飛騨の森で続々産業創出!東京では得がたい価値
ロフトワークは来店者が3Dプリンターを使ってモノづくりができる「ファブカフェ」を世界10拠点で展開する。他にもデザイナーやクリエーター(創作者)と企業との交流やアイデア創出の場を提供している。
ヒダクマが扱う広葉樹は色や形がふぞろいで、工業製品には不向きというのが常識だ。だが、岩岡孝太郎ヒダクマ社長は「先人が知っていた木の機能に着目した」と語る。抗菌性や耐水性などの持ち味を生かすと、調理器具や食器など適材適所の使い方がある。「デザイナーの視点を与える」(岩岡社長)ことで、意匠性のある商品もできる。
くつろげるオフィス家具を求める都市部の企業から注文が増え、「倍々で仕事が増えている」(同)。当初の木材の扱い量は年1立方メートルだったが、19年は50―60立方メートルとなりそうだ。製作を依頼する業者も飛騨市内を中心に70社まで増えた。
ヒダクマが都市に集中する創作者や顧客と地方を結びつけた。そして地域資源の広葉樹を商品に変え、地元70社に新しい仕事をもたらした。売上高は小さいかもしれないが、地域経済に大きな貢献をしている。
ワクワクが魅力
「予定調和でなかったから、ここまできた」。ロフトワークの林千晶代表はヒダクマの軌跡を語る。当初、会社設立に乗り気ではなく、飛騨市役所などの誘いを受け「旅行気分で行ってみよう」と出かけたという。冬、飛騨の民家で解凍した山菜を食べた時、全国から運ばれる野菜をいつでも購入できる生活は「東京ルール」と実感した。そして「東京では得られないものがある」と魅了され、進出を決めた。
岩岡社長は「国内の都市にファブカフェを出店しても渋谷のコピーになるだけ。飛騨なら違うものになると想像するとワクワクした」と振り返る。飛騨の古民家を改修したヒダクマのファブカフェは宿泊ができる。海外から建築やデザインを学ぶ学生など年200人が訪れ、宿泊もするので飛騨の魅力を世界に伝える役割も担う。
ヒダクマは起業の成功条件を満たしていなかったが、林代表は「おもしろいことができる」という意欲が原動力だったとする。ヒダクマは地域課題解決ビジネスを目指す企業や起業家に多くのヒントを与えている。
