢九段、新鋭・齊藤優希四段に6年越しの“八つ当たり”ファンは爆笑/将棋・ABEMA地域トーナメント2026

将棋ファンにとっては、対局者同士の意外な因縁や盤外の人間ドラマもたまらない魅力の一つだろう。6月27日に放送された将棋の早指し団体戦「JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026」予選Aリーグ1位決定戦、北海道・東北バルペックス 対 九州サザンフェニックスの試合では、そんな因縁めいた“八つ当たり”の猛攻が盤上で炸裂した。勝負の世界の厳しさを物語るかのようにトップ棋士が見せた意地と、対局後に明かされたユーモア交じりの本音が、ファンの間で大きな反響を呼んだ。
両軍が1勝1敗のタイスコアで迎えた第3局は、北海道・東北の齊藤優希四段(30)と九州の永瀬拓矢九段(33)の対戦となった。売り出し中の新鋭と、ABEMAトーナメント優勝経験はもちろん、タイトル経験者で番勝負の常連でもあるトップ棋士の激突には、開始前から大きな注目が集まっていた。対局を前に、齊藤四段は「タイトル戦で記録も取らせていただいた先生なので、間近で強さを体感している先生。実際に対局できることを楽しみにしています」と意気込みを語った。

しかし、一方の永瀬九段は「将棋も指したことがなく、会ったこともなくて挨拶もしたことがないかも。どういう方か存じ上げないですが、貴重というか、新鮮な機会。手探りになると思うので集中して頑張りたい」とそっけない素ぶりでインタビューに応じていた。
対局は、齊藤四段の得意戦法である相掛かりへと進んだ。序盤から中盤にかけては、入札で先手をもぎ取った齊藤四段のペースで進行していたものの、そこは百戦錬磨のトップ棋士である。永瀬九段が後手番ながらもギリギリのしのぎを見せて勝負強さを発揮し、徐々に流れを引き寄せていく。互いの意地がぶつかり合う見応えのある攻防となったが、最後は永瀬九段が貫禄の底力を見せつけ、新鋭の挑戦を力強く押し切ってチームに貴重な勝ち星をもたらした。

波乱含みとなった対局後、永瀬九段の口から飛び出したのは、齊藤四段にまつわる因縁のエピソードだった。「齊藤四段と会うのは初めてかと思ったんですけど、叡王戦の記録を取ってもらった記憶が対局中に蘇ってきまして(笑)」と回顧。実は当時三段だった齊藤四段は、永瀬拓矢叡王に豊島将之竜王・名人(肩書きはそれぞれ当時)が挑戦し、前代未聞の持将棋2回を含む大熱戦となった2020年度の第5期叡王戦七番勝負の第8局で記録係を担当していた。さらに運命のいたずらか、最終第9局の先手・後手を決める「振り駒」は、第8局の感想戦直後にそのまま齊藤四段の手によって行われていたのだ。
その振り駒の結果、永瀬九段は最終局で後手番に決定。永瀬九段は「叡王戦最終局で“と金”を5枚出された記憶が蘇りました。それで敗れてタイトルを失ったわけなので、いい記憶ではないです」と苦笑い。自身が後手番となる運命の振り駒を行った張本人を目の前にして、『苦い記憶が蘇っちゃった…』とばかりに、やや“八つ当たり”気味に闘志へ火がついたことを明かした。
しかし、永瀬九段は「その当時を思いながら対局をしたことで、“結果”を出すことができたんじゃないかなと思っています」とニンマリ。過去の悔しさを盤上の執念へと昇華させるトップ棋士の凄みと人間味が溢れる、今大会屈指の名シーンとなった。
◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け、全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
