再審判決を控え、自宅で過ごす袴田巌さん(手前)と姉ひで子さん=26日午前、浜松市(支援者提供)

写真拡大 (全2枚)

 袴田巌さん(88)は2014年、逮捕から48年ぶりに釈放され、ふるさとの浜松市で姉ひで子さん(91)と暮らす。

 死刑執行の恐怖にさいなまれつつ長期に及んだ拘禁の影響は大きく、釈放から10年たった今も意思疎通は難しいが、平穏な生活の中、笑顔を見せることも増えているという。

 袴田さんの日課はドライブで、支援者が運転する車の助手席から数時間、市内などを見て回り、夕食を済ませて帰宅する。服装はひで子さんが選んでいるが、袴田さんの最近のお気に入りは、ハンチング帽にチョッキを合わせたスタイルだ。

 その日のドライブの行き先は、袴田さんの希望で決まる。ただ、袴田さんは宙を見詰めながら独り言を言ったり、存在しない地名を挙げて「出掛けよう」と提案したり。身の回りを世話をする支援者の一人、猪野待子さんは「今でも後遺症を背負っている」と話す。

 そんな袴田さんも、以前は、毎日数時間、自宅周辺を自分の足で歩いていた。だが、年を追うごとに階段よりエレベーターを使うようなことが増え、20年ごろ、散歩からドライブに切り替えた。周辺からは「年相応に老いた」との声も聞こえる。

 昨年10月に始まった再審公判には、袴田さんは出廷を免除され、一度も姿を見せていない。代わりに出廷してきたひで子さんは、公判について、袴田さんには一切話していないという。袴田さんが「もう終わった話」と考えていることなどを考慮してのことだ。ひで子さんは「どんな判決でも巌は変わらないと思う」と語っていた。