県の「要請」一体何が 新ホール展中止問題【徳島】
徳島市万代ふ頭の会場で開かれる予定だった文化センター跡地での新ホール計画をテーマにした展覧会が、県の意向を受け中止になった問題です。
本当に知事の関与はなかったのか、県の働きかけは「圧力」ではなかったのか。
中止の裏側で何があったのか、取材しました。
(街の人は)
「わかりません」
「何やってんだろうとは思うけど」
「おかしいとは思うけどね。決まったことね、急に中止になったら困るわね、関係者の人も」
中止となったのは、徳島市万代ふ頭の第一倉庫を会場に開かれる予定だった展覧会です。
そこでは、文化センター跡地に建つはずだった建築家・石上純也さん設計の新ホールについての資料、模型や図面など約2000点が展示される予定でした。
しかし、開催3日前の5月29日夕方に、県は会場の建つ万代ふ頭が県有地であることなどを根拠に、会場の所有者に対し、貸し出しを中止するよう要請。
結果、展覧会は中止に追い込まれました。
石上さんは会見で県の対応について、こう訴えました。
(建築家・石上純也さん)
「なぜこのような直前に、県から中止の要請があったのか理解できず、すごく悔しい」
「僕たちと県との協定は、まだ存続しています」
「藍場浜の新しい案と、公平に比較できる場を持ってもらいたいという思いで始めた」
「深い思いを持って書き上げた図面が誰の目にも届かず、誰にも知られずに葬り去られる状況が悲しくて苦しい」
「表現の自由として、憲法で定められている権利が何かしらの形で踏みにじられたような気がして、疑問に思っていると同時に、悲しい気持ちになっている」
展覧会を主催する、日本建築家協会・四国支部徳島地域会は、県の説明に納得できないとしています。
(日本建築家協会 徳島地域会・清水裕且 会長)
「JIAの会員の事務所に、(知事が)来られたという話は聞いています」
「(話の内容)は確認中です」
「万代町のまちづくりの方向性にそぐわないという理由だが、なぜそぐわないのか理解できない」
「公共建築のあり方や、未来の徳島について語り合う議論の場にできれば、非常にいいタイミングで、いい内容(のイベント)だと思っていた」
また、主催団体のメンバーは、県と対立することが目的ではなかったと話します。
(主催団体メンバー)
「対立したいわけではありませんでした」
「あくまで公共建築を徳島の地域の方に見てもらう場を設けたかっただけ」
ここで、今回の経緯を時系列で整理します。
関係者によりますと、展覧会を開こうという話は2026年春ごろから持ち上がっていました。
そんな中、5月9日。
後藤田知事が、イベントの主催団体の会員の事務所を訪れました。
ここで知事から直接、中止を求める発言があったと複数の関係者は話しますが、県から仕事を受託する立場にある会員本人は取材に応じていません。
ただ、この時点では、展覧会の会場は正式には決まっていませんでした。
その後、5月25日。
県土整備部が、会場の所有者から、万代ふ頭で石上さんの展覧会が開かれる予定だと報告を受けました。
県土整備部と所管する港湾政策課が、展覧会の内容が、万代ふ頭のにぎわいづくりにつながるものかどうか協議した結果、29日の夕方。
港湾政策課は、会場側に貸し出しの中止を要請。
その日の夜には、文書でも中止を求めました。
県が根拠としたのは、港湾施設の管理に関する条例などです。
県によりますと、過去にも2023年度、合法大麻に関するブースを出店しようとした際、中止を要請したケースがあるということです。
県土整備部は、中止を要請した経緯について、これまでまちづくりを進めてきた背景に触れ、次のように説明しました。
(県土整備部・神原聡 部長)
「県として展覧会の開催を否定するものではなく、あくまで万代中央ふ頭でのルールに基づいた判断」
「一度立ち止まり、協定が継続しているホールの計画を含めて考えるという」
「開催の目的でありますとか内容が、万代中央ふ頭のにぎわいづくりに触れられていないこともあり、倉庫所有者に対して(中止)要請を行った」
「倉庫所有者が県の要請に従いまして、主催者に場所貸しを断ったもの」
県は、石上さんらとの協定について、2025年1月から解除を申し入れていますが、現在も合意には至っていません。
(記者)
「知事から中止の要請をするようにというような、指示はあったんでしょうか?」
(県土整備部・神原聡 部長)
「知事からの中止の要請はありません。ボトムアップで判断したもの」
そして6月5日、報道陣の取材に応じた後藤田知事は。
(後藤田 知事)
「石上さんのイベントについては、全く(中止要請)した記憶はありませんし知りません」
「その時に、私はそういうことすら知らなかったのが実態です」
事務所には行ったが、展覧会の話はしていないと、自身による中止要請を否定しました。
その上で、今回の県の対応については。
(後藤田 知事)
「行政として取った手段としては、理解できると考えています」
「なぜならば、対象となる場所の土地は県のもの、建物は民間」
「民間の方が最終的に判断したことに対して、それに何か言うべきことではない」
「みなさんが、話題にすることの意味分かりません」
そして、石上さんらの「一度立ち止まって考える機会」とする主張には、こう反論しました。
(後藤田 知事)
「一度立ち止まって、協定が継続している計画を考える機会となっていますが、私どもは立ち止まっていません」
「県議会の多数派のみなさんと前に進めていますから、われわれはタイムスリップすることはございませんので」
今回、行政の要請は適切だったのか地方自治の専門家はこう指摘します。
(地方自治に詳しい・小田切康彦 徳島大学教授)
「今回、結局何を根拠にして中止の要請をしたのか、ちゃんと公開されるべきだし、そこがきちんと適正であったかどうか」
「そこを、県民としてもきちんと把握していく、つまり内容がそぐわないという話は」
「イベントの内容を誰がどういうふうに評価したのかという話になってくるので」
「結局、内容が問題だったという話になれば、民間のやっていることに対して、県がかなり介入していることになっているので」
「もし、そういうことであれば、誰が判断したのかが問題になる」
(記者)
「行政の要請は、たとえ形式上は強制でなくても、受け手にとっては大きな圧力になり得ます」
「県の判断は、施設管理の範囲だったのか、それとも、県の方針と異なる表現への介入だったのか」
「中止要請に至る意思決定の過程と、知事の関与の有無について、さらなる詳しい説明が求められます」
一連の問題について6月9日、イベントの主催団体と後藤田知事そうほうが会見を開き、経緯などについて説明する予定です。
