「オーバーシュート」

「ロックダウン」

「ステイホーム」

 新型コロナウイルスに対して最も危機感が強い高齢者には理解しづらい横文字を並べ立て、まるで犬のトレーナーにでもなったかのように都民に命令し続ける小池百合子都知事(67)。まだ都としての具体的な方針が定まっていない段階から「感染者数を発表するだけ」のために記者を集め、不要不急の会見を繰り返した。

 若手の鈴木直道・北海道知事(39)がいち早く道民に外出の自粛を要請し、吉村洋文・大阪府知事(44)も、重症者と軽症者を振り分けて隔離するトリアージなどを提案。次々と実行に移す中、当初、東京都は対策に積極的ではなかった。

「東京五輪の中止を恐れていたからですよ。下手に対策に力を入れると『東京=ウイルスの蔓延地帯』というイメージがついてしまう。実際、人出が増えることが予想された3月20日から22日の3連休も、都は何も対策をとっていませんでした。ところが、23日に五輪が“延期”と決まった途端、ロックダウン(都市封鎖)、ロックダウンと言い出したのです」(社会部記者)

 2016年の都知事選では、自民党と対立しながらも都民の圧倒的な支持を得て当選。“小池フィーバー”を巻き起こし、『都民ファーストの会』から『希望の党』を立ち上げ、一時は安倍政権打倒も夢ではない勢いだったが、合流を求めた旧民主党の一部議員を「排除いたします」と笑顔で一蹴し、人気が急落。誰にも相手にされなくなっていた。
「東京五輪のマラソンが札幌開催になることが議論され始めると、反対の立場を強く表明することで再び脚光を浴びた。しかし、年明けから新型コロナウイルスが猛威をふるい、東京五輪の開催自体が危ぶまれるようになると意気消沈していました。あのまま東京五輪が中止になっていれば、小池さんの力不足だと批判が集中し、7月の都知事選で惨敗するはずです」(前出・社会部記者)

 ギリギリのところで「1年延期」を勝ち取ると、一気に攻勢に転じた。

「もともとキャスターだった小池さんは、どうすればテレビや新聞に取り上げてもらえるかを熟知しています。そのため、『オーバーシュート(爆発的感染拡大)』や『ロックダウン』という見出しになりやすいセンセーショナルな言葉を連呼しているわけです。この作戦がピタリとハマり、いまやテレビの露出度は安倍首相をはるかに超える勢いです」(政治部記者)

 なにやら失言前の“小池劇場”再び、といったムードで、永田町や霞が関は警戒態勢に入っている。

「現行法では不可能に近いことを知りながら、ロックダウンという言葉を繰り返す小池さんを見て、さすがに政権中枢からも『国民がパニックに陥るじゃないか!』と怒りの声が上がっていました」(同)

 しかし、一度調子に乗った小池都知事は誰にも止められない。4月10日には、都内の飲食店での酒類の提供を夜7時までとする要請と同時に、休業に応じた事業者に最大100万円を支給するとブチ上げたのだ。

「休業補償に踏み切れず、1世帯にマスク2枚しか配れない無能な政府に対して、強烈なカウンターパンチとなりました。麻生太郎財務大臣は、『東京都は払うだけの資金を持っているんだろう。ただ、他の県でもそれをやれるのかね?』と嫌味を言うのが精一杯でした」(前出・政治部記者)

 そもそも休業の要請は、法律で都道府県知事に権限が与えられているはずだったが、政府が〈国と協議の上〉との一文を追加することで、小池都知事の“暴走”を牽制していたのだが…。

「これを受け、小池さんは『権限は、代表取締役社長(知事)かなと思っていたら“天の声(国)”が色々聞こえまして、中間管理職になったような感じ』と不満をにじませていました」(都政担当記者)