記事のポイント
フレグランスのセントバードが映画やキャラのIP活用で新規顧客を獲得している。
ストロベリーショートケーキやジョン・ウィックを使い購買層を広げている。
消費者調査を基にしたIP選定でライセンス事業を拡大している。


ウィキッド」や「バービー」関連商品が示したように、より多くのブランドが成長のテコとしてIPライセンスに賭けている。

フレグランスのサブスクリプションプラットフォームであるセントバード(Scentbird)にとって、これらのエンターテインメントコラボレーションは、同社が成長するなかで自社ブランドをさまざまな新しいオーディエンスに紹介する戦略の重要な一部となっている。

セントバードは2013年に創業し、2022年にはカーエアフレッシュナー企業のドリフト(Drift)を買収した。2024年時点で、同社は年間収益1億ドル(約150億円)超の収益を生み出していた。

マーベルを皮切りに広がるIPコラボ実績



過去1年間、セントバードはエンターテインメントIPホルダーと協業し、複数のキュレーションコレクションをリリースすることで手応えを探ってきた。2024年にはマーベルとのコラボを2件展開した。

ひとつはマーベルの「アガサ・オール・アロング(英題:Agatha All Along)」に着想を得たフレグランスコレクションであり、もうひとつはマーベル・テレビジョンの「アイアンハート(英題:Ironheart)」のプレミア公開に合わせたバンドルであった。

2025年は『ラストサマー(英題:I Know What You Did Last Summer)」の7月公開にあわせて、キュレーションされたフレグランスセットとプロモーションを実施した。

その後、セントバードは独自フレグランスの開発に着手し、2024年後半にはストロベリーショートケーキとのコレクションをローンチした。

ジョン・ウィックが象徴する「IP香り体験」の拡張



12月初旬、同社はジョン・ウィック(John Wick)のクラシックカーへのこだわりに着想を得た「ジョン・ウィック×ドリフト(Drift)」カーエアフレッシュナーのコラボを発売する。

同社によれば、この香りは「ミッドナイトシトラス、ブラックペッパー、ダークアンバー、エイジドシダーウッドが織りなすフルスロットルのブレンドで、ウィックそのもののように鋭く、力強く、持続性がある香り」であるという。

IP活用を中核に据えた新しいマーケティングモデル



セントバードとドリフトを傘下にもつセントバードのCMOであるエレナ・レキュー氏は、IPベースのコラボレーションは今後、同社のブランド認知と顧客獲得戦略の主要な柱になるとModern Retailに語った。

たとえばジョン・ウィックのファンがカーエアフレッシュナーコレクションに触れたとき、セントバードが提供する900以上のデザイナー系およびインディー系フレグランスにも興味を広げてくれることを期待している。

レキュー氏によれば、ドリフト買収以来、親会社はセントバードのフレグランス提供内容とドリフトの製品の両方の認知向上に取り組んできたという。

フレグランスのライセンスビジネスという概念自体は数十年の歴史をもつが、主にセレブが調香メーカーと組んで香水をつくるといった形が中心であったと説明する。

レキュー氏によれば、創業からの10年間、セントバードはフレグランスの発見を促すパフォーマンスマーケティング中心のサブスクリプションプラットフォームとして知られてきた。

この施策は約12年間有効に機能したが、同社が成熟するにつれ、マーケティング戦略は認知施策を有料ソーシャルと組み合わせるハイブリッド型へと進化しつつあるという。

「そのときに、認知度を備えたIPと自社ブランドを掛け合わせるという発想が生まれた」とレキュー氏は述べる。

愛されるIPで「水を試す」



そのコンセプトは2024年、50年以上にわたりさまざまな形で親しまれてきたキャラクターであるストロベリーショートケーキからはじまった。

「我々は本当にノスタルジーを活用したかった」とレキュー氏は語る。ノスタルジーは人気のマーケティング戦略になっており、またストロベリーの香りは現在トレンドとなっているグルマン系フレグランスにも自然にフィットする。

「それ以来、ストロベリーショートケーキは認知向上に役立っている」とレキュー氏は言う。独占性もトラフィックを押し上げる要因だ。

「ストロベリーショートケーキのフレグランスを買える場所はほかにない」とレキュー氏は語る。このコラボレーションは、好ましいCAC(顧客獲得コスト)での新規獲得にも貢献した。「ストロベリーショートケーキのフレグランス発売以降、数十万件の新規サブスクリプションを得た」と同氏は述べる。

長期的なR&Dプログラムの構築



成功を受けて同社は、人気キャラクターや作品とのさらなるコラボレーションを模索しはじめた。

「この1年半、私はセントバードとドリフトの両方で展開するための新たなライセンス契約の獲得に取り組んできた」とレキュー氏は語る。

今後のコラボはノスタルジー系から現在進行形の作品まで、主にエンターテインメント領域から幅広く登場する予定だ。「2026年にはリアリティ番組のライセンス契約も予定されている」と同氏は述べる。

映画、テレビ番組、アーティストとの個別パートナーシップなど、アイデアは無数にある。そのなかから絞り込むために、セントバードは対象ジャンルの購買経験があるパネルを用い、コンセプトテストと消費者調査を実施している。

「消費者調査で検証されたフランチャイズとのみ交渉に進む」とレキュー氏は説明する。

たとえばジョン・ウィックのキャラクターは、男性と女性双方のプロファイルで高い好感度を示した。

「ジョン・ウィックは普遍的に愛されている。ここまで強い支持があるとは予想していなかったので、今後数カ月の結果が楽しみだ」とレキュー氏は言う。

IPコラボ市場の拡大と業界トレンド



ライセンシング・インターナショナル(Licensing International)のグローバル会長であるモーラ・リーガン氏は、消費者はエンターテインメントIPに対して強いロイヤルティを維持しており、そのことが美容系コラボレーションの効果を高めていると述べる。

同団体の最新調査によれば、2024年におけるエンターテインメント・ライセンス商品は約1500億ドル(約22兆5000億円)を売り上げ、世界のライセンス市場の40%以上を占めた。

リーガン氏は、「バービー」や「ウィキッド」関連商品の商業的成功により、ほかのスタジオや権利元が大作公開のマーケティング手段としてライセンス活用により積極的になったと指摘する。

「これらのコラボは、公開前の盛り上がりを作るだけではなく、映画が劇場を離れた後も作品との関わりを継続できる」と同氏は述べる。

「これは一過性のトレンドではなく、長期的な成長戦略である」。

数多くのIPコラボを手がけたセントバードは、今後のアプローチがさらに容易になるという。

「このプロセスから学んだのは、一度コラボをはじめると周囲が気づき、こちらの存在がレーダーに乗るということだ」とレキュー氏は語る。

「パートナーシップがパートナーシップを呼び、ライセンスがライセンスを呼ぶというわけだ」。

[原文:How Scentbird is building its IP licensing program, from John Wick to Strawberry Shortcake]

Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)