衆院国土交通委員会は14日、耐震強度偽装問題で姉歯秀次元1級建築士の証人喚問を行った。過去2回の参考人招致を欠席していた姉歯氏は、今回は出頭。偽装を始めたきっかけや理由について「一番最初の偽装は1998年ごろだったと思う。木村建設の篠塚明元東京支店長から『鉄筋を減らせ』と再三にわたりプレッシャーがあった。最初は『できない』と思っていたが、妻も入退院を繰り返し、仕事を断られると収入がゼロになる。弱い自分がいた」と明らかにした。
 
 偽装が始まった経緯に関する渡辺具能議員(自民)の質問に対して、1998年のグランドステージ池上(東京都大田区)の物件で正規の図面を提出すると、篠塚元支店長から「『鉄筋が多い。これじゃ(予算に)合わない。減らしてくれ』と言われた。これじゃ無理ですと何度も言ったが『予算に合わない』と言われた」と証言した。

 また、鉄筋を減らす具体的な数値を記した一覧表を提示されたことや「ほかにも設計事務所はたくさんある」などと圧力をかけられたことも明かした。篠塚元支店長は法令違反を認識していたか、との高木陽介議員(公明)からの問いには「私の『これ以上できません』との言葉の中には、そういう意味が含まれている。十分認識はあったと思う」と述べた。

 偽装を続けていた心境について問われると「1級建築士の誇りがあって、最初は『できない』と思っていた。しかし病気がちな妻が入退院を繰り返していた。仕事は木村建設から9割を受けており、収入が限りなくゼロになる。本来やってはいけないと分かりつつ、弱い自分がいた」と告白した。

 構造計算書改ざんを見破った、アトラス設計の渡辺朋幸社長に図面の不備を指摘された会議に、総合経営研究所の四ヶ所猛氏や平成設計の担当者、篠塚元支店長、姉歯氏らが同席していたことを証言。吉井英勝議員(共産)から「数値の改ざんを周りの人間は意図的とみたか」との質問に「法令に触れていると直接は言ってないが、暗黙の中で理解していたものと思う」と述べた。

 また偽装手口は自ら考えたと述べ、「構造のプロなら図面を見ればすぐわかる。(偽装方法は)単純な内容なので民間確認機関に出した時点でばれると思った」と述べた。三日月大造議員(民主)からの「イーホームズの検査はどう甘かったか」との質問には「明らかにイーホームズは通りやすかった。というか、見ていないのが実情」と述べた。

糸川正晃議員(国民新党)から責任の所在に関して聞かれると「構造計算書を偽造した私に責任はある。ただ、全体で見る限り私一人でできることではない」と述べた。【了】

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