左が石川遼の2019年のトップ・オブ・スイングで、右が2022年のもの かなりコンパクトになった(撮影:ALBA)

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ちょうど15年前の2008年1月10日に16歳でプロ転向した少年は、「世界一」を目指して2020年3月から大幅なスイング改造に踏み切った。30歳で迎えた石川遼プロの2022年はその道の険しさを感じさせる滑り出しとなりました。
約3年で別人に!? 石川遼のスイング大改造ビフォーアフター【連続写真】
開幕戦の「東建ホームメイトカップ」では、2日目に「75」とスコアを落として、カットラインに1打届かず予選落ち。続く「関西オープン」では、優勝がトータル14アンダーのなか、トータルイーブンパーの30位タイ。そして次戦の「ISPS HANDA 欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!」では、バーディ合戦にまったくついていくことができず、カットラインに6打届かずトータル1オーバー・123位タイで予選落ちを喫しました。
この試合ではトータル5アンダーのカットラインに対して、石川プロが2日間で奪ったバーディ数はたったの3つ。ティショットでは安定感を見せたものの、グリーンを狙うショットの精度を欠き、方向性も距離感もバラバラでした。予選ラウンド2日間を終えた時点で、トップはトータル12アンダー。最終的な優勝スコアがトータル24アンダーだったことを考えると、オーバーパーではまったく勝負になりません。
実はこのアイアンショットの不調は、そのスイング改造によってクラブが合わなくなっていたのが原因でした。「いままでは切り返しが早かったので、そのスピードでしなりを生んでいました。いまは切り返しを静かに行っているので、軟らかくしました。振りやすくなってタイミングも合っています」と、ISPS−で予選落ちした翌週の「中日クラウンズ」からアイアンのシャフトのフレックスを“X”から“S”に変更。2010年には「58」をマークして優勝した大会で7位タイに入りました。
以前はバックスイングの反動を利用してクイックに切り返すタイプでしたが、いまはトップでしっかり間を取ってゆっくりとダウンスイングに。スイングの形だけでなく、タイミング自体も変わったのです。スイング改造前の19年と、改造後の22年の石川のスイングを、プロコーチの奥嶋誠昭氏に見てもらったところ、「切り返しで勢いをつけていたときよりも、効率が良くなったと思います。シャフトが暴れなくなった」と話しています。それにより、「ガチガチの硬いシャフトでなくても良くなった。暴れ気味の人は硬いシャフトしか使えませんからね」とも。軟らかいシャフトへの変更は、スイング改造がいい方向に進んでいることを示していたわけです。
中日クラウンズ以降は、コンスタントに予選通過をするようになり、8月の「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」では4位タイ、9月の「フジサンケイクラシック」ではサンデーバックナインで1イーグル・4バーディの猛チャージを見せて5位タイ。そして同じ9月の「ANAオープン」では、大槻智春プロにプレーオフで惜しくも敗れて2位に。スイングの再現性が高まったことでスピードを上げていく段階に進み、ゴルフの内容的にも3年ぶりの優勝は目前に迫っているように見えました。ところが9月の「バンテリン東海クラシック」2日目の4ホールを終えたところで腰痛により棄権。翌週は欠場し、10日間はクラブを握らず治療に専念せざるを得なくなったのです。
3週間ぶりに復帰した10月下旬の「日本オープン」では予選落ち。スイング改造に手応えを感じていた矢先に腰痛を発症し、「戻ってしまった」と石川プロは肩を落としました。22年シーズンはこのまま終わるかに思われましたが、11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で再び優勝のチャンスが巡ってきます。4日間60台を並べて、トータル8アンダーで星野陸也プロとのプレーオフに突入。2ホール目にバーディを奪い、ついに3年ぶりとなるツアー18勝目を挙げたのです。
優勝インタビューでは「スイングに関しては、ここから見た目的にほとんど変わらないと思います。あとは自分の感性、『当て勘』を吹き込んでいく。フェアウェイバンカーからクリーンに打つことだったりとか、スライスで大きく曲げたりということも、新しいスイングプレーンのなかで徐々にコントロールできるようになってきている」と話していて、3年にも及ぶスイング改造は最終段階まで来ました。
石川プロ同様に片山晋呉プロも今年のシニア入りに照準を合わせて、19年からスイング改造に着手。「3年間はスイングだけ。振り方だけ。それが全部合わさって、球のイメージ、距離感が全部入ってようやく。4年かかった」と昨年語っています。石川プロも今年がスイング改造から4年目。昨年のVISAは耐えるゴルフで優勝しましたが、『当て勘』に磨きをかける今年は、ショットでビタビタチャンスにつけて、バーディ合戦で勝ちきる姿が見られるかもしれません。(文・下村耕平)
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