ポスト・ワールドカップとなる2011年は、日本代表のアジアカップ優勝で幕を開けた。昨年末のアジア大会で、U−21代表(現U−22代表)が初優勝を飾ったのに続く国際タイトルの獲得である。南アフリカ・ワールドカップの16強入りをきっかけとする追い風が、日本サッカー界を強烈に後押ししている。

 海外からも嬉しいニュースが続く。長友佑都がアジアカップ後にインテルへ移籍し、岡崎慎司はシュトゥットガルトで待望の公式戦デビューを飾った。1月の高校選手権に出場した宮市亮は、レンタル移籍先のフェイエノールトで出場2試合目にしてゴールを決めている。

[写真/岡崎慎司]=千葉格


 彼ら海外組の奮闘は、Jリーガーにとって何よりの刺激剤だ。南アフリカW杯を起点とする好循環が、ここにも生まれている。

 とはいえ、すべてが順風満帆ではない。とりわけ気になるのは、2009年、2011年と2大会連続で出場を逃しているU−20ワールドカップだ。

 7月29日に開幕するコロンビア大会には、アジアから韓国、オーストラリア、北朝鮮、サウジアラビアが出場する。ここで経験を積んだ20歳以下の選手たちは、9月下旬からスタートするロンドン五輪アジア3次予選にも絡んでくるだろう。アジア大会優勝で実力を示した日本だが、絶対的な力を持つには至っていないと考えるべきだ。

 一方、3大会連続で出場権を獲得したU−17代表は、6月のワールドカップへ向けて強化を進めている。1月に続いて2月も15日から合宿が開かれており、26日までにJ1、J2、JFLのクラブなどと練習試合を重ねていく。

 その先頭を切って行なわれたのが、U−18代表との“兄弟対決”だった。ゲームの位置付けとしては、U−17日本代表の強化の一環と考えられる。彼らが6月のワールドカップをターゲットとしているのに対して、U−18代表は2013年開催のU−20ワールドカップ出場を目ざすチームだ。

 とはいえ、U−18代表にも意義深いゲームだったのは間違いない。わずか一歳違いとはいえ、彼らは年上である。勝ったところで評価されることはなく、負ければ不甲斐ないと叱責される。トレーニングキャンプ中の練習試合だとしても、勝たなければいけないプレッシャーと背中合わせだったのだ。

 若年層のトレーニングキャンプでは、同年代か年上のチームとの練習試合がしばしば組まれる。今回のU−17日本代表と似た立場にまわることが多いのだ。合宿の成果を問うための試合だけに、重視されるのは結果ではなく内容で、そのためには勝つのが難しい相手のほうがいいという判断なのだろう。

 その一方で、代表チーム間の交流を活発にしていくことで、練習試合に緊張感を持ち込める期待感は高まる。それぞれの代表監督にとっても、選手の実力や適性を確認できる良い機会になるだろう。U−17からU−18への吸い上げを、スムーズにする効果も見込める。

 おりしも2月26日には、U−18Jリーグ選抜対日本高校サッカー選抜のゲームが組まれている。ゼロックススーパーカップの前座として行なわれるだけに、この試合から観戦に訪れる観客も少なくないだろう。トレーニングキャンプで味わえない緊迫感と高揚感のなかで、真剣勝負が繰り広げられる。昨年に続いて2度目の開催となるが、こうした機会はまだまだ少ない。

 代表チームのブランド力が再び高まってきた今こそ、国内で行なわれる国際試合を若年層の強化と結びつける好機だ。U−22とフル代表の連携は深まっているが、U−17やU−18の代表チームにも、多くの観衆の前でプレーする機会を提供していきたい。それもまた、若年層の成長を促すはずだ。

【戸塚啓】1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の 国際Aマッチは91年から取材し、2000年3月から連続で取材中。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。著書には 『マリーシア(駆け引き)が日本のサッカーを強くする(光文社新書)』、『世界に一つだけの日本サッカー──日本サッカー改造論』(出版芸術社)、『新・ サッカー戦術論』(成美堂出版)、『覚醒せよ、日本人ストライカーたち』(朝日新聞出版)などがある。昨年12月に最新著書『世界基準サッカーの戦術と技術』(新星出版社)が発売。