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東洋医学の考えに基づき、五臓の働きを活性化させる「臓活(ぞうかつ)」を知っていますか。五臓と相性のいい食材やケアを日々の生活に取り入れ、健やかな体を目指しましょう(構成◎内山靖子 イラスト◎こやまもえ)

【図】五臓対応マップ。肝に合う味とは…

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自然の流れに合わせて調子を整える

東洋医学では、何らかの不調が表れたとき、体の内側にある「五臓」が疲れているサインだと考えます。五臓とは、生きていくうえで必要な体の働きを

「肝(かん)・心(しん)・脾(ひ) ・肺(はい)・腎(じん)」の5つに分類したもの。これは、西洋医学における臓器の概念とは異なります。

たとえば「腎」。西洋医学では腎臓を指しますが、東洋医学では、成長や生殖に関する役割を持つことから、「生命力のもととなる精(エネルギー)の貯蔵庫」と考えられているのです。

五臓は、全身に張り巡らされた「経絡(けいらく)」という道でつながっています。経絡を巡っているのは、人の体を構成する三大要素「気(き) =生命の源となるエネルギー」「血(けつ)=栄養や酸素を全身に届ける血液」「水(すい)=血以外の水分」。経絡の流れが滞ると気・血・水のバランスが崩れ、五臓にも影響を与えるため不調が生じるのです。

五臓が弱ったときに表れる不調の種類は、それぞれ異なります。代表的なものは以下の通りです。

【肝】イライラする、足がつる、寝つきが悪い、クマが目立つ

【心】口内炎、悪夢を見る、動悸・息切れ、疲れがとれにくい

【脾】下痢・軟便、お腹周りにぜい肉がつく、四肢がだるい

【肺】咳・痰、末端冷え症、乾燥による肌トラブル、花粉症

【腎】耳鳴り、腰痛、頻尿、下半身の冷え、薄毛・白髪

また、五臓は季節*の移り変わりに影響されます(次ページ「五臓対応マップ」参照)。たとえば、肝は春に活発に働くため、肝が弱っている人は春に不調を感じやすくなるのです。その期間は肝を重点的にいたわるようにしましょう。このように、自然の流れに合わせて五臓の調子を整えることを「臓活」と言います。

日中も睡眠中も休むことなく働き続けている五臓を活性化させるには、体の内側へアプローチすることが大切です。次のページから、毎日の習慣に取り入れやすい養生食「臓活おかゆ」と、経絡の詰まりを解消する「ツボ押し」を紹介します。

臓活は、すでに表れている不調を改善するだけでなく、予防のためにも欠かせません。ぜひ今日から始めてみませんか。

*東洋医学では、1年を「春」「夏」「長夏」「秋」「冬」の5つの季節に分類

おかゆ篇

おかゆは消化・吸収のいい食べものの代表格。さまざまなストレスで胃が弱っている現代人に最適な養生食です。私が提案する「臓活おかゆ」は、体調や季節に合った具材をおかゆに入れるだけ。体に不要な老廃物を排出しつつ足りない栄養素を補い、手軽かつ効率的に五臓の力を活性化させることができます。

胃が最も活発に働くのは、午前7〜9時の間。昼や夜に食べてもかまいませんが、朝食の時間帯に摂るのがおすすめです。また、おかゆだけではタンパクが不足してしまうので、卵焼き、焼き魚、納豆などのおかずを必ずプラスしてください。

五臓の働きを活性化させる食材は、「五色」と「五味」で見分けることが可能。肝なら緑色の野菜や酸味のある梅、レモンなど。また、旬の食材も五臓をサポートする

●基本のおかゆのつくり方

(1)米はよく洗い、たっぷりの水を入れて一晩(6〜8時間)浸水させる。翌朝、ざるに上げる。

(2)具材を一口大にカットする。野菜の皮には栄養があるのでなるべくむかない。

(3)鍋に米、分量の水を入れ、ふたをして中火にかける。沸騰したら、へらで鍋底をこそげるように混ぜる。ふたをずらし、時々かき混ぜながら弱火で約20〜30分煮る。

(4)具材を加えてさらに5〜20分ほど煮る。(時間は具材の種類に合わせて調整。硬い食材や消化の悪い食材は(3)で入れる)

(5)火を止め、最後に調味料で味をととのえる。


(イラスト◎こやまもえ)

『春』貧血や乾燥肌の改善に
【ほうれん草とまいたけのおかゆ】


(イラスト◎こやまもえ)

■《 材料(2人分) 》

・米…75g
・ほうれん草(3cm長さに切る)…75g
・まいたけ(小房に分ける)…15g
・塩…小さじ1/4
・水…600mL

ほうれん草は、春に活発になる「肝」の新陳代謝を促し、血を補います。貧血、便秘の改善、乾燥肌や目の充血予防に。まいたけは免疫力アップに効果的

●春のおすすめ食材
にら、春菊、菜の花、ちんげん菜、ブロッコリー、キャベツ、セロリ、梅、レモン、トマトなど

『夏』湿気の多い季節の体調管理に
【冬瓜と卵のおかゆ】


(イラスト◎こやまもえ)

■《 材料(2人分) 》

・米…75g
・冬瓜(皮を薄くむき、3〜4cm角に切る)…200g
・とき卵…1/2個分
・塩…小さじ1/4
・水…600mL

〈 調理のコツ 〉
・冬瓜は米と一緒に煮る
・とき卵は最後に加える

冬瓜は体内の熱を冷まし、むくみや余分な水分を取り除く働きが。そのため、湿気による夏バテを予防します。卵は喉の渇きを緩和するので、暑い季節にピッタリ

●夏のおすすめ食材
れんこん、きゅうり、きび、ゴーヤ、蓮の実、らっきょう、小豆、ごぼう、大根、牡蠣、スイカなど

『長夏』「脾」と連動する胃をサポート
【長いもとキャベツのジャスミンがゆ】


(イラスト◎こやまもえ)

■《 材料(2人分) 》

・米…75g
・ジャスミン(食用がなければお茶でもよい)…7g
・長いも(皮をむき、1cm角に切る)…40g
・キャベツ(2cm角に切る)…10g
・塩…小さじ1/4
・水…600mL

〈 調理のコツ 〉
・ ジャスミンはお茶パックに入れる。米と一緒に煮て、具材を入れる際に取り出す

消化促進作用の高い長いもとキャベツで、胃腸の荒れや食欲不振を改善。ジャスミンの香りが自律神経を整え、吸収した栄養分をスムーズに全身に運びます

●長夏のおすすめ食材
とうもろこし、かぼちゃ、大根、粟、豆類、なす、かぶ、アスパラガス、ごま、昆布、カツオなど

『秋』風の引き始めや予防に最適
【大根と生姜の出汁おかゆ】


(イラスト◎こやまもえ)

■《 材料(2人分) 》

・米…75g
・生姜(せん切り)…4g
・大根(1cm角に切る)…50g
・長ねぎ(薄切り)…7g
・香菜(2cm長さに切る)…7g
・塩…小さじ1/4
・水…600mL

〈 調理のコツ 〉
・ 大根、生姜は米と一緒に煮る
・香菜は最後にのせる

体に潤いを与える大根と、冷えを取り除いて気血の巡りを促す生姜で、「肺」の機能がアップ。冷たい秋風が吹く季節に起きやすい肌の乾燥、咳、喘息の予防にも◎

●秋のおすすめ食材
山いも、白菜、バジル、しそ、みょうが、香菜、こんにゃく、わさび、銀杏、いちじく、柿、黒糖など

『冬』スムーズな水分代謝を促す
【れんこんと昆布のおかゆ】


(イラスト◎こやまもえ)

■《 材料(2人分) 》

・米…75g
・れんこん(小さめの乱切り)…50g
・昆布…5g
・わかめ(ボイルして一口大に切る)…5g
・氷砂糖…小さじ1/4
・水…700mL

〈 調理のコツ 〉
・昆布は水に20分間つける
・ 昆布、れんこんは米と一緒に煮る
・昆布は最後に小さく切る

れんこんや昆布は、冷えで不足する血や体の潤いを補います。加齢による腰痛・膝痛や頻尿を改善するほか、体内の余分な熱を冷まし、イライラを抑える効果も

●冬のおすすめ食材
くるみ、栗、昆布、黒豆、黒ごま、米、もち、牛肉、ラム肉、ホタテ、ハマグリ、エビなど

ツボ押し篇はこちら