記事のポイント
サングラスハットはCTV広告を活用し、実店舗への来店者数を前年比6倍に増やすという驚異的な成果を達成した。
来店促進の鍵は、QRコードやバーチャル試着といった体験型要素と、顧客の現在地に基づいた精緻な「地域ターゲティング」にある。
CTVはもはや補助的な広告ではなく、成果を重視するブランドにとって動画戦略の中心(CTVファースト)になりつつある。


サングラスハット(Sunglass Hut)は、CTVを、消費者の心をつかむ構想の柱にしようとしている。

サングラスハットは2024年と2025年の夏に、視聴者に店舗に立ち寄ってもらうことを目標としてCTV広告を流した。当初は、スキャンすれば最寄りの店舗までの道順が分かるQRコードを広告に含め、最寄りの店舗の住所も画面に表示した。2025年には、3Dサングラスの試着用フィルターにリンクしたコードを追加した。

サングラスハットは、レイバン(Ray-Ban)の親会社エシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)が所有するブランドだ。同社は2024年、2025年の広告キャンペーンのターゲティングとその後のリターゲティングで、プログラマティックメディアプラットフォームのブロックボード(Blockboard)と協働した。

同社は、2025年のキャンペーンについてはまだデータを処理中だが、2024年には、キャンペーンを実施した7〜9月に来店者数が前年比で6倍に増加し、来店者ひとり当たりにかかった広告費用も前年比で76%減少したとModern Retailの取材に対し述べている。

2024年と2025年の両年に、サングラスハットは多数の店舗がある米国で広告を流した。利用したプラットフォームにはHulu、ピーコック(Peacock)、HBO Max、パラマウントプラス(Paramount+)が挙げられる、とブロックボードの創業者兼CEOのマット・ワッサーラウフ氏は語る。

同社はデジタルストリーミング広告を制作したが、その目的は、売上の大半を占める対面販売を増やしたかったことにある、とエシロールルックスオティカでグローバルメディア担当ディレクターを務めるキャロライン・プロト氏は説明する。「人はまだ、サングラスを試着することに必要性を感じている」と同氏は話す。「掛け具合や自分のスタイルに合うかを確認しないといけない。店舗は当社の最大の収益源であり、今回のキャンペーンでは、来店者数が当社の最重要なKPIだ」。

世界全体では、エシロールルックスオティカは2025年前半に、(実店舗とWebサイトを含む)D2C分野で前年比10.2%増の売上を計上した。北米での売上高は、恒常為替レート(CER)ベースで前年比4.9%増だった。

2024年のキャンペーンでは、サングラスハットはマスリーチ目的で初のリニアTV広告を展開した。続いて、来店の見込みが高いとブロックボードが判断した層など、いくつかのオーディエンス層をターゲットにした専用のCTV動画を流した。サングラスハットとブロックボードはその後、モバイルやデスクトップ、タブレットで15秒間の動画によってこうしたオーディエンスのリターゲティングを行なった。CTV広告を流した後、サングラスハットは、サードパーティのパートナー、キュービック(Cuebiq)を通じて来店者数を測定した。

なぜ今、CTVが注目されるのか



サングラスハットは、ケイクスボディ(Cakes Body)やサートバ(Saatva)などと同様に、CTVを動画ミックス全体の柱にしている数多い小売企業の1社だ。ストリーミング広告は、リニア広告より費用が高い傾向があるが、広告主がより特定の層を引きつけることもできる。ディズニープラス(Disney+)やAmazonプライムビデオのようなプラットフォームも近年、広告インベントリー(在庫)を増やしてきたため、CTVでの実験を検討しているブランドにとって枠が増えている。

買い物客がストリーミングプラットフォームでの広告視聴を受け入れている点も、導入に役立っている、とCTV広告キャンペーンを実施しているLGアドソリューションズ(LG Ad Solutions)のCMO、トニー・マーロウ氏は指摘する。同社が実施した調査では、現在、ストリーマーのうち67%が無料の広告付きストリーミングサービスを選択しているが、これは、ストリーミングサービスの料金上昇や予算に関する懸念といった要因が影響しているとマーロウ氏は見ている。デロイト(Deloitte)によると、米国のストリーミング動画の会員は、平均で4つのサービスに対して前年比13%増となる月額計69ドル(約1万200円)を支払っている。

イーマーケター(eMarketer)は、CTV広告への支出総額は、2028年に従来型TV広告への支出を史上初めて超えると予測している。「多くの人々、特に、ある一定の年齢以下の人々にとっては、ストリーミングテレビがテレビそのものだと認識することが重要だと思う」とマーロウ氏は言う。「ブランドにとって、かつては、リニアTVが優先的に購入する広告であり、ほかのすべて(ソーシャル、オンライン、CTV)は補助的な位置づけだった。今では、CTVファーストの世界にいるとメディアプランナーが気づくのを目の当たりにし始めている」。

成果を最大化する運用の秘訣



業界データも、ショッパブルなストリーミング広告に顧客が反応していることを示している。LGアドソリューションズの調査では、CTVの視聴者の大多数(79%)が、ストリーミング広告がショッピングに関する決定に影響を及ぼしていると回答している。関連するCTV広告の視聴後に、39%の人々がオンラインで製品を検索し、5分の1強(21%)が購入。そして19%が実店舗に来店した。

(サングラスハットが最近展開したCTVキャンペーンの場合のように)パーソナライズされた広告は、目立った変化をもたらし得る、とマーロウ氏は指摘する。LGアドソリューションズが調査したCTVの視聴者のあいだでは、75%が、「地域に関連がある」と感じた広告に好意を持っていた。実際、サングラスハットの場合はロケーションターゲティングが必須だ、とプロト氏は述べる。サングラスハットの広告は、視聴者の住所から半径5〜25マイル(約8〜40km)の範囲内にある店舗を勧めている。この提案は、特定の地域における交通パターンに基づいて行われている。たとえば、その地域が徒歩や車での移動に適しているか、地下鉄やバスなどの公共交通機関が利用可能かといった点が考慮されている。

ブロックボードとともに2025年に展開したキャンペーンは、8月初旬に終了したが、サングラスハットはCTVへの投資を続ける計画だ。「動画戦略があるなら、それは必須だ」とプロト氏は言う。「各キャンペーン後に、どのオーディエンスが成果を上げたかを正確に分析しており、そのおかげで今後のキャンペーンでより情報に基づいて対応できる」。

ブロックボードのワッサーラウフ氏は、次のように補足する。「CTVは、まさに成果重視のメディアであることを我々は示している。それが、もっとも刺激的な側面だ」。

[原文:Sunglass Hut sees a lift in store traffic after running CTV ads]

Julia Waldow(翻訳:矢倉 美登里/ガリレオ、編集:成田明香里)