九州を中心に店舗を展開するドラッグストア大手のコスモス薬品。今年の5月までに東京に進出する(写真:コスモス薬品)

福岡県を地盤とするドラッグストア・コスモス薬品が、首都圏に初めて店舗を構える。1月17日に行われた今2019年5月期上期(2018年6月〜11月期)決算説明会の席上、同社の横山英昭社長は「今年5月までに、東京の渋谷区広尾と中野区の駅周辺で都市型店舗を出店する」と、明言した。

コスモス薬品は業界内で、「西のドラッグストアの雄」と言われている。2000平方メートル以上の敷地面積を持つ大型店舗を郊外で展開。コスモス薬品の売り上げに占める食品比率は業界では驚異的とも言える5割に達しており、その豊富な品ぞろえを武器に、店舗内には食品スーパー並みの食料品を並べる。

加えて、EDLP(エブリデー・ロー・プライス=毎日安売り)を徹底することで集客を図っている。結果、業績は好調に推移。前2018年5月期まで10期連続で営業増益を達成。今2019年5月期の上期実績も、売上高2983億円(前年同期比10.2%増)、営業利益123億円(同19.8%増)と高い水準だった。

「日本では2つの二極化が進行」

郊外店を主力とするコスモス薬品だが、昨年春ごろから訪日客需要が見込まれる駅前中心部への出店にアクセルを踏み始めた。現在は福岡県や大阪府、広島県で、計5店舗を構える。

今年1月上旬に福岡県の天神にある店舗へ足を運ぶと、訪日外国人に人気の薬用リップクリームが158円(税抜き、以下同)、微粉末ののど薬が358円で売られていた。他社のドラッグ免税店では同じリップクリームが480円、のど薬が528円で販売されており、コスモス薬品の販売価格が圧倒的に安いことがわかった。 

コスモス薬品は今回、都心部出店強化の一環で東京都に進出することを決めた。関東圏では、郊外型店舗の出店も積極化する計画だ。現在、千葉県や茨城県、埼玉県などで立地調査を開始し、2000平方メートルタイプの大型店舗の開店を目指す。2020年以降の本格展開をにらむ。

同社はなぜ、首都圏や関東圏での出店を強化するのか。横山社長は「日本は2つの二極化が進行している。1つは人口の二極化、もう1つは所得の二極化だ。どちらも関東圏への一極集中が今後、より鮮明になってくるだろう。ビジネスチャンスはやはり関東圏にある」と説明する。


横山社長はさらに、次のように続ける。「郊外型店が1000店に達する規模になった。中国共産党の指導者、毛沢東が行ったように、まずは地方を押さえ、そのうえで都市部へと進出する。そのような戦略を実行に移すことが可能な段階になった」。関東圏に攻め入ることで一段成長を描く、というわけだ。

調剤併設店の進出も視野

さらなる躍進をもくろむコスモス薬品。だが、関東圏ではマツモトキヨシホールディングスやウエルシアホールディングスなどドラッグ大手が待ち構える。関東圏に根を張る食品スーパーやコンビニエンスストアなど異業種の勢力争いも激しい。また、家賃負担など運営コストが福岡県に比較して高くなることも否めない。

低価格と食品費率の高さをひっさげての“関東圏深耕”だが、顧客の支持を集め、十分に店舗採算を確保できるかどうかは現時点では不透明だ。

コスモス薬品の新たな挑戦は、立地戦略だけではない。調剤併設店への進出も視野に入れる。ドラッグストア業界では現在、食品強化型と調剤強化型の店舗展開に二極化している。コスモス薬品の場合は前者の食品強化型だ。

調剤型の場合は診療報酬改定や薬価改定の影響を受けるものの、調剤事業の粗利が高いため収益にも貢献する。そのため、横山社長は「出店時期は未定」としながらも、「診療報酬が下がり、マンツーマン薬局(小規模な病医院に対応する形で保険薬局を設置する薬局)の体制が崩れるときがわれわれの出番。AI(人工知能)の導入が進めば、調剤過誤のミスもなくなるだろう。もう少し時間が必要だが、チャンスがくれば優秀な薬剤師を雇って本格的に調剤に参入したい」と語る。

コスモス薬品がこういった新戦略を標榜するのは、従来の食品強化型の郊外店舗を中心としたビジネスモデルではいずれ成長の限界がくる、といった危機感の表れであろう。果たして、もくろみどおりに成長を再加速させることができるか。