ホリデー目前、22年ぶりのレイオフ急増 Amazon やターゲットを襲う小売の「AI効率化」

記事のポイント
米国企業の10月の人員削減が22年ぶりの高水準となり、小売業が最大の打撃を受けた。
Amazonやターゲットなど大手企業が相次いで人員削減を実施し、AI導入や効率化が背景にある。
ホリデー商戦を前に季節雇用が減少し、小売業は自動化と常勤スタッフへの依存を強めている。
米国企業による10月の人員削減数は、20年以上ぶりの高水準となり、大手小売企業による大規模なレイオフが一因となっている。
これは前年同月比で175%増であり、コスト削減を主因としつつも、AIが2番目に多く挙げられた要因であった。
10月の削減数は2003年以来同月としては最多であり、先月の大幅な人員削減が起きる前から、年初来のレイオフ数はすでに2020年以来の高水準となっていた。
2025年、小売業は倉庫業および非営利団体に次いでもっとも打撃を受けた業界のひとつである。2025年に入ってからこれまでに、同業界は8万8664人の人員削減を発表しており、2024年同月までの3万6136人から145%の増加となっている。
この削減は、小売業界全体で相次いで実施された大規模な人員削減の流れに続くものだ。
10月28日、Amazonは最高経営責任者アンディ・ジャシー氏のもとで、業務の効率化と官僚主義の削減を目的に、1万4000人のコーポレート職を削減する計画を発表した。
一方ターゲット(Target)は、売上減少を受けて1800人のホワイトカラー職を削減した。スターバックスやUPSなど、ほかの消費者向け企業もここ数カ月で人員を減らしている。
ホリデー商戦前に広がる小売業の不安とコスト圧力
「コロナ後の時期に小売業では非常に多くの採用が行われたが、小売業は特有の課題にも直面している」と、チャレンジャー・グレイ&クリスマスの労働・職場専門家アンドリュー・チャレンジャー氏はModern Retailとのインタビューで述べた。
「関税、移民、そして根強いインフレ――これらすべてが小売業に影響を与え、戦略的な変化を余儀なくさせている可能性がある」。
こうしたレイオフの波は、小売業にとってもっとも繁忙期であるホリデーシーズンを前に暗い影を落としている。
頑固なインフレ、消費者マインドの低迷、そしてドナルド・トランプ大統領による貿易戦争の影響もあり、米国の平均関税率はイェール大学のザ・バジェット・ラボによれば1934年以来の高水準となっている。
ホリデーを前にした小売業の企業によるコスト削減は、厳しい経済環境下で売上と収益性を維持しようとするプレッシャーの大きさを示している。
「小売業者は単に『より少ないリソースでより多くのことをやろう』としているだけだ」と、イーマーケター(eMarketer)の小売アナリストであるスカイ・キャナヴス氏は述べた。
小売業の季節雇用が2009年以来の低水準に
10月のレイオフがホリデー商戦直前のタイミングで発表されたことは、とりわけ注目すべきである。
「過去10年間、企業は第4四半期にレイオフを発表することを避けてきたため、10月にこれほど多くの発表があるのは驚きだ」とチャレンジャー氏は報告書のなかで述べた。
「ソーシャルメディアの登場により、従業員が自身の雇用主についてネガティブな経験を共有できるようになったことで、『ホリデー前のレイオフ発表』という、特に冷酷に見える慣習は減少した」。
小売業者はまた、ホリデーシーズンの雇用拡大も控えている。チャレンジャー・グレイ&クリスマスによると、2025年の季節雇用の追加は50万人未満となる見込みで、これは2009年以来の最低水準である。
コールズ(Kohl’s)やターゲットなど複数の小売企業は、2025年の季節雇用計画をこれまでのように公開しておらず、これも例年とは異なる対応である。
一部の企業は、2024年から季節雇用数を維持する計画だ。Amazonはホリデーシーズンの繁忙期に25万人の雇用を予定しており、バス&ボディワークス(Bath&Body Works)も3万2000人の雇用を発表した。
「ホリデー売上が予想以上に好調となれば、あとから採用が増える可能性もあるが、現時点での慎重な採用発表のペースを見る限り、企業は大きな季節的急増を見込んでいないようだ」とチャレンジャー氏は述べた。
自動化の進展で季節雇用より常勤スタッフを重視
さらに同氏は、2025年の季節雇用主は依然としてインフレや関税などの課題に直面していると指摘した。そのため、多くの企業が大規模な季節雇用よりも、自動化や常勤スタッフへの依存を強めているという。
「人々が店に行かなくなったわけではない。来店者数(フットトラフィック)はそれほど減らないとみられている。しかしスタッフが少なければ、消費者体験の質は損なわれる可能性がある」。
イーマーケターのキャナヴス氏は、人員削減が自己強化的な悪循環に陥るおそれがあると警告する。
「買い物客が販売員の対応を受けられなかったり、レジの列が長すぎたりして悪い体験をすると、次回は来店しなくなる傾向がある」と彼女は述べた。
ホリデー売上は1兆ドル超を見込むも「K字型消費」が進行
それでも、ホリデーシーズンにおける消費者支出の力強さには一筋の希望がある。
全米小売業協会(National Retail Federation)は、2025年の米国のホリデー売上が初めて1兆ドル(約150兆円)を超え、前年より3.7〜4.2%増加すると予測している。
イーマーケターの独自予測ではやや控えめで、前年比3.6%増の1兆3690億ドル(約205兆円)となっている。
キャナヴス氏は、ホリデー支出の見通しが依然として堅調な理由について「人々は借入や後払いサービス(バイ・ナウ・ペイ・レイター)のような支払いプランを使ってでも消費を続けている」と述べた。
しかしその消費の強さはますます不均衡になっている。
「現在の消費経済は『K字型』の様相を呈しており、高所得層は支出を増やしている一方、低所得層は支出を減らしている」と彼女は語った。
Amazonとターゲットの人員削減の内幕
Amazonによる今回のレイオフは、2022年以来でもっとも大規模なものとなった。パンデミック期、同社は急増するEC需要に対応するため、2019年の約80万人から2021年には160万人以上へと従業員数を倍増させていた。
チャレンジャー・グレイ&クリスマスの最新報告では、10月のレイオフの主な要因としてコスト削減とAI導入を挙げている。しかし、Amazonのアンディ・ジャシーCEOは10月30日の四半期決算説明会で、今回のレイオフは「文化」に関するものであり、財務やAIの問題ではないと述べた。
「我々が数年間でこれほど急速に成長した場合、どうしても多くのレイヤー(階層)が生じる」とジャシー氏は語った。そうしたレイヤーを削減することは、Amazonが「世界最大のスタートアップのように」運営するという使命の一環であると同氏は付け加えた。
今回の削減は、ソフトウェアエンジニアリングからビデオゲーム、広告にいたるまで多岐にわたるが、社内データ(Business Insiderによる引用)によれば、小売管理職がもっとも大きな影響を受けたという。
これは、Amazon内部で進行しているより大きな変化を反映している可能性がある。
ECインテリジェンス企業、マーケットプレイス・パルス(Marketplace Pulse)によると、Amazonの小売事業が総売上に占める割合は2018年の60%から、現在は40.5%にまで低下している。
ターゲットの再編も同様の理由で行われた。
同社はModern Retailに対し、約1000人のチームメンバーを削減し、さらに800のポジションを補充せずに空席とした決定について、「コスト削減ではなく意思決定の迅速化を目的としている」と説明した。
「時間の経過とともに生じた複雑さが我々を後退させていた」と、ターゲットのCOOで次期CEOのマイケル・フィデルケ氏は、同社がModern Retailに提供した従業員向けメールのなかで述べた。
「あまりに多くの階層と重複する業務が意思決定を遅らせ、アイデアの実現を難しくしていた」。
[原文:Job cuts hit 22-year October high as retail layoffs from Amazon to Target mount ahead of holidays]
Allison Smith(翻訳、編集:藏西隆介)
