2ゴールの上田(右)など、日本がゴールラッシュでバーレーンを下した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本代表は現地9月10日、北中米ワールドカップ・アジア最終予選の第2節でバーレーンと敵地で対戦。5−0で快勝を収めた。

 どんな大会でも出場枠が広がれば、経験値の差が浮き彫りになり大量得点差の試合が頻出しがちだ。アジアでFIFAランク最上位の日本は、当然ながら開幕からの対戦相手にも恵まれたので、そもそも序盤で苦戦を強いられた前回と同じ轍を踏む可能性は薄かった。

 最終ラインの3人でビルドアップを始める日本に対し、バーレーンは2トップ。数的優位を保ちながら繋げる日本は、CB右の板倉滉、左の町田浩樹が敵陣まで楽にボールを運び込めむので、その時点でポゼッションの優位性は明らかだった。

 バーレーンは左MFのモハメド・マルフーンまでもが最終ラインに吸収され、5バックで受けに回ることが多く、その分、裏のスペースを消しにかかろうとしていたが、CB、ボランチ、シャドー、そしてウイングバックが連動して崩しにかかる日本のパフォーマンスに圧倒され心身ともに疲弊。37分のPK判定に続き、後半開始早々に上田綺世の追加点が生まれると、完全に集中が途切れ間延びしてしまったので、そこからは面白いように日本のシンプルな攻撃が機能した。

 MFがストレスなくボールを受けられるから裏のスペースも使い放題で、日本の選手たちは動けば動くだけ収穫を望める。その象徴がボランチの守田英正で、61分には上田に縦パスを入れると追い越してリターンを受けて3点目。さらに3分後には、左サイドで抜け出した三笘薫のクロスに合わせて連続ゴールを記録した。

 ワールドカップ最終予選の名前はついていても、ここまでの2戦はアジアカップでもグループリーグのレベルに過ぎない。バーレーンを率いて、就任以来5戦無敗だったドラガン・タライッチ監督も、両国の実力差を踏まえれば、なんとか傷口を広げずに済まそうとする消極策しか浮かばなかったようだ。
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 もっとも7割ボールを支配する日本は、終始、相手陣内でボールを動かし、失った瞬間の切り替えも徹底されているので、バーレーンの選手たちはようやく自陣で足もとにボールを置けても個で運ぶ一択しか残されていない。全局面の1対1が劣勢なのに、攻撃に出ようとした途端に数的不利で出鼻を挫かれるので、まったく成す術がなかった。

 結局、意気消沈のバーレーンは、後半、クロスもなければペナルティエリアへの侵入も皆無だった。

 日本の属するグループCを俯瞰すれば、川崎全盛のJリーグを彷彿させる。技術に秀でて圧倒的なポゼッションを誇った川崎は、狭い局面でのパスワークで優位なだけでなく個で打開できるタレントも多士済々で、対戦相手は押し並べて及び腰だった。

 鬼木達監督が1試合「3ゴール」をノルマとしていた時代で、実際に内容を見ればいつでも簡単に到達できそうだった。だがそれほど強かった川崎も、対戦相手が研究を進め、前から圧力をかける戦い方を選択するようになると意外な脆さを露呈し始める。もちろん川崎の場合は、多くの優秀なタレントを引き抜かれたことが低迷の主要因だが、中国やバーレーンを見ていると日本を恐れるあまりの消極策もおそらく劣勢に拍車をかけている。

 森保一監督は「簡単な試合はひとつもない」と繰り返すが、もし次の2戦(対サウジアラビア=アウェー、対オーストラリア=ホーム)も楽に突破するようなら大勢は決する。しかし日本が目ざすのは、あくまでワールドカップ本大会なので、この予選もいかに活用するかは真剣に検討していく必要がある。

 なかなか実りある代表戦を組み込み難い以上、個々を最も伸ばしてくれるのは欧州の主戦場だ。それを最大限に尊重しながら、キャパシティを広げていく作業が代表チームには求められる。確かに予選は結果が大切だが、最強メンバーで快勝ばかり連ねるだけでは、本番での伸びしろや爆発力を望み難くなる。

文●加部究(スポーツライター)