鍛え上げられた肉体はハリウッドでも通用する

写真拡大

エンセン井上の役!

 北京五輪の柔道男子100キロ超級金メダリストで、元総合格闘家の石井慧(37)のインタビュー記事が、6月4日に「東京スポーツ」のWEB版に掲載された。そこで世界最大のプロレス団体WWEの「ザ・ロック」こと、ドウェイン・ジョンソン(52)主演のハリウッド映画「The Smashing Machine」に出演することを明かした。

【写真】ドウェイン・ジョンソンとの共演を自ら報告! 石井はハリウッド進出した日本人俳優を抜けるか?

 映画はかつて米の格闘技団体・UFCや、日本のPRIDEのリングなどで激闘を繰り広げた元総合格闘家のマーク・ケアー(53)の半生を描く。

「製作を知って、『こんな作品、当たるの?』と思った日本の格闘技ファンや映画関係者も多かったと思います。しかし、このところジョンソンは、主演のみならず製作も担当しているので、自分が『これをやりたい!』と思った作品があれば実現できる立場にいるのです。自身のインスタグラムでは、早々と総合格闘技の練習に励む動画をアップしていました」(映画業界関係者)

 ジョンソンはケアーの役を演じ、ボクシング世界ヘビー級4団体統一王者・オレクサンドル・ウシク(37)が同作で俳優デビューなど、豪華な出演陣も話題となっている。石井は18日に再び掲載された東スポのインタビュー記事で、2000年1月の「PRIDE GP2000開幕戦」でケアーと対戦し、5月に大麻事件で逮捕された元格闘家のエンセン井上ことイノウエ・エンセン・ショウジ容疑者(57)役を演じることを明かした。

鍛え上げられた肉体はハリウッドでも通用する

 石井は、「僕はエンセンさんが好きなんで、演じられてうれしいです」と嬉しそうだったが、

「確かに石井は体格や見た目がエンセンによく似ている。制作サイドはよく調べたというか、うまいキャスティングだなと思います。今や、『ハリウッドで最も稼ぐ男』となったジョンソンの主演作とあって、ハリウッドデビュー作でいきなりギャラが億単位という破格の扱いもありそうです」(映画業界関係者)

 石井は今年3月、引退していたことを発表している。今後の展望として、役者への挑戦意欲を語っていたというが、それにしてもいきなりハリウッドデビューとは……。波乱万丈を絵に描いたような彼の人生を改めて振り返ってみたい。

五輪で最重量級・最年少メダリスト

 石井は、大学時代の06年4月に行われた、体重無差別の「全日本選手権」で、現在も更新されていない史上最年少の19歳4カ月で優勝し、国内の柔道家の頂点に立った。21歳で臨んだ2年後の北京五輪ではプレッシャーをものともせずに金メダルを獲得した。

「それまでの日本の柔道家はしっかり組み合って一本勝ちを狙うスタイルで、それがプレッシャーとなって五輪で勝てない選手が多かったんです。ところが、石井はポイントでリードしていれば組み合わないなど、とにかく“勝負”に徹していました。さらに、当時は立ち技を重視していた日本の柔道界において、ひたすら寝技も磨きました。試合運びがうまく、反則ポイントを取られることもあまりなかったのです。当時の日本の柔道家としては異色の存在でしたが、師匠や大学の先輩などから苦言を呈されてもスタイルを変えませんでした」(スポーツ紙・元五輪担当記者)

 もともと不世出の柔道家・木村政彦氏にあこがれていた石井は、柔道のみならず柔術やレスリングを習得。木村氏が“3倍努力”と称して、常に人の3倍の練習をこなしたことに感銘を受け、厳しいトレーニングをこなした。その成果が実り、五輪柔道において、最重量級で最年少の金メダリストになった。

 当時、在籍していた国士舘大の柔道部監督は、ロス、ソウル五輪の95キロ超級金メダリストで、15年1月に亡くなった斉藤仁氏だった。金メダル獲得直後のインタビューで石井は、「オリンピックのプレッシャーなんて斉藤先生のプレッシャーに比べたら、屁の突っ張りにもなりません」と発言。その年の「新語・流行語大賞」の候補60語にノミネートされたが、この時の“軽口”が、その後の人生に大きく影響を与えてしまう。

「柔道の名門大学では当たり前なのですが、斉藤氏は石井の卒業後の進路を、自身が懇意にしていた企業に斡旋しようとしていました。ところが、彼はそれに真っ向から反発し、師弟の間に亀裂が生じ、関係修復が不可能な状態になってしまったのです。結局、石井は総合格闘家への転向を表明し、大手芸能事務所がマネジメントを手掛けることになった。しかし、当時は間違いなく世界最強に近い柔道家でした。あのまま続けていれば、五輪での2連覇、あるいは3連覇する可能性も十分ありました」(同)

 09年のおおみそか、自身と同じように五輪金メダリストから総合格闘家に転身した吉田秀彦(54)を相手にデビュー戦を行うも、判定で完敗。そこから、公私ともに“流浪”の人生を歩むことになる。

「飽きっぽい性格なのか、その後一つの団体だけに限定するのではなく、国内でRIZIN、IGF、HEAT、国外ではKSW、PFLなどのリングに上がりました。ベルトも獲得していますが、日本の格闘技ファンが知っているタイトルはなし。柔道への未練もあったのか、16年リオ五輪に米国代表での出場を公言。11〜14年には全米選手権に出場しましたが、現地の日本柔道家に敗れるなど、出場はかないませんでした。さらにボクシングやK-1にも参戦しましたが、結果を出せずじまい。それでも、19年に対戦し、惨敗した伝説のファイター、ミルコ・クロコップに弟子入りするため、ミルコの母国・クロアチア国籍を取得していました」(格闘技担当記者)

俳優業が一番、うまくいく?

 私生活では、10年に当時大学生だった女性と結婚したものの、わずか9カ月でスピード離婚。そしてファンだった歌手の林明日香と13年7月に再婚し、1児に恵まれたが、16年8月に離婚が明らかになった。

「元妻は共に石井に振り回されっぱなしだったようですが、現在は外国人格闘家と交際中と言われています。根はマジメなのですが、とにかく、気分の浮き沈みが激しい性格のようで、その時の思いつきで行動するタイプ。クロアチア国籍を取得したのも、あまり考えての行動ではなかったのではないでしょうか」(同)

 映画に話を戻すと、これまで、日本人俳優でハリウッドで成功しているのは、長年、現地に拠点を置いている真田広之(63)と、渡辺謙(64)らほんの一握りだが、格闘技界で実績のある石井は“特例扱い”のようだ。

「スタントマンなしでそれなりの格闘シーンをこなす役どころで抜てきされたようです。セリフはあまりないかもしれませんが、この1本で“億万長者”になってしまうかもしれません。渡辺さんがハリウッドデビューした『ラストサムライ』のギャラは5000万円と言われていたので、その金額を上回るかも。というのも、これまで米国では格闘技界で実績のあるファイターが、破格の扱いで役者デビューしているんです」(映画ライタ)

 例えば北京五輪の柔道・女子70キロ級銅メダリストで、総合格闘家に転身したロンダ・ラウジーは、シルヴェスター・スタローン主演のシリーズ「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」(14年)でデビュー。さらに日本でも人気シリーズの「ワイルド・スピード SKY MISSION」(15年)にも出演した。また、米国の格闘技団体UFCで2階級王者となったランディ・クートゥアも、同じく「エクスペンダブルズ」シリーズなどで俳優としてのキャリアを重ねている。

「スタントシーンはともかく、語学を学び、英語のセリフをマスターすれば、主演作の依頼が来る可能性もあります」(先の映画業界関係者)

 俳優サトシ・イシイとしての“第3の人生”は意外と明るい?

デイリー新潮編集部