磐田戦では主戦場のボランチではなく、右MFでプレーした柴崎は、指揮官の期待に応えるプレーでチームを勝利に導いた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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[J1第2ステージ12節]
鹿島アントラーズ 3-0 ジュビロ磐田
9月17日/県立カシマサッカースタジアム
 
 磐田戦はいつものボランチではなく、2列目の右、攻撃的MFで先発した。
 
 柴崎のこのコンバートの意図を、石井監督は次のように語る。
 
「ジュビロさんはラインコントロールが高いチームなので、そこに対して裏への動きっていうのは、(赤粼)秀平だったり(金崎)夢生が繰り返しできると思った。
 
 そこに対して、(彼らに)近いところでパスを供給できる選手を、という意味で。(土居)聖真もそうですけど、岳もバイタルで受けて、良いタイミングでパスが出せるんじゃないかなというイメージでしたね」
 
 もともと、柴崎は配給力の高い選手ではある。視野も広い。キックの正確性もある。その能力を、相手ゴールに近いエリアで発揮してほしかったということだ。
 
「ボランチの位置からミドルレンジのパスになるより、スルーパスなどを期待して、あそこに配置しました」
 
 より得点に直結する仕事を託された柴崎は、中央にいる時に比べてプレーに関与する回数は減ったかもしれないが、ボールを足元に収めれば、相手にとって危険なパスを常に狙い続けた。23分には、高い位置から戻ってきて小笠原のパスを受けると、思い切り良くミドルシュートを放つ。磐田GKのカミンスキーのセーブに阻まれたが、これで得たCKを自らが蹴り、昌子の先制点を演出してみせた。
 
 また、73分にはセンターサークル付近から、鈴木のPK獲得につながる距離の長いスルーパスを通してみせる。バイタルエリアでのプレーではなかったが、自陣でボールを奪った伊東がすぐさま前線に預け、カウンターを発動させた時、高い位置で受けられたのも、ポジションが右MFだったからこそだろう。
 
 柴崎の2列目起用は今後、鹿島のスタンダードになるのか――石井監督は、「それも含めて、いろんなポジションをやってもらって、紅白戦や試合でも試してみて」と、様々な選択肢を模索していくつもりだ。そうすることで、「チームの幅も広がるし、彼自身のプレーの幅も広がると思うので。能力の高い選手だからできるはず」と語った。
 
 この磐田戦には、先日、日本代表のコーチに復帰した手倉森誠氏も視察に訪れていた。リオ五輪での激闘を終え、今度はロシアを目指す戦いに身を置く同氏の眼に、柴崎のプレーはどう映ったのか。
 
「相手(磐田)に合っていたと思うよ」と切り出した手倉森コーチは、さらにこう続けた。
 
「相手のウイングバックを押し下げる役目を理解していて、(右SBの伊東)幸敏が来れば2対1を作れるし、中の選手が近づいてくれば、幸敏を使いながら、3人目の動きを意識したプレーをする。あのコンビネーションの描き、アイデアが岳にはある」
 
 石井監督が語ったように、今回の柴崎の2列目起用は“対磐田”という側面が強かった。手倉森コーチは「俺が考えていたのは、じゃあ、相手が4-4-2だったら、次はどこに受け場所を変えるのかな、と。4-4-2に対して、あのポジションで使われるのか。そこは楽しみ」とイメージを膨らませる。
 
 そして、2列目でのプレーはハリルジャパンでも生きると手倉森コーチは見ている。
 
「ああやって、右サイドで相手を押し下げて、開いていることによって、攻撃に厚みを出せるということを、多分やりながら分かったと思う。代表で、岳がボランチでプレーして、(右ウイングの本田)圭佑が中に入ってきた時、『今、入ってこなくていい』とか『今はサイドに張っていてほしい』とか、そういう話ができるようになると思う。これは大きい」
 
 多くの示唆に富んだ柴崎の2列目の起用。最近は代表から遠ざかっているが、再び、日の丸を背負い、日本をロシアに導くための準備を着々と進めている。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)