リバプール対バルセロナ。
 アヤックス対トッテナム。 

 2試合ともまれに見る好試合となったチャンピオンズリーグ(CL)準決勝だが、連続して発生したこの2つの大逆転劇を、映像を通して同時体験した人はどれほどいるだろうか。キックオフの時間はそれぞれ午前4時。時間遅れで見た人も少なくないと思われるので、2試合をフルタイム観戦した人という言い方に変えてもいい。

 それができた人とスポーツニュースやネットのダイジェスト版などでしか観戦していない人との差が、感激度という点において、ここまで大きかった試合も珍しい。サッカー大好き人間にもかかわらず、見逃してしまった人は意外にも多くいる。お気の毒様と言うしかない。

 逆に、サッカーファンでない人が偶然この試合を観戦したら、一瞬にしてサッカーの虜になっただろう。サッカー好きになる理由は様々だろうが、選手経験がない人にとって、面白い試合との遭遇は、きっかけの中でも上位に位置することになる。

 かつて、その役を果たしていたのが「ダイヤモンドサッカー」だ。日本に海外サッカー好きを大量に発生させることになった名物番組である。そこで見た欧州を中心とする海外の試合が翌日、学校で話題になることはよくあった。たまに放送される日本リーグや日本代表戦より断然、見逃せないものとして通っていた。

 いま、サッカーを手元で観戦しようとすれば、DAZNへの加入が必須になる。JリーグはNHKのBSでもたまに放送されるが、CLは完全なる独占放送だ。スカパーが放映権を持っていた頃は、重要な試合は地上波でも放送されていたと記憶するが、現在はDAZNのみ。その加入者数は推定で100万人台とされている。スカパーの加入者が約280万人といわれているので、視聴可能な人数は、放映権の移行により確実に半減したことになる。

 DAZNは若者のテレビ離れが進み、映像をスマホで見る時代になったとされるいま、今日的で最適な視聴手段のように映る。しかし加入者は思いのほか少ない。その数がこの先、驚くほど伸びることもなさそうである。メジャーかマイナーかで言えばマイナーだ。大衆向けと言うより好きな人向け。既存のファン向けだ。オタク向けとまでは言わないが、一般人が入りにくい閉ざされた領域になっている。CL観戦するためには、それなりの手続きを踏む必要がある。サッカーに特段関心がない人は、偶然そこに辿り着きにくい。「ダイヤモンドサッカー」との違いだ。DAZNしか視聴方法がない現状では、CLファンは増えていかない。

 この傾向はスカパーが放送していた頃も同じだった。世界を旅した印象では、日本はCL観戦者の割合が圧倒的に低い国のように見えた。大衆への浸透度、関心は低い方に属した。好きな人とそうではない人との間に大きな隔たりを感じた。そしてその傾向はスカパーからDAZNに変わったいま、さらに加速している。

 張本サンと言えば、毎週日曜の朝、放送されている名物番組「サンデーモーニング」のスポーツコーナーで「喝!」を出す、辛口の意見番として知られるが、CLにはかねてから関心がない様子だった。

 今回も例外ではなく「遠い国のサッカー、どうでもいいじゃない」と一言。CL準決勝に酔いしれた人と著しく乖離した態度を取った。とはいえ、世の中には張本サンのようなタイプの人が存在することも事実なのだ。その一言を抵抗なく受け入れた人は少なくないと見る。

 張本サンはおそらくDAZNにも、かつてはスカパーにも加入していなかったのだろう。簡単に目に触れる環境になかったことも、食わず嫌いを助長させる原因になっていたと見る。もし、先日の準決勝をたまたま、見ることができていれば話は違っていた可能性がある。そう言いたくなるぐらい、このCL2試合は面白かった。