記事のポイント
ロレックスが13年ぶりの新ライン「ランドドゥエラー」を発表し、業界の注目を集める。
高級腕時計市場は価格高騰と需要減少で二極化が進み、輸出も落ち込んでいる。
ブランドは次世代の顧客獲得を目指し、スポーツとの連携や新戦略を模索している。


毎年開催されるスイス・ジュネーブのトレードショー「ウォッチズ&ワンダーズ」は、スイスの高級腕時計業界にとって1年でもっとも重要な1週間である。ロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンといった名だたるブランドが一堂に会し、1年の新作を披露する場だ。

ディーラーやコレクターたちは、このイベントを通じて今年の収集計画を立てる。優れたトレードショー同様、「ウォッチズ&ワンダーズ」は業界を形作るプロダクトの先行発表の場でもある。

イベントは4月2日に始まり、4月7日まで続いたが、ここでロレックスが13年ぶりとなる新しい腕時計ラインを発表した。ロレックスが最後に完全新作のラインを出したのは2012年の「シードゥエラー」であったが、今回新たに「ランドドゥエラー(Land-Dweller)」が加わった。このモデルには、ブランドとして初となる「一体型ブレスレット」などの新要素が採用されている一方、フルーテッドベゼルといったクラシックなデザインも踏襲している。



時計マーケットプレイスとして世界最大級の「ボブズ・ウォッチズ」のチーフ・コマーシャル・オフィサーであるダグ・カプラン氏は、イベント開催前日にGlossyの取材に応じ、ロレックスが一体型ブレスレットを採用することを予測していた。一体型ブレスレットとは、文字盤とブレスレットが一体化されており、取り外しや交換ができない仕様を指す。

オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」やパテック フィリップの「ノーチラス」など、ロレックスのライバルたちはすでにこの仕様を取り入れてきたが、ロレックスはトレンドに遅れていても問題はないとカプラン氏は語る。

カプラン氏は、「ロレックスは最初に登場しなくても、最後でもいい。ロレックスが登場した時点で、それが主役なのだ」と言う。

つまり、ロレックスが何かを始めた時点で、それは業界の方向性を決定づける出来事となる。これは、ロレックスが高級腕時計市場において極めて大きな存在であることにも起因している。正確な数値は不明であり、ロレックスは販売量に関して秘密主義だが、カプラン氏の見積もりによると、ロレックス、オーデマ ピゲ、パテック フィリップ、カルティエなど数ブランドで市場全体の約70%の価値を占めているという。

揺れる市場、揺るがぬロレックス



現在、高級腕時計業界は奇妙な状況にある。新品の価格は上昇している一方で、中古品の価格は下落傾向にある。スイス時計の輸出全体も2024年を通して減少傾向にあり、その傾向は2025年初頭も続いている。2025年2月の輸出は前年比で8.2%減少し、前年より10万本以上少ない輸出数となった。これは主に中国市場での需要減少によるものだ。

しかし、輸出量が伸びている唯一の分野がある。それは228ドル(約3万3000円)以下の価格帯の腕時計である。言うまでもなく、「ウォッチズ&ワンダーズ」で披露される腕時計の大半は、この価格帯を大きく上回っている。ロレックスも低価格帯を意識した動きは見せておらず、金価格が前年比27%上昇しているにも関わらず、今年は新たにイエローゴールドの「1908 セッティモ」モデルを発表した。ロレックスの金時計の価格は2025年に14%上昇しており、同モデルは約4万ドル(約587万8750円)と、価格も非常に高い。

このような高額モデルは、明らかに裕福で定評のある時計コレクター層をターゲットとしている。しかし、カプラン氏は、高級時計ブランドにとって最大の課題は「新たな顧客の獲得」であると語る。数十年前から時計を愛用してきた既存の顧客は今後も市場にとどまり続けるだろうが、ブランドは次世代の顧客とその好みに応じたプラットフォームでの接点を持つ必要がある。

「どうやって顧客を喜ばせ続けるか? それが大きな問題だ」とカプラン氏は言う。「ロレックスは、製品の供給量が限られている状況のなかで、顧客を引き留めるためにジュエリーの販売にも力を入れ始めている」。

新たな顧客を獲得する手段のひとつが、スポーツリーグとのスポンサーシップ契約である。今回の「ランドドゥエラー」は、テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーが着用したビジュアルとともに発表された。しかし、モータースポーツほど時計と強く結びついたスポーツはほかにない。ロレックスは長年にわたりF1のスポンサーを務めてきたが、現在はLVMH傘下のタグ・ホイヤーがその座を引き継いでおり、2024年10月には10億ドル(約1453億円)規模の新契約を締結した。



しかし、ロレックスはF1の公式タイムキーパーでなくなった今も、自社がモータースポーツと密接に関わっていることを示すかのように、「デイトナ」ラインの新作を複数発表している。

「ロレックスはF1の公式タイムキーパーではなくなったが、モータースポーツとのつながりは根強い。それは今後もブランドの強みであり続けるだろう」とカプラン氏は述べた。

※記事中「ランドゥエラー」を「ランドドゥエラー」に修正しました。

[原文:Luxury Briefing: At Watches & Wonders, Rolex shows off its first new watch line in 13 years

Danny Parisi(翻訳・編集/坂本凪沙)