チャンピオンズリーグでミランが敗れた試合をサンシーロで観戦した後、記者会見場に足を運べば、ひな壇に座る時のミラン監督、アルベルト・ザッケローニは記者団から集中砲火を浴びていた。「辞任するべきだ」等々、ボロクソに叩かれていた。その何年か後、日本代表監督の座に就いたザッケローニは日本人記者に対し、オシム同様の不満を覚えたに違いない。日本が強くない原因を、記者会見場の風景に見いだしていたと推察する。

 問題はそうしたぬるま湯の中で育った日本人監督だ。批判したことがないメディアと、批判されたことがない監督。その間に漂う独特の空気に会見場は支配されている。その国のサッカー偏差値を構成する要素は、相殺しあう関係にあると先述したが、森保監督と取り巻く記者の関係は、さらにその周辺の要素までレベルダウンに導く力を秘める。

 そうした中で救世主に見えるのはJリーグにいる何人かの外国人監督になる。たとえば先週の土曜日、味スタでFC東京と対戦した浦和レッズの新監督、マチュイ・スコルジャだ。試合後の会見では、サッカーの芯を食うような台詞を耳にすることができた。4-2-3-1の前の3の左を担当する大久保智明と、その1トップ下で先発した小泉佳穂が、試合の途中でポジションを入れた件について、質問が飛ぶとこう答えた。

「小泉と大久保がポジションを入れ替えてプレーしてもいいことになっている。大久保がトップ下に入ると小泉とはまた違ったプレーをします。今日の試合ではミドルゾーンで少し苦しい時にポジションを入れ替わり、違った形を作っていた。私にとってそれは自然なプレーであり、将来的には1トップ、1トップ下、両ウイングの4人がポジションを入れ替えてプレーすることを目指します。前の4人はいずれもオールラウンダーで戦っていきたい」

 それは選手の判断で動くのか、監督の指示で動くのかと更に問われるとこう答えた。

「私の指示で入れ替わることもあれば、選手の判断で入れ変わることもある。重要なのは4つのポジションの役割を全員が理解していることです。それは攻撃のみならず、プレーし終わった後の守り方の話でもあるので、トレーニングキャンプ中もこのポジションではこういう守り方をする、ということを全員が理解できるように話しました。ですから私の指示がなくても、それぞれのルールを理解していれば、自分たちで入れ替わっても問題は全くない」

 目からうろこが落ちるほど特別な台詞ではないが、森保監督の口からは、まず出てこない種類の話だ。浦和の新監督の方が高いレベルにあることが一目瞭然となる納得度の高い台詞だった。

 対するFC東京のアルベル監督も、選手交代5人制について意見を求められると、待ってましたとばかり持論を明瞭な言葉で展開した。

「サッカーをエンターテインメントと捉えたとき、5人と言わず6人にした方がいい。ベンチ入りのメンバーも現状の18人では選択肢が限られるので、更に増やすべきである」

 Jリーグの監督が正式な会見の場で述べる台詞にはそれなりの重みがある。波及効果が期待できる。サッカーについて考えるいい機会になるのだ。耳にしたファンの造詣は自ずと膨らむ。すなわち日本のサッカー偏差値は上昇する。

 筆者はそこに一国の代表監督に欲したくなる資質を見る気がするのである。