広汽アイオンのEVは、価格性能比の高さを売り物にして販売台数を伸ばしている。写真は10月に発売した新型セダン「アイオン S マックス」(広汽アイオンのウェブサイトより)

中国の国有自動車大手、広州汽車集団(広汽集団)は10月26日、2023年7〜9月期の決算を発表した。同四半期の売上高は360億6900万元(約7411億円)と、前年同期比14.4%の増収を確保。しかし純利益は15億4500万元(約317億円)にとどまり、同33.2%の大幅減益となった。

広汽集団の純利益の大部分は、日本メーカーとの合弁会社である広汽トヨタと広汽ホンダの2社が稼いでいる。大幅減益の主因は、これら合弁ブランドの販売不振にほかならない。

2023年1月から9月までの累計販売台数は、広汽トヨタが68万5800台と前年同期比10.3%減少、広汽ホンダは43万5800台と同23.9%減少した。

2024年に広汽ホンダを逆転も

合弁ブランドの低迷とは対照的に、ここにきて販売台数が急増しているのが、EV(電気自動車)を主力とする広汽集団の独自ブランド「広汽埃安(広汽アイオン)」だ。

広汽アイオンは1月から9月までの累計販売台数が35万1000台と、前年同期比93%も増加。2022年の同期間には、広汽ホンダと広汽アイオンの販売台数には39万台の開きがあったが、2023年はそれが8万5000台に縮まった。

この勢いが続けば、広汽アイオンの販売台数は2024年にも広汽ホンダを追い抜き、広汽集団傘下のブランドのなかで広汽トヨタに続くナンバーツーに浮上する可能性がある。

広汽アイオンのEVは価格性能比の高さを売り物にしている。最量販車種の小型セダン「アイオン S」は希望小売価格が13万9800元(約287万円)からで、1月から9月までの累計販売台数が18万2000台余りに達した。

10月には車内空間を広げた派生モデル「アイオン S マックス」を投入し、さらなる販売増加を目指している。


広汽集団は広汽アイオンの生産能力増強を急いでいる。写真は2022年10月に稼働した新工場の生産ライン(広汽集団のウェブサイトより)

それだけではない。広汽集団の説明によれば、(EVの製造コストの3〜4割を占めるとされる)車載電池の原材料価格が下落した恩恵を受け、広汽アイオンの営業損益は6月から黒字に転換。粗利率が月ごとに改善しているという。

三菱自の旧工場を継承

広汽集団は、広汽アイオンの販売目標について2023年に50万台、2025年に100万台という高い数値を掲げている。これを実現するため、同社は生産能力の増強投資に余念がない。


本記事は「財新」の提供記事です

10月24日には、日本の三菱自動車の中国市場撤退に伴い、同社との合弁会社である広汽三菱を完全子会社化すると発表。広汽三菱が湖南省長沙市に持つ工場を広汽アイオンが引き継ぎ、既存工場と合わせた生産能力を年間60万台に引き上げるとしている。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は10月27日

(財新 Biz&Tech)