【戸塚啓コラム】局面で戦えない選手たち
韓国に２点差以上の敗戦を喫するのは、１−３で敗れた２月の東アジア選手権に続くものだ。無得点での２点差以上となると、１９９０年７月の第１回ダイナスティカップの開幕戦までさかのぼらなければならない（０−２で敗退）。福田正博、阪倉裕二、永島昭浩、反町康治、谷真一郎の５人が国際Ａマッチデビューを飾ったこの試合は、２か月後のアジア大会を見据えて実験的な要素を含んでいた。控えメンバーの菊原志郎と中山雅史も、この時点ではＡマッチに一度も出場していない。
日本陣内左サイドでキム・ジョンウが胸で落としたボールには、パク・チソンと長谷部誠が反応した。長谷部が食いつくが止めることはできず、今野泰幸も身体を入れようとするが振り切られる。遠藤保仁はパクの背中を見ることしかできず、左サイドへ開いていた阿部も寄せきれない。間合いを詰めた中澤のアクションも遅れた。５人の選手が対応しながらパクを止められず、豪快な右足シュートを蹴り込まれたのである。ＧＫ楢��正剛の手前でわずかにボールがバウンドしたが、そもそもの問題はパクを止められなかったことにある。
試合後のミックスゾーンでは、「韓国は１対１で激しくきた」という声が聞かれた。確かにそのとおりだが、韓国の激しさは規格外だったのか。そんなことはないだろう。国際試合では当然のレベルである。この試合のパクがひとり異次元の領域にいたとしても、彼を止められないようではカメルーンと戦えるはずがない。いとも簡単に蹂躙されてしまう。エトー率いるアフリカの雄が、韓国以上の身体能力を持つのは明らかなのだ。オランダとデンマークも同様である。
ディフェンスラインが急造だったとしても、局面で戦わない選手が多過ぎる。ここで言う「戦う」とは、１対１の競り合いで絶対に負けない気持ちを、実際のプレーで示すことである。一貫して闘志を感じさせたのは、長谷部誠だけだっただろう。プレーの実効性は伴わなかったが、大久保嘉人と長友佑都も勝負を挑もうとする気持ちを感じさせた。
韓国戦前のトレーニングではカバーリングの意識が徹底されていたが、各選手が目の前の敵に立ち向かう責任感を持たなければ、根本的な解決にはならない。１対１で劣勢を強いられることを前提とするのは、彼我の実力を照らし合わせた上での妥当な判断だ。だからといって、１対１で戦わないのは本末転倒である。スマートにプレーして完敗を喫したのが、何よりも歯がゆい。
・戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖
関連情報（BiZ PAGE＋）
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
