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これが、日本の、カジノだ!

すごいものを見ました。IR統合型リゾートの完成を待つまでもなく、日本にカジノはあったのです。華やかな世界に咲き乱れる男と女と色と金。こんなに夢中で写真を撮ったのはいつ以来でしょう。見栄えしかない、そう断言して差し支えのない世界がそこには広がっていました。PIST6、ミクシィがモンストマネーを注ぎ込んで生み出した大人の社交場。そこには一見の価値がありました。

↓まるでCGみたいですよね?これは千葉のどこかに存在する「現実」です!


千葉に存在する夢の国はふたつ!

ひとつは東京ディズニーリゾート!

そしてもうひとつはPIST6です!



そもそもPIST6とは何ぞや、ということから説明が必要な方向けに簡単に説明すると、要するに競輪です。ただ、従来の競輪とは少し趣が異なります。従来の競輪が「同期」「同地区」などの人間関係をベースにラインと呼ばれる協力関係を結んで行なう即席のチーム戦であったのに対して、このPIST6は五輪の自転車競技のように個々の身体能力で競う個人戦スポーツです。よりスポーツ風味になった競輪と思っていただけるとよいでしょう。

廃業寸前であった千葉競輪場を建て替えて作った1周250メートルの木製バンク。そこを6車で走り、その順位を競うという単純明快な形式は、初めて観戦する人にもわかりやすいもの(※従来の競輪がわかりにくいだけ説もあるが)。将来的には五輪を見据えたナショナルチームがこの競技から巣立っていくようなことも起こるでしょう。

ただ、それだけではありません。その新競技に食いついてきたのがモンストマネーの再投資先を探すミクシィでした。昨今ミクシィは競馬・競輪などの公営ギャンブルや、野球・サッカーなどスポーツビジネスに食指を伸ばしています。テレビCMで流れる「チッ、チッ、チップスター」という歌、あれもミクシィが手掛ける競輪車券販売アプリの告知。競馬・競輪・野球・サッカーといったスポーツにスマホゲーの皮を被せ、高収益を狙おうというのがミクシィの次の一手なのです。

その柱となるのが、このPIST6。

ミクシィは会場自体を「TIPSTAR DOME CHIBA」と自らの名前をつけてプロデュースし、さらにこの競技の車券販売は自らのアプリ「TIPSTAR」によって独占しています。公営ギャンブルの一角に、間借りではあるものの自分自身のギャンブル屋をオープンしたのです。そこには従来の競輪界とは完全に距離を置く、独自の世界が広がっています。文字通り「カジノ」としか呼べないものが。

↓千葉県のどこかにある「TIPSTAR DOME CHIBA」、ここが日本のカジノです!


観戦のために僕が向かったのは千葉モノレール・千葉公園駅。ここから徒歩2分ほどの距離にTIPSTAR DOMEは存在します。ごく普通の公園を突っ切り、子どもたちが遊具で遊ぶ姿を見ていると、本当にこの先に競輪場などあるのかと不安になるような道中。前にも後ろにも人がおらず、不安は高まります。しかし、公園の奥には真新しい巨大建造物が。ロクに車も通らないのに周辺には警備員などが張り付いているアヤしいその建物こそが、TIPSTAR DOMEでした。

入口らしき場所に向かうとバイト風の若者が待っており、しばし待たされます。僕のほかに集まった人はまだ数名ほど。頭に浮かぶ最初の質問は「本当にココで何かやってるんですか?」というものでしたが、おそらく周囲の人も皆そうだったことでしょう。のちに場内で目測したところ、この日やってきた観衆は100名強だったようですが、「競輪場に100名」はいくら何でも少な過ぎて不安ですからね。

↓開場20分前の入口はこんな感じ。とても何かが始まる気がしない…。



しかし、その不安はなかに入ると一変します。なかにはたくさんのスタッフがおり、ロビーは色鮮やかなアートで彩られ、美しきダンサーたちが観客を出迎えてくれていたのです。ヨドバシで買えば1500円はしそうなペンライトを応援グッズとして手渡される大歓待。あまりの桃源郷ぶりに浮かんだ次の質問は「コレって非合法の地下組織のヤツですか?」というものだったほど。外となかとで空気が違い過ぎます。

↓大歓待で出迎えてくれたダンサーのみなさん。



なかに入ると「まずバンクウォークに行きなさい」と案内されます。アヤしいトンネルをくぐって案内された方に向かえば、そこはすでに競技会場でした。しかし、思っていた光景とはだいぶ違います。赤紫色の光が空間を満たし、あらゆる場所からレーザー光が降り注いでいます。天井からは無数の光線を放つミラーボール。そこかしこで煙が噴き出し、マックスドガチャガ状態です(※最大級にドガチャガしているの意)。

僕もそれなりにさまざまなイベントを経験し、レーザーやらライトやらは経験してきましたが、これほどの圧倒的な光の物量を感じたのは初めてでした。「これ本当に自分の目で見えている光なのかな?」と疑ったほどです。空間に何百本もの光の線が走る光景はそれほど圧倒的でした。これほどの光で満ちているのなら、事前に「※光の点滅で不調を感じる方は入場をお控えください」みたいな注意書きが必要なんじゃないかなとさえ思いました。

↓この画像、何の加工もしてないですからね!リアルにこうなんです!






どうやらこの日は競技開始前に「バンクウォーク」というイベントをしているそうで、自転車が走る木製バンクのなかまで立ち入ることができました。木で作られたバンクを散歩のように歩く時間。その間も先ほどの写真のような光が四方八方からあふれ、爆音で洋楽が鳴っています。そんななかで差し掛かったコーナーには、壁そのものであるバンクがそそり立っています。上から見ているときも「急だな」とは思いましたが、下から見ると到底登れるようなものではありません。ほんのふもとを何歩かのぼるだけでも、身体が下に引っ張られます。

バンクをのぼったりおりたり、直線走路を歩いてみたり。光で映る自分の影を記念撮影したり。とにかく、どこもかしこも目新しく写真映えする場所ばかり。周囲の参加者もバンクを何周もしながら撮影に励んでいました。そもそも自転車競技用バンクにのぼる機会など、一般人には基本的にないわけですから、それだけでも十分に価値ある体験でした。

↓どう見ても壁!そそり立つバンクを下から見られる!



↓直線走路もほんのりと傾いています!



面白いのはこの会場の作りです。バンクがあって、その周囲に観客席があるのは当然ですが、このバンクの内側にもラウンジが設けられています。外周部の観客席はいわゆるチケットで買う指定席で、バンク内側のラウンジはフリースペースという扱い。入場者は誰でもバンク内側のラウンジに入り、レースを内側から観戦することができるのです。

ラウンジには大きなソファーセットがいくつも並び、情報を表示するモニターや、フード・ドリンクを販売するキッチンカーまで用意されています。ソファーで飲み食いしながらお金を賭け、レースを見る。「自分で買ったスポーツ新聞を広げて床に座り、テイクアウトの牛丼を食べる」といういつもの光景を思い浮かべると天地ほどの差があります。JRAの競馬場もまぁまぁキレイではありますが、それでも比較にならないようなゴージャス感があります。

↓バンク内側のラウンジスペース。こんなソファーセットがたくさんある。



↓ホットドッグなどを販売するキッチンカーがスタンバイ。



さらに施設散策はつづきます。場内の主な施設としては、ほかに売店と軽食スペースがあります。売店ではPIST6グッズを販売しており、デザイン的にも頑張っています。特に買いはしませんでしたが、買ってもいいかなと思うくらいには仕上がっていました。軽食スペースはラウンジ内キッチンカーに加えて、入場ロビーにあるホットドッグ店、スタンド席に併設された「TIPSTAR BAR」、そしてスタンド下に設置されたピザ店「ORANGE&PIZZA」がありますが、どれもなかなかイイ感じ。

500円程度のフードと300円程度のドリンクを頼むのが基本セットかなと思いますが、相場感覚としては「映画館のフードくらいだな」というところ。周辺地域にはお店がないこともあって、ここまで来たなら十分に手が出るメニューたちでした。僕もスタンド席に併設された「TIPSTAR BAR」でフードとドリンクをいただきましたが、味・値段・体験と総合的にアリだなと思いました。ギャンブルをしながら食べて飲むというのは、なかなかゴージャスな気持ちになるものですね。

↓ロビーにはこうしたアートが彩りを添える。



↓売店では公式グッズやTシャツなどを販売。



↓軽食スペース「ORANGE&PIZZA」。オレンジのスライスを並べたピザが自慢とのこと。



↓スタンド席上層にあるのが「TIPSTAR BAR」。観戦しながら飲食ができる。



↓オシャレな雰囲気。



↓フィッシュ&チップスとコーラのセットで880円。



↓ちなみにトイレも「とてもキレイ」な最新式でした。


トイレにはおむつ台の設置もあり、授乳室、多機能トイレの用意も!

また、どうしても吸いたい人のために加熱式たばこ専用の喫煙室もありました!



こうした売店等での決済が現金以外に限られるのも、思い切った設定だなと思います。施設内でのフードやグッズの購入は完全キャッシュレスとなっており、車券そのものもアプリ経由での購入ですのでこちらもキャッシュレス。この施設では現金を1円も使いませんし、使えません。逆に言えば、なけなしの1万円を持って夢を買いに来ても買えないのです。(※なので、スマホの電池切れ対策のため、場内には有料のレンタル充電器がある)

これはおそらく従来の競輪客を遠ざけるための施策でしょう。スマホ、クレカ、アプリ、ネットバンクなど「持ってなさそう」なものを壁として用意し、さらに「今日勝っても現金を持ち帰れるわけではない」「他場の車券は買えない」「もちろん払い戻しもない」ことで従来客を遠ざけることに上手く成功しているなと思います。まぁ、その結果が目測100人という閑古鳥であるというのも事実ですが。

さて、すでにお腹いっぱいな感じもありますが、まだこれはレース前の散策の段階。ここからの体験はさらに「カジノ」でした。まず競技開始前のオープニングイベントがヤバい。一流アーティストのツアーファイナルか、世界規模のイベントの開閉会式かという勢いで、光と煙と炎がバンバン飛び交います。先ほど入口で出迎えてくれたダンサーたちもバンク内側で踊りまくり、それを観衆は間近で体験することができます。バンク内側のラウンジにいれば、まさに「目の前」で。公営ギャンブルの入場料としては2000円は高めの設定ですが、ここまでお祭りをやってくれるなら納得です。

↓何のオープニングイベントだよ、コレ!


「どんだけモンストは金あるんだ」
「100人相手にやるイベントじゃないぞ」
「花火の音がでけーよ!ビックリした!」
「花火2発あんのかよ!ビックリした!」
「え!?こんなにやって、まだつづくの!?」
「ほえーーーーーー」

写真だけ見て「競輪!」って当てられる人、いますかね!

一応自転車も写ってはいますけど!

ようやくレースが始まるわけですが、ここからもまぁ派手派手派手。DJ風の場内実況が選手をアメリカンな感じで紹介すれば、毎レースごとにダンスチームは踊りのパフォーマンスを披露しますし、選手入場は総合格闘技のメインイベントのような煙と光と爆音の嵐のなかで行なわれます。上空にはやたらと発色のいい高輝度大型ビジョンも据えつけてありますし、音楽はずっと景気よく鳴っていますし、全身の感覚が刺激されまくります。

選手の顔を望遠レンズで拡大したときだけ、「あ、競輪」と我に返りますが、基本的にはまったく違うものを見せられている感覚です。これは自宅で配信を見ているときには感じなかったもの。配信だけ見ているとドガチャガした競輪だなーと思っていましたが、現地で見るとそのドガチャガこそが本体であり、その素材のひとつが競輪なのだと感じさせられます。「刺身の舟盛り」のゴージャス感は船や飾りがあってこそのものであるように、競輪という素材を使って新しいドガチャガを生み出した、そういうコンテンツととらえるべきでしょう。それはまさに「カジノ」と呼ぶべきものだろうと僕は思います。

↓毎レースごとに踊るダンスチーム。



↓ダンスチームはスタンドで応援の盛り上げも行なう。



↓後光が差して「神」みたいに出てくる競輪選手たち。



↓選手の登場でいちいち炎が上がる。



↓この会場が一番静かで薄暗くなるのはレースをやっているときです。



当初は堅いレースばかりがつづいて、還元目当ての大量購入などでも話題になったPIST6ですが、ある程度選手たちも慣れてきたことで、予想通りの決着にもならなくなってきました。周回距離が通常の競輪の4分の3程度であることから、駆け引きの比重も少なく、スピード感あふれる競り合いが見られます。何やかんや言って、目の前をすごいスピードで走るものを見ているのは楽しいです。すごいなーと思いますし、速いなーと感心します。

よく競馬では「この負けは観戦料だから」と意地を張るケースがありますが、ここまでド派手に演出されたお祭りであれば、本心から「負けは観戦料」と思ってもいいでしょう。まぁ実際には、ミクシィからもらったマネーを賭けて、賭けたぶんとトントンぐらいの円に変換しましたので、総合的にはプラスなのですが、お金払ってもいいなと思ったのは本当です。普通の自転車競技とかもこれぐらいやったらいいんじゃなかろうかと思うほどです。

ただ、こんなお祭りが見られるのは短い期間だろうと思います。何せ、観客100人ですから。どうやったって会場運営の費用を賄えるはずもありませんし、肝心のレース自体の売り上げも大したことがないのが実情です。従来の競輪客は従来の競輪を買うわけで、PIST6はPIST6が好きなお客を集めないといけないのですが、まだまだそこまでの知名度も人気もありません。入ってくるお金がない以上、いつかどこかで縮小に舵を切ることになるでしょう。「100人しかいないのに、花火いる?」「100人しかお客いないのに、100人スタッフいるのおかしくない?」と僕でさえも思います。

ただそれでも、現時点では確かにここにカジノはあります。すごく楽しそうで、ギラギラしていて、ゴージャスな空間が現実に存在しているのです。ミクシィが意地を張っている間だけ見られるひとときの夢だと思って、見に行ってみてはいかがでしょうか。ミクシィの意地が崩壊寸前なのか、12月26日までの期間中「チケット代が66%オフになるクーポン」を公式サイトで配布中です。これを使えば2000円の入場料が700円ほどになります。700円なら見てみてもいいかなーって気になりますよね。話のタネがありまくるので、700円はお得だと思います。

↓通常2000円の指定席が約700円で買えるクーポンが新規登録者に配布中!



↓通常5000円の高級指定席も1700円になるが…まぁ…値段ほどの差はないので買わなくていいと思います…!



といった話やレースの模様を動画でもご紹介しておりますので、ぜひ見てやってください。たぶんこのドガチャガ感は写真よりも動画のほうが伝わるでしょう。数年後には、赤字運営によりこのドガチャガ感はなくなっていることでしょうが、「昔はこんなに景気よかったんだなー」と懐かしく振り返れる映像になっていると思います。ビガッビガが凄いので、明るい部屋でモニターから離れて見るようにしてくださいね。

↓これが新競輪PIST6のカジノの様子です!


暴力が支配する世界で一番栄えている街ってこんな感じなのかなーと思いました!

見たい人はなくなる前にどうぞ!

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ミクシィが社会貢献のためにお祭りをやってくれている、そう思いましょう!