「カーブで死ぬかと思った」「父兄が宴会翌日に二日酔いで…」親の“車出し”の異常な実態
福島県の高速道路で、部活遠征中の高校生を乗せたバスが事故を起こし、生徒1人が亡くなりました。現在も警察が捜査中のため、事故原因などの詳細は明らかになっていません。
ただ、部活動の「地域移行」や教員の働き方改革が進む一方で、遠征や大会の移動を支えてきたのは、長年にわたり当たり前のように続けられてきた保護者や教員による「車出し・送迎」です。
弁護士ドットコムニュースが読者から体験談を募集したところ、危険運転への不安や不透明な費用負担、断りづらい空気など、部活動をめぐる“見過ごされてきたリスク”が数多く集まりました。
●「今日カーブで死ぬかと…」子どもが漏らした恐怖
特に深刻だと感じさせられたのは、安全意識を欠いた送迎が常態化しているケースが少なくないことです。
他人の子どもを乗せているにもかかわらず、危険な運転が繰り返されていたという証言が複数寄せられました。
静岡市の40代女性は「クラブチームの監督とコーチが運転する車は毎回速度違反。子どもも『今日カーブの時に死ぬかと思った』と言っていました」と明かします。
ほかにも、「遠征の時は、次の日移動でハンドルを握るのに、父兄が遅くまで宴会をしていて気が気ではなかったです。みなさん、完全に二日酔いで運転していた。中学のチームでは、コーチも車出しをしてくれていましたが、運転が雑でスピード違反が当たり前でハラハラした」(40代女性・福岡県)という証言も届きました。
福島県いわき市の50代女性は、子どもが中学生だった頃を振り返り、こう話しました。
「15年前、楽器を運搬するために保護者のライトバンを借りたが、今考えれば善意に甘えていましたし、事故のリスクやガソリンの負担など、何も考えていなかった」
●背景にある「同調圧力」と「経費削減」
こうした送迎リスクの背景として、学校や保護者コミュニティの中にある“同調圧力”を指摘する声もありました。
吹奏楽部で「経費削減のため」として、保護者による車出しが求められた際、事故による楽器破損のリスクを指摘したところ、「それは事故が起きてから考えればいい」と他の保護者に一蹴されたという読者もいました。
神奈川県の50代女性は、次のように振り返ります。
「『学校にはお世話になっているから』と、学校から言われたことを無条件に受ける姿勢や考え方に疑問を持たない周りの方こそ、私は心配になりました。部活内のこととはいえ、保険や法律のものさしを持ち込む必要はあると強く思いました」
「子どものためだから」「みんなやってるから」──。そんな空気の中で、疑問や不安を口にしづらい状況が生まれている実態もうかがえます。
●「命を軽んじてはいけない」異議を唱えた保護者も
一方で、慣例に疑問を抱き、声を上げた保護者もいます。
愛媛県の60代男性は、約30年前、中学生だった娘の吹奏楽部の遠征で、保護者の自家用車に生徒を分乗させる案が持ち上がったと話します。
しかし、校長や教育委員会への報告や許可がなく、事故が起きた場合の責任の所在もあいまいだったことから、男性は強く異議を唱えたといいます。
男性は学校に電話し、顧問教員に「必要なら、費用がかかっても信用できる大手のバス会社に貸切バスを手配すべき」「費用削減を重視して、命を軽んじてはいけない」と伝えました。
結果的に、保護者による乗り合い案は取りやめになったそうです。
●高額な遠征費、「車を出せない保護者」は肩身狭く
部活動に遠征はつきものですが、強豪校やクラブチームになると、その負担は家計を大きく圧迫します。
「長女がインターハイに出た時は、チームの新幹線代50万円以上を立て替えました」(年齢・性別・地域不明)という声や、「部活に入っていないのに『生徒活動費』という謎のお金が半強制的に引き落とされ、その半分が部活応援費でした。部活応援費が含まれている徴収金は、生徒会費以外すべて拒絶し、返金させました」(50代女性・長野県)という体験談も寄せられました。
また、自身がペーパードライバーだったため、遠征時に車を出せず、「申し訳なさ」から、実家から送られてきた地元の特産品を“お礼代わり”に配っていたという女性(60代・関西)もいました。
●「死者が出た以上、両者が頭を下げるべき」の声
今回の福島県のバス事故について、読者からは「死者が出た以上は両者(学校と業者)そろって頭を下げるべき」、「部活動中の事故であり、責任は学校側にあると認めるべき」といった厳しい声も寄せられました。
部活動の地域移行や教員の負担軽減が進む中で、移動や遠征のあり方は大きな転換点を迎えています。
「善意」に依存したまま運営を続けるのか。それとも、費用がかかってでも安全を優先する仕組みを整えるのか。
子どもの命を守るための制度設計が、いま改めて問われています。
